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NECなど、製造技術「2段階不均一系合成プロセス」を開発

2014-05-14

非食用原料のセルロースバイオプラスチックの製造エネルギーを1/10に削減し、利用展開を促進


■ポイント

 ・非食用植物資源のセルロースと天然油を原料とする高機能バイオプラスチックを従来比1/10の低エネルギー(低CO2排出量)で製造できる新技術を開発。


■概要

 日本電気株式会社【代表取締役 執行役員社長 遠藤 信博】(以下、NEC)スマートエネルギー研究所 位地 正年 主席研究員とその研究グループは、非食用植物資源のセルロースを主成分に用いた高機能バイオプラスチック(以下、「セルロース系・高機能バイオプラスチック」)を、従来の1/10という低エネルギー(低CO2排出量)で合成できる新しい製造技術(以下、「2段階不均一系合成プロセス」)を開発しました。

 NECが独自に開発した「セルロース系・高機能バイオプラスチック」は、木材や藁などの主成分のセルロース(注1)に、農業副産物のカシューナッツ殻に由来する油状成分のカルダノール(注2)を化学結合することで合成され、熱可塑性(注3)・耐熱性(注4)・耐水性(注5)などに優れるとともに、植物成分率が高い(約70%)という特長があり、電子機器などの耐久製品への実用化を予定しています。使用したカルダノールは、東北化工株式会社【代表取締役 柴田 寛之】との共同で、反応しやすい構造に化学的に変性したものを利用しました(以下、変性カルダノール)。

 このたびNECが新たに開発した「2段階不均一系合成プロセス」は、従来のように原料のセルロースを有機溶媒に溶解(均一系)させず、ゲル状に有機溶媒で膨らませた状態(不均一系)にした上で、変性カルダノール(長鎖成分)と酢酸(短鎖成分)を2段階で結合して樹脂を合成します。このため、溶液からの沈殿分離などによって生成樹脂を容易に回収できます。本プロセスは、ほぼ常圧・中温(100℃以下)での反応条件を達成するとともに、従来の均一系プロセスで必須であった生成樹脂を分離するための溶媒が不要となるため、合成に必要な溶媒量の大幅な削減(従来プロセスの約90%減)を実現します。これらにより、従来に比べ、約1/10の製造エネルギー(CO2排出量)で、高機能なセルロースバイオプラスチックの製造が可能になることから、将来量産を行う際には、製造コストの大幅な削減が期待されます。
 NECは、本技術を用いて「セルロース系・高機能バイオプラスチック」の2016年度中の量産化を目指し、電子機器をはじめ、他の様々な耐久製品に展開していきます。


■研究の社会的背景

 現在、プラスチックは全世界で年間約2.3億トン(国内では約1300万トン)生産されおり、そのほとんどは石油由来の原料を高温・高圧条件下で反応させて作っているため、プラスチック生産過程で発生するCO2量や製造に要する消費エネルギーの多さが課題となっています。これに対して、再生可能であり、CO2を固定化できる植物資源を原料に使用したバイオプラスチックの開発と利用が進められています。また、従来は穀物や芋類、サトウキビなどからのデンプンを原料とするバイオプラスチックが主体でしたが、将来の食糧問題への懸念から、現在では植物の茎や木材の主成分であるセルロースなどの非食用の植物資源を原料とするバイオプラスチックが注目されています。


■研究の経緯

 この研究開発は、安定供給が可能なセルロースなどの非食用植物資源由来の多糖類を利用して、CO2排出量の削減を実現する革新的なバイオプラスチックの開発を目的として、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)先端的低炭素化技術開発の研究テーマ「非食用の多糖類を利用したバイオプラスチックの研究開発」(代表:NECスマートエネルギー研究所 位地 正年 主席研究員)の一環として行われたものです。

 NECは2010年に、セルロースに長鎖部位をもつ変性カルダノールを短鎖成分とともに結合することで、従来のセルロースバイオプラスチック(注6)ではできなかった高い植物成分率(約70%)と優れた熱可塑性・耐熱性・耐水性を初めて実現した、セルロース系・高機能バイオプラスチックを電子機器などの耐久製品用に開発しています(図1)(注7)。
 今回、「セルロース系・高機能バイオプラスチック」の実用化を目指し、低エネルギー(低C02排出量)で製造する技術の開発に取り組みました。

 ※図1は添付の関連資料を参照


■研究の内容

 NECは、図2に示す「2段階不均一系合成プロセス」を開発しました。本プロセスにより、従来に比べ、約1/10の製造エネルギー(CO2排出量)で、「セルロース系・高機能バイオプラスチック」の製造が可能となります(図3)。

<従来の課題>
 「セルロース系・高機能バイオプラスチック」は従来のセルロースバイオプラスチックと同様に、有機溶媒にセルロースを溶解させて、他の成分と反応させて樹脂化する均一系プロセスによって製造されていたため、生成樹脂の取り出しには大量の貧溶媒(注8)が必要となり、製造エネルギー(CO2排出量)が大きく、低コスト化しにくいという課題がありました。
 この均一系プロセスに対して、セルロースを有機溶媒に溶解させず、ゲル状に有機溶媒で膨らませた状態で樹脂化する不均一系合成プロセスは、反応後、攪拌を止めれば、沈殿分離とロ過によって生成樹脂を容易に回収できるため、大幅な省エネルギー化を図ることが可能です。しかし、樹脂物性の改良に有効な変性カルダノールなどの長鎖成分をセルロースに付加して樹脂化を進めると、溶媒への親和性が増すことで沈殿分離しにくくなることや、一方、酢酸などの短鎖成分の付加だけでは、沈殿分離性は良くても熱可塑性や耐水性などの樹脂物性が不十分になるという課題があることから、生成樹脂の沈殿分離性(セルロースバイオプラスチックの生産性)と樹脂物性の両立は困難とされていました。


<今回、新たに開発した製造技術(2段階不均一系合成プロセス)>
 「セルロース系・高機能バイオプラスチック」の高い生産性と優れた樹脂物性(熱可塑性、耐水性、等)を両立させる2段階不均一系合成プロセスを開発しました。
 第1段階目では、粉砕したセルロースを適切な有機溶媒中でゲル状に適度に膨らませ、これに長鎖成分(変性カルダノール)と短鎖成分(酢酸)を付加させます。この段階では、長鎖成分と短鎖成分の付加を限定した量に留めることで、樹脂化をあえて不完全な状態にして、生成物(カルダノール付加酢酸セルロース)を沈殿分離(+吸引ロ過)によって効率的に回収します。上澄みの長鎖・短鎖成分の未反応物と溶媒からなる反応溶液は、不足成分を追加して再利用します。
 第2段階目では、上記の回収した生成物(半樹脂化物)を適切な有機溶媒中に親和させ(部分的に溶解させた半不均一系)、短鎖成分を十分に付加させて樹脂化させます。未反応の短鎖成分と溶媒は揮発しやすいので、100℃以下の比較的低温での蒸留により生成樹脂と分離することが可能であり、回収した短鎖成分と溶媒は再利用します。

 ※図2・3など以下、リリース詳細は添付の関連資料を参照


■本件に関するお客様からのお問合わせ先
 NEC 研究企画本部 プロモーショングループ
 お問い合わせ(http://www.nec.co.jp/contact/


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