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北大と日立、共同開発の新型陽子線がん治療システムを導入した施設が完成

2014-03-20

北大と日立が国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」において
共同開発した新型陽子線がん治療システムを導入した施設が完成


 国立大学法人北海道大学(総長:山口 佳三/以下、北大)と株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、2010年に国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」の採択を受けて、共同で開発を進めてきた革新的な新型陽子線がん治療システム「陽子線治療システム PROBEAT−RT」が完成し、本システムを導入した施設が、このたび、北海道大学病院内に竣工しました。北大では、本施設での治療を2014年3月19日から開始する予定です。

 「最先端研究開発支援プログラム」は、科学技術政策による大型の研究支援制度であり、2009年に公募が行われ、全国から565件の応募があった中から、2010年3月の総合科学技術会議で、日本の科学技術の将来を担う30件の「中心研究者及び研究課題」が決定されました。北大からは医学研究科白土博樹教授の「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」が採択されました(*)。本研究は、放射線医療分野として唯一の採択であり、今後の日本の放射線医療/がん治療技術の発展を牽引するプロジェクトとして内外から注目を集めています。

 「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」では、北大がX線治療で培った「動体追跡照射技術」と、日立が世界で初めて一般病院に導入した「スポットスキャニング照射技術」を世界で初めて組み合わせ、肺や肝臓など、呼吸等で位置が変動する腫瘍に対しても、精度よく陽子線を照射することができ、正常部位への照射を大幅に減らすことができる治療システムの開発と、全体を小型化し、低コストで国際競争力の高い治療システムの開発を目標としています。

 北大では、今回完成した施設において、共同開発により小型化を実現した「陽子線治療システム PROBEAT−RT」を用いて、まずは「スポットスキャニング照射技術」を適用した治療を行いながら、「動体追跡照射技術」を組み合わせた治療システムの早期実現をめざします。「動体追跡照射技術」と「スポットスキャニング照射技術」を組み合わせた治療システムについては、薬事法の製造販売承認を申請中であり、2014年度上期中の承認取得および治療開始をめざしています。

 「陽子線治療システム PROBEAT−RT」は、陽子線がん治療の世界的な普及をめざして北大と日立が共同開発した、コンパクトで低コストな陽子線がん治療装置です。照射方式をスポットスキャニング照射方式のみに特化することを前提に、北大の放射線治療で培ってきた知見と、日立の持つ設計技術の融合により、ガントリー・照射ノズル・加速器を小型化し、装置の機器配置を見直すことで全体をコンパクト化しつつも使い勝手のよい国際競争力を高めた治療システムを実現しています。従来日立が販売しているPROBEAT−IIIと比較して、周長23mであった加速器は今回の装置では18mに、最大外形長11m、内径3.5mであったガントリーを最大外形長9m、内径2.5mに小型化し、システム全体の設置面積を約7割に縮小しました。

 北大と日立は、医学・工学分野における両者の優れた技術・知識・経験を組み合わせ、今回の陽子線がん治療システム開発を通じて、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)に優れた最先端の放射線医療/がん治療に貢献していきます。

 *本国家プロジェクト「持続的発展を見据えた『分子追跡放射線治療装置』の開発」では、陽子線がん治療システムの開発と並行して、共同提案者である京都大学平岡真寛教授が、X線治療の分野で、腫瘍を追いながら照射する追尾型画像誘導X線治療システムを開発中です。


<動体追跡照射技術の概要>
 動体追跡照射技術は、腫瘍近傍に金マーカーを刺入し、CT装置で予め腫瘍中心との関係を把握しておき、2方向からのX線透視装置を利用し、透視画像上の金マーカーをパターン認識技術にて自動抽出し、空間上の位置を周期的に繰り返し計算します。そして、金マーカーが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ治療ビームを照射します。これを高速で行うことで、呼吸等により体内で位置が変動するがんでも高精度での照射を行うことが可能になります。これにより、動いているがんの範囲をすべて照射する方法に比べて、照射体積を1/2〜1/4に減らし、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能になります。


<スポットスキャニング照射技術の概要>
 スポットスキャニング照射技術とは、腫瘍を照射する陽子線のビームを従来の方式のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術で、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。


<施設外観・治療室>

 ※参考画像は添付の関連資料を参照


以上



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