イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

東北大、電力損失の大幅削減可能なナノ結晶軟磁性材料を開発

2014-06-28

電力損失の大幅削減可能なナノ結晶軟磁性材料の開発に成功


<概要>
 東北大学「東北発素材技術先導プロジェクト」の超低損失磁心材料技術領域では、既存材料を凌駕する高飽和磁束密度や低鉄損等の優れた磁気特性を有するナノ結晶合金を新たに開発し、その製造技術に目処をつけました。詳細な材料組成検討により開発された軟磁性ナノ結晶合金は、厚さ約40μm、幅は最大120mmの薄帯形状に直接連続鋳造されます。このナノ結晶合金薄帯で作製される磁心(トランスやモータ等に用いられる鉄心)は超低損失特性を示し、電力伝送の大幅なロス削減や家電製品の消費電力低減に大きく貢献するものと期待されます。本軟磁性ナノ結晶合金薄帯は平成26年10月よりサンプル供給を開始する予定です。
 (成果詳細等:別添のとおり)

(別添)

<概要>
 文部科学省主導の東北発素材技術先導プロジェクトにおける3テーマの一つである超低損失磁心材料の研究開発を実施する、東北大学金属材料研究所「超低損失ナノ結晶軟磁性材料研究開発センター」では、高飽和磁束密度や低鉄損等の優れた磁気特性を有するナノ結晶合金を新たに開発致しました。開発された軟磁性ナノ結晶合金は、厚さ約40μm、幅は最大120mmの薄帯形状であり、溶けた合金から効率的に直接連続鋳造されます。このナノ結晶合金薄帯を積層あるいは巻回して作製される磁心(トランス(変圧器)やモータ等に用いられる鉄心)は高飽和磁束密度と超低損失特性を示し、磁心の小型化と同時に電力伝送の大幅なロス削減や家電製品の消費電力低減に大きく貢献するものと期待されます。

<背景>
 東日本大震災以降、電気エネルギーの安全な製造方法と効率的使用が喫緊の社会的解決課題となっています。1979年に制定された「エネルギー使用の合理化に関する法律(以下:省エネルギー法)(1)においても、同法第6章「機械器具に係る措置」のうち、第78条「製造事業者等の判断基準となるべき事項」に基づく特定機器に関する一連の政策措置のうち、エアコン、電気冷蔵庫等の一般家電に対して厳しい性能向上が求められています。さらに、1997年の京都議定書成立に基づく「トップランナー方式」措置制度(2)は、さらに厳しい省エネルギー達成目標を一般家電製品に求めています。
 電磁変換時のエネルギー損失を支配する磁心材料は、数十年に渡り主に電磁鋼板(ケイ素鋼板)が用いられ、その地道な材料特性の改善により損失低減が図られてきました。しかしながら、モータやトランスの磁心からの電力損失(鉄損)は国内電量消費量の約3.4%を占め(3)、この損失は50万kWhクラスの火力発電所7基分に相当します。
 昨今の省エネルギーに対する社会的関心の強さから、我が国が強みとする材料革新によるブレークスルーが求められています。これらの課題を解決するため、アモルファス合金を用いた磁心の実用化が検討されています。アモルファス合金磁心は極めて小さな鉄損を示すことから「トップランナー方式」による電気機器の高効率化を達成すると期待されます。残念ながらアモルファス合金は、従来の電磁鋼板(Bs=1.9 T)にくらべて飽和磁束密度が低く(Bs=1.6 T)、磁心が大型化するという欠点がありました。
 このような背景から、電磁鋼板に匹敵する高飽和磁束密度とアモルファス合金並の低鉄損を兼備した革新的磁心材料の開発が強く求められていました。


<研究開発の内容>
 このたび、東北大学金属材料研究所「超低損失ナノ結晶軟磁性材料研究開発センター」では、Fe−Co−Si−B−P−Cuを主成分とするアモルファス合金を新たに開発し、厳密な熱処理によりアモルファス相を適切にナノ結晶化させることで高飽和磁束密度と低鉄損を兼備したナノ結晶軟磁性材料を新たに開発致しました。本合金は単ロール型液体急冷法により、幅120mmの薄帯(図1)として鋳造製造されます。この薄帯を積層あるいは巻回により磁心とし、適切な熱処理を施すことで電磁鋼板に匹敵する1.84 Tの高飽和磁束密度を実現しました。さらに、金属学的アプローチにより結晶平均粒径25nm(図2)と抑えることでアモルファス合金磁心並の0.7W/kg(W1.7/50)の低鉄損(図3)も実現できました。この磁心をトランスやモータに応用することで大幅なエネルギー損失低減と機器の小型化が実現できると期待されます。

 ※図1〜図3は添付の関連資料を参照


<今後の展開>
 本革新的材料の開発により、小型軽量でエネルギー損失の極めて小さな磁心の実用化可能性を確認でき、「トップランナー方式」の数値目標を達成可能な電気機器の実現に目処をつけることができました。本軟磁性ナノ結晶合金薄帯は平成26年10月よりサンプル供給を開始する予定です。今後は、高度な生産技術を有する企業との共同開発による大量生産体制の構築で一般家電製品の省エネルギー化を推進するとともに、薄帯のさらなる幅広化と厚肉化により電力伝送用柱上トランスの試作に取り組み、平成29年度の実用化を目標に、東北地域の革新的材料開発拠点の形成を目指します。


<参考文献>

 1)例えば、<http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S54/S54SE267.html
 2)例えば、<http://www.eccj.or.jp/machinery/toprunner/toprunner.pdf
 3)東京電力事業レポート、資源エネルギー庁総合エネルギー統計、JFE21世紀財団鉄鋼プロセス資料等


 本成果は、文部科学省からの委託を受けた東北発素材技術先導プロジェクト「超低損失磁心材料技術領域」の研究開発により得られたものです。


Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版