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東北大とかずさDNA研究所、ダイコンゲノムを解読

2014-05-22

ダイコンゲノムを世界に先駆けて解読


<概要>
 東北大学大学院農学研究科の西尾剛教授と北柴大泰准教授が中心となり、財団法人かずさDNA研究所の協力を得て、ダイコンゲノムの塩基配列を決定いたしました。ダイコンは、日本各地で特徴的な地方品種が成立しており、日本で最も発展した野菜と言えます。ハクサイは中国や韓国が中心となって国際協力によりゲノム解読がなされましたが、この度日本の野菜と言えるダイコンのゲノムを、日本独自で世界に先駆けて解読しました。
 近年、塩基配列決定の技術が飛躍的に向上し、大量の塩基配列情報が短時間に得られるようになり、多くの生物のゲノム解読が加速していますが、ダイコンのゲノムは複雑で解読が遅れていました。比較的縁が近いハクサイとも遺伝子の並び方が大きく異なり、同じアブラナ科のモデル植物でゲノム研究が最も進んでいるシロイヌナズナの3倍のゲノムを持っていて類似の塩基配列が複数あることから、ダイコンゲノムの解読はかなり困難でしたが、東北大学かずさDNA研究所では遺伝子の高密度連鎖地図をそれぞれ作成していたことから、今回の成果が得られました。また、岩手大学、野菜茶業研究所、タキイ種苗株式会社と協力して、品種間の遺伝子変異を明らかにし、育種に有用な情報を得ました。
 本研究で明らかにしたゲノム塩基配列が、ダイコンの根の形や辛味成分に関わる遺伝子など、ダイコンの育種に重要な遺伝子の同定のために極めて有用な情報を提供し、ゲノム情報を利用した育種を加速すると期待されます。
 この研究は、生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)から5年間の研究費支援を受けてなされたもので、国際科学雑誌「DNA Research」に平成26年5月17日に掲載されます。

1.背景
 ダイコンは日本に多様な変異があり、日本の各地で特徴的な地方品種が成立しており、日本で最も発展した野菜と言える。日本で栽培される野菜の中で、ダイコンは栽培面積では第一位の野菜である。日本で広く普及しているのは辛味が少ない青首ダイコンの一代雑種品種であるが、漬け物用で白い根の大蔵ダイコン、丸い根の聖護院ダイコン、直径30cmにもなる桜島ダイコン、細長く2m以上になる守口ダイコンなどがあり、その他に辛味を特徴とする辛味ダイコン、葉を食用とし根はほとんど太らない小瀬菜ダイコンなど日本各地に特徴的なダイコンの地方品種がある。ダイコンのこのような多様な変異は中国にもなく、ヨーロッパで栽培されるダイコンはハツカダイコンであり主要な野菜ではなく、日本はダイコン変異の宝庫である。
 ダイコンアブラナ科に属し、学名がRaphanus sativus L.でハクサイ(Brassica rapa L.)やキャベツ(Brassica oleracea L.)、セイヨウナタネ(Brassica napus L.)とは異なる属である。ダイコンの染色体数は、2n=18でキャベツと同じであるが、ハクサイ(2n=20)やセイヨウナタネ(2n=38)とは異なる。ダイコンハクサイとは比較的近縁であるが、同じアブラナ科のモデル植物であるシロイヌナズナとはかなり遠い関係にある。
 イネをはじめ多くの作物で、ゲノム塩基配列の解読の研究がなされてきたが、これは各作物が持つ特徴的な特性に関わる遺伝子を明らかにするための基盤的情報として重要であるとともに、ゲノム情報を利用した育種を可能とするため、各作物の育種の効率化のために有用な情報となる。

2.研究成果の意義
 ハクサイは、英名がChinese cabbageで中国や、韓国が中心となって国際協力によりゲノム解読がなされたが、日本の野菜とも言えるダイコンのゲノムは、日本独自で世界に先駆けて解読した。
 塩基配列決定の技術が飛躍的に向上し、大量の塩基配列情報が短時間に得られるようになり、多くの生物のゲノム解読が加速しているが、ダイコンのゲノム構造は複雑である。比較的縁があるハクサイとも遺伝子の並び方が大きく異なり、同じアブラナ科のモデル植物でゲノム研究が最も進んでいるシロイヌナズナの3倍のゲノムを持っていて類似の塩基配列が複数あることから、ダイコンゲノムの解読はかなり困難であるが、東北大学かずさDNA研究所では遺伝子の高密度連鎖地図をそれぞれ作成していたことから、今回の成果が得られた。

3.研究成果の概要
 ダイコンゲノムの76%にあたる約400Mb(4億塩基対)の長さの塩基配列を決定した。その中に、61,572個の遺伝子が見られ、それらの機能を推定した。得られた約400Mb塩基配列は7万以上の断片からなるが、これらのうち1億塩基対以上にあたる塩基配列断片は、連鎖地図上に位置づけられた。これらのゲノム塩基配列情報は、‘Raphanus sativus Genome Data Base’(http://radish.kazusa.or.jp)で公開する。
 東北大学かずさDNA研究所の高密度連鎖地図を統合し、DNAマーカーを新たに加えて2,553のDNAマーカーからなる高密度連鎖地図を構築した。ハクサイゲノムとの間で染色体上での遺伝子の並び方が大きく異なり、これら2種は、分化後染色体断片の再配列が複雑に起こったことを明らかにした。
 また、岩手大学、野菜茶業研究所、タキイ種苗株式会社と協力して、8品種間の1,000以上の遺伝子について塩基配列変異を明らかにし、育種に有用な情報を得た。
 この研究は、生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)から5年間の研究費支援を受けてなされた。

4.将来の波及効果
 この成果は、国際科学雑誌「DNA Research」に掲載された。
Raphanus sativus Genome Data Base上の塩基配列データは、今後国内外の研究により追加や修正が加えられ、より完全なダイコンゲノム塩基配列を明らかにしていく上での基盤となるもので、ダイコンゲノム情報の中核を担うものとなることや、本研究で明らかにしたゲノム塩基配列は、ダイコンの根の形や辛味成分に関わる遺伝子など、ダイコンの育種に重要な遺伝子の同定のために極めて有用な情報を提供し、ゲノム情報を利用した育種を加速することなどが期待される。



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