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日立など、原子炉自然冷却システムの実用化に向けた空冷技術を開発

2014-03-29

原子炉自然冷却システムの実用化に向けた空冷技術を開発
電源を用いることなく原子炉を長時間冷却し、放射性物質の放出を抑制


 株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)と日立GEニュークリア・エナジー株式会社(取締役社長:武原 秀俊/以下、日立GE)は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)向けに、大規模自然災害が発生した場合でも、ポンプなどを駆動する電源を用いることなく原子炉を長期間冷却し、放射性物質の環境への放出抑制に寄与する空冷技術を開発しました。
 具体的には、原子炉を空気で冷却するための空冷熱交換器を構成する伝熱管などの表面にマイクロメートルサイズの微細な加工を施し、従来よりも熱を一部分に密集させ、形成された高温の空気層を一気に外気で取り除くことにより、空気による除熱性能を約2倍に向上させます。これにより、原子炉の冷却に必要な伝熱管の本数を約2分の1に減少させ、空冷熱交換器の体積を約2分の1と合理的なサイズまで小型化することが可能となり、これまで設置が不可能だったスペースに対して空冷熱交換器を設置することが可能となりました。
 今回開発した空冷技術と、ポンプなどを駆動する電源を用いない水冷システムを組み合わせ、空気の自然循環力を用いた原子炉自然冷却システムの実現に大きく前進しました。

 原子力発電において、原子炉を停止する場合は、炉心に制御棒を挿入することで核分裂の連鎖反応を停止させます。しかし、原子炉の停止後も、燃料内に残る核分裂性物質の崩壊が継続することによる熱(崩壊熱)が発生します。このため、原子炉停止後も電動ポンプを用いて冷却水を原子炉に供給し、崩壊熱を除去しています。

 日立と日立GEでは現在、大規模自然災害などによりポンプなどを駆動する電源が喪失した場合でも、原子炉を冷却可能なシステムの開発を進めています。開発を進めている原子炉自然冷却システムは、崩壊熱が大きい初期はポンプなどを駆動する電源を用いない水冷システムで除熱し、崩壊熱の減衰後は空気の自然循環力を用いた空冷システムのみで原子炉を冷却するものです。これまでは空気による除熱性能は低く、必要な除熱性能を得るためには空冷システムの空冷熱交換器が大型化することが通例となっていました。大型のままではスペースの問題で原子炉の格納容器上に設置することができないだけでなく、費用も重量に比例するため大きくなっていました。このような理由から空冷システムを実用化するために空気による除熱性能を向上させ、空冷熱交換器を合理的なサイズまで小型化することが必要とされていました。今回、空冷熱交換器を構成する伝熱管などの表面に加工を施すことで、空冷熱交換器を小型化することを可能とする空冷技術を開発しました。今回開発した空冷技術の特長は以下の通りです。

(1)伝熱管と伝熱フィン表面の微細加工技術
 開発した表面微細加工技術は、伝熱管を薬液で処理する簡易な湿式加工を用いて、ステンレス製の伝熱管および伝熱フィンの表面に、マイクロメートルサイズの微細な凹凸を生成するものです。凹凸を生成することで、凹凸の部分に熱が密集し、高温の空気層が形成されます。形成された高温の空気層に外気から取り入れる空気を流し入れることで、密集した熱を取り除きます。この表面微細加工技術は伝熱フィンなどを持つ複雑な形状の伝熱管も容易に加工することができます。
(2)空気冷却による除熱性能向上技術
 原子炉格納容器上部に、建屋構造を活用して鉛直方向に延びる流路を形成し、その流路内に空冷熱交換器を設置します。崩壊熱を冷媒などにより空冷熱交換器に導き、空冷熱交換器の下部から取り入れた外気と熱交換して原子炉格納容器内の熱を除熱します。空冷熱交換器との熱交換により加熱された外気は上部から排気します。このような構成とすることで、空冷熱交換器で加熱された空気と、外気の温度差(密度差)を活用して、自然循環力により空気を流すことができます。空冷熱交換器を構成する伝熱管表面には、表面微細加工により,マイクロメートルサイズの微細な凹凸を生成しています。この凹凸は粘性底層と呼ばれる空気の流速が小さい領域にあります。そのため、微細加工を施しても圧力損失の増加がほとんど無く、空気の自然循環を阻害せずに除熱性能を向上することができます。従来は、粘性底層内に生成した凹凸による、除熱性能への影響は小さいと考えられてきました。しかし、微細加工部分に十分空気が浸透して加熱された空気を除去するよう、空気の流れを攪拌するミリメートルサイズの突起(乱流促進リブ)を設けることで、空気冷却による除熱性能を向上しました。さらに、伝熱管表面に空気の流れを阻害しないように鉛直方向の伝熱フィンを付けることで空気と接し熱交換する面積を増加しました。除熱性能の向上効果は伝熱管単管での試験およびコンピュータシミュレーションにより確認しました。
 今回開発した空冷技術は、実機を模擬した管群試験で効果を検証した後、新規に建設する原子炉だけで無く、既設の原子炉の一部機器や他産業製品への適用も視野に活用していく予定です。
 空冷技術の詳細は、3月26日から28日まで、東京都市大学で開催される「日本原子力学会2014年春の年会」にて発表する予定です。

 日立グループは、今後とも、信頼性の高いモノづくりで二酸化炭素を排出しない環境負荷の小さいエネルギーの安定供給をサポートし、さらなる安全性の向上を図りながら原子力発電事業に貢献してまいります。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照


以上



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