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富士通研究所、病院や介護施設におけるカメラによる患者の状態認識技術を開発

2014-05-17

カメラによる患者の状態認識技術を開発
病院や介護施設における患者の見守りと看護業務負荷を軽減


 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、カメラを用いて入院患者のベッドでの起き上がり(起床)、ベッドからの立ち去り(離床)やベッド上での行動を高精度に検知する患者の状態認識技術を開発しました。

 病院や介護施設において、看護師が気付かないうちに入院患者がベッドを離れて徘徊・転倒する事故や、痛みなどで寝つけないなどの状況に看護師が気付くのが遅れることがあります。従来用いられていた、人の重さの圧力を検知するセンサーでは、寝返りに反応してしまうなど検知がうまくいかない場合があり、看護師が頻繁に確認する必要がありました。

 今回、カメラで撮影した患者の頭部を認識して追跡する、高精度な起床・離床センシング技術と、カメラ画像から看護師が注意すべき患者の行動を可視化する技術を開発しました。

 これにより、病院や介護施設での質の高い見守りを実現するとともに、看護師の業務負荷を軽減できます。


 本技術は、5月15日(木曜日)、16日(金曜日)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催する「富士通フォーラム2014」に出展します。また、技術の詳細は6月11日(水曜日)からパシフィコ横浜で開催される「画像センシングシンポジウム SSII2014」にて発表します。


<開発の背景>
 病院や介護施設では、患者の状態をチェックするため看護師が定期的に見回りを行います。しかし、看護師が気付かないうちに、入院患者がベッドを離れて徘徊や転倒の事故を起こしたり、痛みで寝つけないなどの状況に気付くのが遅れたりする場合があります。

 そこで、患者の起床・離床やベッド上での動きを検知するため、人の重さの圧力を感知するセンサーや、体の動きを検知するセンサーが使われています。しかしこの方法は、離床時に患者が意図的にセンサーを避けてしまって反応しない未検知や、看護師の動きや患者の寝返りの動きなどにセンサーが反応する誤検知などで認識精度が低下することや、センサーが反応していないときに患者の状態が分からず患者の状態を適切に把握できないという問題もあります。このため、センサーを活用しても看護師が頻繁に確認しなければならず、看護業務の負荷が重くなっています。


<課題>
 圧力や動きを検知するセンサーのほかに、カメラで患者を撮影し、従来の物体認識の技術により患者の頭部を認識してその位置から起床・離床などの動きを認識したり、患者のベッド上での動きの大きさ(活動量)を算出したりして、寝つけないなどの患者の行動を検出する方法があります。こうすることで、看護師の看護業務負荷を低減するとともに、24時間の見守りができるようになりますが、この実現には以下の課題があります。

 1.頭部の認識精度が低く起床・離床を見逃す
  一般的な物体認識の技術では、様々な形、髪形、向きや姿勢であっても頭部を認識できるように、あらかじめ複数の頭部データを学習データとして保持します。撮影した画像と学習データとを比較して、画像内から頭部を見つけ出しますが、様々な頭部データを保持すると、布団や枕など頭部ではないものを頭部と誤認識するケースが発生し、起床・離床を見逃してしまう場合があります。

 2.眠れていない、暴れているなど注意すべき患者行動を看護師が容易に把握できない
  患者の動きの中には、寝返りなど通常の動作もあります。それらをすべて検出してしまうと注意すべき患者行動の把握が困難となります。


<開発した技術>
 カメラ画像を用いた患者を見守る技術として、患者の頭部を認識し、追跡することで、徘徊・転倒の予兆行動である起床・離床を認識する起床・離床センシング技術と、もぞもぞして眠れていない、暴れているなどの患者の注意すべき行動を検出して表示する行動の可視化技術を開発しました(図1)。

 図1 患者の状態認識技術

 ※添付の関連資料「図1」を参照


 起床・離床の検出、および注意すべき行動の検出を高精度化することで、患者の状態を短時間で把握でき、看護業務の負荷を低減できます。

 開発した技術の特長は以下のとおりです。


 1.患者の状態に応じた学習データ選択
  ベッド上での患者の状態を、患者の姿勢に応じて5つに分類し、その遷移関係を定義しました(図2)。患者の頭部の見え方は状態に依存するため、あらかじめ状態ごとに頭部の現れる位置を設定し、状態ごとに、その位置での頭部の見え方(向きや大きさなど)に限定した学習データを作成しました。
  認識時は、遷移関係に基づいて現在の状態と次に起こりうる状態に限定した学習データを使用します。認識に用いる学習データを患者の状態に応じて選択することで、高精度な頭部認識を実現しました。

 図2 患者の状態と遷移関係

 ※添付の関連資料「図2」を参照


 2.動き情報を利用した誤検出低減
  患者の状態に応じた学習データの選択を行っても、枕や布団などを誤って認識してしまう場合があります。そこで、患者が起床・離床するときには必ず動きを伴う点に着目し、画像内で頭部の可能性のある複数の領域を頭部候補として抽出しました。複数の候補の中から起床・離床と思われる動きを行った頭部候補を頭部と確定し、動きがない場合や確定後に動きが止まった場合は、再び頭部候補に戻して、改めてすべての頭部候補の観測を継続します。こうすることで、枕や布団などを誤認識しても起床・離床とは異なる動きとなるためすぐに頭部の確定が解除され、患者が動いたときに正しい頭部を認識できます。

 3.注意すべき患者の動きの可視化
  医療従事者などの意見を参考に、通常の行動・動きと注意すべき行動を以下のように定義しました。

 図3 通常の行動・動きと注意すべき行動

 ※添付の関連資料「図3」を参照


 この2つの行動を、画像から算出した患者の動きの大きさ、回数などから判別します。

 可視化では、就寝中の通常の動き以外の行動と判別された患者の動きを丸印(●)で表し、この行動での動きの大きさを5段階の色(動きの大きさ:○○○○○(*)大小)で、一定時間内で検知された頻度を●の大きさで表現しました(図1)。これにより、注意すべき患者行動を簡単に把握することができます。

 *○印の正式表記は、添付の関連資料を参照


<効果>
 玉川病院様(注2)にご協力いただき、入院患者とご家族の同意の下、離床行動の検知と行動の可視化に関する実証実験を実施しました。

 起床・離床センシングでは、患者2名を各4日間、延べ184時間での全離床行動を確認し、従来の圧力式センサーよりも高い性能を実現できたことを確認しました(図4)。

 図4 実証実験の結果

 ※添付の関連資料「図4」を参照


 また、行動の可視化においては、患者3名、述べ176時間に渡って評価し、91%の精度で注意すべき行動が正しく可視化できていることを確認しました。

 行動を可視化した結果を看護師の端末に表示することで、頻繁な見回りを行うことなく患者の動きを簡単に把握することができ、病院や介護施設での質の高い見守りを実現するとともに、看護師の見守り業務の負荷を軽減できます。


<今後>
 富士通研究所では、看護師への緊急報知システムや電子カルテシステムと連携する見守りシステムなどの実現に向け、2015年度に本技術の実用化を目指します。さらに、病院や介護施設だけでなく、高齢者向けの在宅サービスなど、在宅での介護・看護への適用も視野に入れ、本技術の研究開発を進めます。


<商標について>
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


以上


<注釈>
 注1 株式会社富士通研究所:
   代表取締役社長 佐相秀幸、本社 神奈川県川崎市。
 注2 玉川病院:
   公益財団法人 日産厚生会 玉川病院、院長 中嶋 昭、所在地 東京都世田谷区




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