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フジタ、アルミドーム屋根の組立架設工法を開発
アルミドーム屋根の組立架設工法を開発
〜昇降ロボットジャッキ「FCFシステム」を用いた構築システムを確立〜
株式会社フジタ(本社:東京都渋谷区 社長:上田卓司)は、円筒形貯水タンクのアルミドーム屋根(※1)を構築するシステムとして、タンクの中心に設置したセンタータワーに水平昇降ロボットジャッキ「FCFシステム」(当社保有技術)(※2)を組み込んだ構築システムを技術開発し、このほど鹿児島県において竣工したファームポンド(※3)建設工事に適用し、その有効性を確認いたしました。
保有技術であるFCFシステムとアルミドーム屋根を組み合わせることにより、より安全で施工性の高いドーム屋根の組立架設工法を確立しました。この工法は適用範囲も広く、今後新たな、アルミドーム屋根の組立架設工法を採用した工事の普及を進めていきます。
円筒形貯水タンクのアルミドーム屋根は、従来の鉄筋コンクリート構造の屋根と比較すると、軽量で施工性に優れ、またアルミの高い耐久性により維持管理費が軽減できる等のドーム屋根として優れた特性を持っており、日本国内では十数年前から本格的に採用され始めています。
*ファームポンドの外観は添付の関連資料を参照
その構築工程は、ドーム屋根を組み立てる組立工程と組み立てられたドーム屋根を所定の位置に設置する吊り上げ架設工程に大別されます。これまでの組立工程では、タンク内外の組立ヤードで移動式足場や高所作業車等を用いてドーム屋根の外周部から中心に向かって順次組み上げていく方法が採られてきました。また吊り上げ架設工程では、屋根の規模や作業環境条件に応じて、タンク外に配置したクレーンによる一括架設(小規模)やタンクの側壁上部に配置した複数の巻上げウインチによるリフトアップ架設が一般的に行われてきました。
当社は、ドーム屋根の中心リングから外周部に向けて地組みする組立工程と吊り上げ架設工程を連動させることで作業の効率化と安全性の向上が図れることに着目し、わが国で多用される内径30m以上の規模の円筒形タンクへの適用を目指して、新しい構築システム「FCFシステムを組み込んだセンタータワー方式によるアルミドーム屋根組立架設工法」を考案し、高之峯ファームポンド工事(九州農政局発注、鹿児島県曽於市)に適用しました。
今後は、より大規模なタンクに適したセンタータワーの構造形式や構築方法を整備するために、更に、効率化と安全性などの技術開発をすすめ、適用範囲の広い工法として完成度を上げていく予定です。
*組立て架設フロー図は添付の関連資料を参照
【組立て架設方法の概要】
新工法によるドーム屋根の施工概要
[1]タンク中心部にセンタータワーを組立て、ドーム屋根を吊り上げる水平昇降ロボットジャッキシステム(FCFシステム)を組込みます。
[2]ドーム屋根の骨組み部材は、従来の手順とは逆に、ドーム屋根の中心部のリングから外側に向かって順次組み立てます。吊り上げによって組立工程の作業高さを調整することで、従来高所作業を余儀なくされていた工程を、主として床上の地組み作業で対応することができます。
[3]組立工程が完了後、引き続きタンクの側壁上部まで吊り上げて所定位置に設置します。
【構築システムの特徴】
(1)安全性・施工性について:殆どの作業が底版上での地組み作業となるため、資材の運搬や人の移動が効率的となり施工性が向上。また、墜落・転落災害の危険性のある高所作業を大幅に削減でき安全性が向上します。
(2)品質面について:組立工程と作業高さを調整する吊り上げ工程を繰り返しながら順次構築するために、組立て時に発生する局部的なひずみが吊り上げ時に開放されることで、ボルト締結作業が容易となり締結の品質がより向上します。
(3)工程面について:ドーム屋根の構築をタンクの中心部から開始するので、作業が残るタンク側壁部の施工とのラップ作業が可能となり、全体工程の短縮が図れます。タンク直径が大きくなればなるほど、その効果が発揮されます。
(4)経済性について:FCFシステムの設備にコストが発生しますが、ほとんどの組立工程が床上の作業となることで、屋根資材の運搬や組立作業が効率化され、架設工程が自動化されることで必要作業員の省力化が図れるため、規模の大きいタンクにおいて経済性は高くなります。
*ドーム屋根の吊り上げ設置完了状況は添付の関連資料を参照
※1 アルミドーム屋根
本構築システムのアルミドーム屋根としては、テムコアルミドーム工法を適用しています。テムコアルミドームは、米国のテムコ社(現CSTカバーズ)で開発されたアルミニウム合金製ドーム屋根です。
ドームを構成するユニットは、ストラットとパネルで構成されています。テムコアルミドームは、その様々な特徴を活かして、上下水道用タンクや農業用ファームポンドをはじめとする容器構造物や建築構造物の屋根部材として、世界中で8000基以上の実績があります。日本においても十数年前から採用されており、90基以上の実績があります。
※2 FCF(Fast Failsafe Climbing Form)システム
FCFシステムは、当社の保有技術として高橋脚の施工で60基以上の実績がある工法で、足場や型枠を一体化した作業ステージを複数の油圧ジャッキにより鋼管ロッドを楔機構で把持して昇降するシステムです。複数の油圧ジャッキには制御装置とレベルセンサが組み込まれ、中央制御盤によって常に水平を保ちながら上昇・下降するように制御され安全性が図られています。主な設備は地上で組立て、作業完了後は下降して地上で解体できることから高所作業が少なく、安全性において高い評価を得ているシステムです。
※3 ファームポンド
ファームポンドは、農地または農地の近傍に設けられる農業用水貯留施設で、ひとつのかんがいブロックを対象に、原則として1日以内の用水の需給関係を調整することを主たる目的として設けられています。
*新しい構築システムは添付の関連資料を参照