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京大、生体内で隣り合う上皮組織の間にコミュニケーション(上皮間相互作用)の存在を発見

2014-04-26

体に本来備わっているガン予防のしくみに迫る


 高橋淑子 理学研究科教授、吉野剛史 同特定研究員らの研究グループは、奈良先端科学技術大学院大学大阪大学の研究グループとの共同研究により、生体内で隣り合う上皮組織の間にコミュニケーション(上皮間相互作用)が存在することを発見しました。このコミュニケーションがうまく働かないと上皮組織が壊れやすくなり、ちょっとした刺激やストレスでがん転移が起こりやすくなります。また、これら上皮間相互作用の実体として、フィブロネクチンが鍵を握ることがわかりました。

 本研究成果は、「米国科学アカデミー紀要」(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)のオンライン版に掲載されることになりました。


<研究者からのコメント>

 今回の上皮間相互作用の発見は、ガン以外にも、例えば血管同士の相互作用を利用した循環器疾患治療への応用など、さまざまな病気の原因究明に新たな視点を与えることが期待されます。今後は上皮間相互作用のさらなる実体解明と、上皮間相互作用からみる器官形成や組織破綻のしくみ解明に務めたいと考えます。

 本来の個体発生のしくみを知る研究から、新たな「細胞の声」が聞こえてきます。これらの発見をヒト疾患の解明研究とブリッジさせることにより、よりスケールの大きな生命科学を目指します。


【概要】

 体のさまざまな臓器の内部は、上皮組織でぎっしり詰まっています。上皮とは細胞が整然と配置されている組織のことを意味し、もしこの上皮が壊れてバラバラの細胞になると、ガン転移などにつながります。上皮性の組織は体中に存在し、多くの場合それらはお互い密に接しています。しかし生体内において、隣り合う上皮間に何らかの相互作用が存在するのか、また存在するとしてもその役割は何かについては、これまで全くわかっていませんでした。よい解析系がなかったからです。

 今回研究グループは、これらの問題解決に最も適しているニワトリ胚を用いて、一部の上皮を除去するなどオリジナルな解析法を考案することにより、上皮間相互作用の発見にこぎつけました。トリ胚の発生のしくみは、ヒトを含めた哺乳類と非常によく似ているため、今回の発見はヒトのガン治療につながる可能性が高いと言えます。今回の研究では、「体腔上皮」と呼ばれる上皮と、そのすぐ下に作られる腎管(上皮)に注目しました。体腔上皮とは、臓器を覆う薄い膜や腸間膜の元になる組織です。まず、体腔上皮と腎管がお互いうまく関係を保ちながら作られることを見出しました。次に、両者間にシグナルが働くのかを知るために人工的に腎管を除去したところ、体腔上皮の形状が異常になりました。特筆すべきは、腎管の有無によって、体腔上皮のガン化誘導作用に対する抵抗性が大きく異なっていたことです。つまり腎管からのシグナルがあると体腔上皮は「頑丈」で、たとえガン化因子を作用させても変化ありませんでした。
 一方で腎管が除去された体腔上皮は抵抗性がなく、ガン化因子によって転移に似た現象が引き起こされました。このことは、生体内では隣り合う上皮がお互いに作用しながら、ガンなどの異変がおこるのを防ぐしくみがあるという可能性を示すものであり、世界で初めての発見です。さらに今回見出した上皮間相互作用の実体として、細胞外基質としてよく知られているフィブロネクチンが主要な蛋白質であることを証明しました。今後のガン予防法や治療法に新たな道を開くと期待されます。

 ※図は添付の関連資料を参照

【詳しい研究内容について】

 体に本来備わっているガン予防のしくみに迫る

 ※添付の関連資料「参考資料」を参照

 「掲載情報」
 ・京都新聞(4月22日 27面)に掲載されました。


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