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東大、天然ウナギ卵31粒を西マリアナ海嶺南端部で採集することに成功
人類が初めて目にした天然ウナギ卵
―ウナギ産卵場2000年の謎を解く―
【発表者】
塚本 勝巳(東京大学大気海洋研究所 海洋生命科学部門 教授)
大竹 二雄(東京大学大気海洋研究所 附属国際海洋沿岸研究センター長・教授)
黒木 洋明(独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 浅海増殖部 浅海生態系研究室主任研究員)
田中 秀樹(独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 生産技術部繁殖研究グループ長)
【発表要旨】
2008年より共同でウナギ産卵場調査に取り組んできた東京大学海洋研究所(現 東京大学大気海洋研究所)と水産総合研究センターは、海洋研究開発機構の学術研究船・白鳳丸、水産庁の調査船・開洋丸と照洋丸、水産総合研究センターの調査船・北光丸、水産大学校の練習船・天鷹丸、北海道大学の練習船・おしょろ丸を動員して大規模なウナギ研究航海をマリアナ諸島沖に展開しました。
その結果、2009年5月の新月、ついに世界初の天然ウナギ卵31粒を西マリアナ海嶺南端部で採集することに成功しました。これは、東アジア全体に広く分布するニホンウナギの産卵場の位置とタイミングを厳密に特定する決定的証拠となりました。また、古代ギリシャのアリストテレスを悩ませた2000年におよぶウナギ産卵場の謎が、完全に解明された瞬間といえます。また、開洋丸と北光丸が捕獲した親ウナギの解析も急ピッチで進み、回遊生態、産卵習性、繁殖生理に関する詳細な新知見が数多く得られました。これらの知見は、人工シラスウナギの種苗生産技術の開発に大きなブレークスルーをもたらすと同時に、世界的に激減したウナギ資源の保全と国際管理のための貴重な科学的根拠になるものと期待されます。
これらの成果は、英雑誌 Nature Communicationsに2011年2月1日(予定)に掲載されます。
<ニホンウナギの受精卵と船上で生まれたウナギ仔魚>
*画像は添付の関連資料を参照
【発表論文】
タイトル:Oceanic spawning ecology of freshwater eels in the western North Pacific
著者:塚本勝巳1、張成年2、大竹二雄1、黒木洋明2、望岡典隆3、マイケル・ミラー1、
青山潤1、木村伸吾1、渡邊俊1、吉永龍起4、篠田章1、黒木真理5、大矢真知子1、
渡邊朝生2、秦一浩6、井尻成保7、風藤行紀8、野村和晴8、田中秀樹8
所属:1.東京大学大気海洋研究所、2.水産総合研究センター中央水産研究所、
3.九州大学農学研究院、4.北里大学海洋生命科学部、
5.東京大学総合研究博物館、6.水産大学校、
7.北海道大学水産科学研究院、8.水産総合研究センター養殖研究所
掲載誌:Nature Communications(オンライン誌 http://www.nature.com/ncomms/index.html)
2月1日掲載(予定)