イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

竹中工務店など、疲労耐久性を有する新合金を用いたビル用制振ダンパーを開発

2014-05-17

世界最高峰の疲労耐久性を有する新合金を用いたビル用制振ダンパーを開発
「JPタワー名古屋」に初適用
―長周期・長時間地震動対策に極めて有効―


 株式会社竹中工務店(社長:宮下正裕)は、独立行政法人物質・材料研究機構(以下NIMS、理事長:潮田資勝)、淡路マテリア株式会社(社長:三尾堯彦)と共同で、制振ダンパーの素材として現在一般的に使われている鋼材(低降伏点鋼(※1))の疲労耐久性を約10倍に高めた新合金(特許出願済)を用いた制振ダンパーを開発しました。
 本制振ダンパーは、長周期・長時間地震動などにより繰返し変形を受けても安定した性能を維持し、建物の耐震性能余裕度の向上に大きく寄与します。

 本制振ダンパーの心材には、NIMSが鉄を主成分として高濃度のマンガンやケイ素などを添加して開発したFe−Mn−Si系新合金(※2)を用いています。疲労耐久性だけでなく延性、耐腐食性も非常に優れています。
 本ダンパーの開発では、竹中工務店がこの新合金を心材とした新型ダンパーの最適形状設計と性能評価を行いました。また、溶解・加工が困難な新合金の製造技術開発を淡路マテリアが担当し、大型化と量産化に不可欠なFe−Mn−Si系合金初の電気炉溶解とダンパー心材用素材板の製造を、日本高周波鋼業株式会社(社長;河瀬昌博)が実施しました。

 2015年11月竣工予定の「JPタワー名古屋」(愛知県名古屋市)には、最大荷重4000kNの本制振ダンパーが、高層棟の低層階部分(1階〜4階部分)に16基配置されています。
 今後は、主に超高層建物の長周期・長時間地震動対策として、本制振ダンパーをオイルダンパーや摩擦ダンパーなど従来のダンパーと併せて適材適所に採用することでBCP(事業継続計画)の面から優れた建物を提供していきます。


 (※1)低降伏点鋼は、添加元素を極力低減した純鉄に近いもので、強度が低く、延性が高い鋼材です。地震時に弾塑性変形し、地震エネルギーを吸収することが可能です。
 (※2)新合金の開発にあたっては、NIMS第三期中期計画プロジェクト研究
     「社会インフラの復旧、再生に向けた構造材料技術の開発」の一環で実施しました。
     Fe:鉄、Mn:マンガン、Si:ケイ素


【本ダンパー開発の背景と技術的ブレークスルー
 東北地方太平洋沖地震を契機に、長周期地震動への対策が改めて注目されています。大地震等で過酷な変形にさらされる制振ダンパーの性能余裕度が十分に確保されていれば、度重なる余震も含め、ダンパーの交換等をすることなく建物の制振性能を長期にわたり維持することができます。これにより、大地震後の建物の復旧に要する期間や費用を削減できるためBCPの点で多大なメリットをもたらします。そのため、3者で疲労耐久性に優れた新合金を用いたダンパーの開発に取り組んできました。
 Mn(マンガン)を高濃度に含む従来のFe−Mn−Si系合金は、建築分野で使用される様な大型部材の製造が困難でした。そのため、疲労緩和に有効な微細結晶組織を有し、かつ大型電気炉に適した濃度までMnを低下させた新成分合金を開発することで、大型化と量産化を可能とする工業的な製造プロセスを完成させました(※3)。
 また、新合金を採用した制振ダンパーの開発では、弾塑性有限要素法解析や構造実験によりダンパー装置全体としての機能・構造の最適化を図りました。
 このような数々の技術開発成果が本制振ダンパーの実現につながっています。


【プロジェクトに適用するダンパーの特徴】
 「JPタワー名古屋」に適用したダンパーは、心材となるFe−Mn−Si系新合金をせん断パネルとして用いて、地震エネルギーを吸収させます。
 縦1260mm×横1500mm×厚さ16mmのFe−Mn−Si系新合金を加工し、大変形時にも局所的に変形が集中しないような形状とするとともに、(さらにその両側を二重の補剛板で挟みこむなど)座屈防止機構(※4)に工夫を凝らすことにより、素材の性能を最大限に発揮させることができます。
 なお、本ダンパーの心材となる新合金は日本高周波鋼業が製造し、本プロジェクトへ適用する鋼材として指定建築材料に関する国土交通大臣認定(Fe−Mn−Si系制振部材用鋼材認定番号:MSTL−0421)を取得しました。
 さらに、超高層建築物としての構造性能評価にあたっては、本制振ダンパーの疲労耐久性に関する学術的な検討について九州大学機械工学部門材料力学講座の協力を受けました。

 *参考画像は添付の関連資料を参照

 (※3)詳細資料「新しい疲労緩和メカニズムの発見と製造技術のブレークスルー」をご参照ください。
 (※4)ある部材に荷重が負荷される際に突如部材が横方向に湾曲する現象を座屈といいます。座屈には部材の荷重支持力の急激な低下をともなうため、それを防止する目的で採用されています。

【JPタワー名古屋について】

 *添付の関連資料を参照


 *以下の資料は添付の関連資料「参考資料」を参照
  ・「新しい疲労緩和メカニズムの発見と製造技術のブレークスルー


Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版