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東大、重力波直接観測を目指す大型低温重力波望遠鏡 KAGRAのトンネル掘削が完了

2014-04-04

世界初の重力波直接観測を目指す大型低温重力波望遠鏡 KAGRAのトンネル掘削が完了


<発表者>
 梶田 隆章(東京大学宇宙線研究所 所長・教授)
 大橋 正健(東京大学宇宙線研究所 准教授、(注1)
 内山 隆(東京大学宇宙線研究所 助教)

<発表のポイント>
 大型低温重力波望遠鏡・KAGRA(かぐら、(注2)を格納する3キロメートルの腕を2本持つL字形トンネルの掘削が完了しました。KAGRAは、世界で唯一、低地面振動環境である地下に建設されるキロメートルスケールの重力波望遠鏡であり、地下トンネルはKAGRAの感度性能を向上させる重要な構成要素です。今後、実験施設の整備、実験装置の構築を経て、2015年末には重力波試験観測、2017年度には重力波の観測開始により、世界初の重力波直接観測、重力波天文学の創出を目指します。

<発表概要>
 東京大学宇宙線研究所が中心的な推進機関となり、アインシュタイン一般相対性理論により存在が予測されている重力波の世界で初めての直接的検出を目指した、大型低温重力波望遠鏡・KAGRA(かぐら)(以下KAGRA)の建設を、2010年より岐阜県飛騨市神岡町池ノ山の地下において進めてまいりました。このたび、2014年3月末をもって、そのKAGRAを格納する地下トンネルの掘削が完了しました。重力波望遠鏡の設置場所として地下環境が選定されたのは、世界でKAGRAが初めてです。地下が好環境である理由は、極めて微弱な重力波の信号を捕えるKAGRAにとって、信号を掻き消す雑音となりうる地面の振動が、地表に比べて100分の1程度と小さいためです(図1)。KAGRA本体を格納するトンネル部は、地表より200メートル以深の地下に掘削され、片腕3キロメートルを2本持つL字構造をしており、両腕部合計6kmには0.3%の傾斜がつけられています。このKAGRA本体トンネルの他、本体への誘導トンネルも含め、総延長7,697メートルのトンネルが掘削されました。今後は、実験設備の整備、装置の構築を経て、2015年末に最初の試験観測運転を行い、2017年度には、重力波観測運転を開始する予定です。

<発表内容>
 大型低温重力波望遠鏡・KAGRA(かぐら)は、東京大学宇宙線研究所が中心的な推進機関となり、高エネルギー加速器研究機構および、自然科学研究機構・国立天文台を主たる共同推進機関とし、国内28機関155人、国外3機関76人の共同研究者が参画する研究プロジェクトです。重力波は、時空の歪みが波動となって伝搬する現象で、アインシュタイン一般相対性理論がその存在を予測しています。重力波の存在は、ラッセル・ハルス博士とジョゼフ・テイラー博士により初めて間接的に証拠づけられました。1974年に両博士により発見された連星中性子星(注3)の公転周期の観測減少値が、連星系からの重力波の放出を仮定した場合の公転周期の計算減少値と高い精度で一致したことにより、中性子星の加速運動による重力波放射が裏付けられました。最近では、BICEP2実験(注4)により、インフレーション時に発生したと予測される原始重力波の痕跡が宇宙マイクロ波背景放射に残っていることが報告され、もしこれが確認されれば新たな重力波の存在の証拠となります。しかし、重力波はその波形がわかる形で直接的にとらえられたことはありません。重力波を直接的にとらえることは、重力と時空の動的な関係の検証にとどまらず、強い重力場における物理現象の観測と解明、電磁波では直接観測することのできないブラックホールの直接観測を可能にするという意味で、非常に重要なテーマです。
  重力波が到来すると、二点間の距離がほんのわずかに伸縮するため、重力波望遠鏡ではこの長さの変化をとらえます。言い換えれば、重力波望遠鏡は、「長さ計測装置」ともいえます。しかし、強力な重力場を発生させる連星中性子星の合体、ブラックホール連星の合体などによって発生する重力波でさえ、典型的には、地球と太陽の間の距離を水素原子1個分変化させる程度のものでしかありません。しかも、そのような天体現象は、銀河系では10万年に一度程度しか発生しません。よって、重力波望遠鏡で、1年に数回の割合で重力波をとらえるには、より多くの銀河を観測する必要があり、超高精密度長さ計測装置である必要があります。しかし、重力波望遠鏡を振動させる原因は数多く存在します。それらを全て排除し、理想的には、光の量子雑音(注5)のみで制限される極限性能を得る必要があります。中でも、望遠鏡を地球上に設置する限り逃れられない「地面振動」と、装置が熱を持つことに起因する「熱雑音」は特に注意して除くべき雑音源です。これら雑音を低減させるために、KAGRAでは、そもそも地面振動が少ない地下環境に望遠鏡を設置し、地面振動の影響を少しでも逃れ、かつ、実験装置の心臓部を絶対温度で20ケルビン(摂氏マイナス253度)までに冷却し、熱雑音を低減するという工夫を取り入れています。今回の発表は、前者、地面振動を逃れる場所として選定した、岐阜県飛騨市神岡町の池ノ山(旧神岡鉱山)において、地下環境を整えるためのKAGRA用トンネルの掘削が完了したことをご報告するものです(図2)。池ノ山は、飛騨片麻岩という非常に硬い岩質を含む山であることも選定理由の一つです。

 ※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照





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