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東北大など、東日本大震災に関する学習や防災教育ができるアプリを開発・公開

2014-02-22

スマートフォンを用いた防災教育用アプリ
「津波AR」
を開発・公開しました。


 宮城教育大学環境教育実践研究センター・鵜川義弘教授、東北大学災害科学国際研究所・佐藤翔輔助教らの研究グループは、スマートフォンを用いた防災教育用アプリケーション「津波AR」を共同開発しました。
 東日本大震災が発生して以来、改めて防災教育が重要視されていますが、津波被災地の復旧・復興に向けての過程の中で、がれき撤去作業や復旧工事が進むにつれて、津波被害等の痕跡が消え、児童生徒の体験・実感を伴う学習が難しい現状があります。そこで、普及が進んでいるスマートフォン等の携帯端末を用いて、体験的な東日本大震災に関する学習や防災教育ができるアプリケーション(以下アプリ)の開発・公開を行いました。
 AR(Augmented Reality、拡張現実)技術を用いることで、スマートフォン等のカメラを通して映した現実画面に、津波痕跡高情報を付加して映し出すことが可能になるため、どの位置にどの高さの津波が来たかを直感的に知ることができます。また、津波痕跡高のほかにも発生当時の被害状況の写真や避難所情報も表示できます。さらに、パノラマ写真を用いてアプリ内で擬似空間を作成しました。その中で津波痕跡高情報を閲覧することで、自身がまるで被災地に立っているかのような疑似体験をしながら学習することができます。近年重要視されている防災教育を体験と実感を伴ったものにできるのではないかと期待しています。


■「津波AR アプリ」について
 宮城教育大学
 環境教育実践研究センター
 責任者:鵜川義弘(教授)


■津波痕跡データや被害写真について
 東北大学災害科学国際研究所
 情報管理・社会連携部門
 災害アーカイブ研究分野
 責任者:今村文彦(教授)

 ※アプリのダウンロード、使用方法、その他の情報は、次ページにあります。


 *図1〜4と参考画像は添付の関連資料を参照


【開発の背景】
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、教育現場にも多大なる被害・影響を及ぼしました。改めて、学校教育における防災教育の必要性が言われ、宮城教育大学でも平成25年度から必修の授業として防災関連科目が取り入れられました。一方、復旧・復興に向けての過程の中で、津波の被害の跡は消えつつあり、児童生徒に東日本大震災の被害の実態を感じたり、体験を伴った防災教育を行ったりすることが今後ますます難しくなると予想されます。このような状況の中、児童生徒が持つスマートフォンで津波の高さを表示できる体験的要素を含んだ防災教育用アプリとして開発したのが「津波AR」です。


【開発の要点】
 「津波AR」の開発にあたり、東北地方太平洋沖地震で発生した津波痕跡高のデータについては、「津波痕跡データベース」を利用しました。同データベースは、東北大学災害科学国際研究所と原子力安全基盤機構が共同で運営・公開しているWebシステムです。東北地方太平洋沖地震の津波痕跡データは、東北地方太平洋沖地震津波合同調査グループが調査したものであり、本アプリ内では、津波高のほか、地域名、文献名、信頼度などの情報も閲覧できます。また、同研究所によるWebサイト「みちのく震録伝」で公開されている被災地写真も同時に閲覧できるようにしています。さらに、「津波AR」では避難所データ(現在は宮城県内のみ対応)も記載しています。平成26年2月現在で、津波痕跡高情報については3,473件、被災地写真は94,346件、避難所情報は308件のデータが、宮城教育大学のサーバーのデータベースに蓄積しています。これらの情報は、アプリ利用者の現在位置をもとにその場から近い場所にあるデータが、津波痕跡高は15件、被災地写真は10件、避難所情報は5件が表示されるようになっています。なお、被災地写真は震災発生から平成23年6月30日までの写真を表示するようにしています。被災地写真は、「みちのく震録伝」の画像を直接表示し、それぞれの情報について詳細を閲覧できるよう同サイトのURLも記載しています。
 開発した「津波AR」は、mataio社提供の無料のARブラウザ「junaio」を利用しました。これにより、現実画像に津波高情報を付加して閲覧できるだけでなく、一覧表示での閲覧や、地図上に情報が配置された状態での閲覧が可能です。また、情報をタップすると詳細情報を閲覧することができます。


【今後の展開】
 開発した「津波AR」は、普及率の高いスマートフォン等のカメラを通して、津波痕跡高と震災時の被害写真とを照らしあわせて閲覧することが可能であり、体験的で実感のある防災教育が可能となると考えています。また、避難所情報も同時に表示することで、最も近くにある避難所はどこか、どの方角にあるのか、その避難所は津波のこない安全な場所かなどが直感的に分かるようになっています。地図閲覧機能を使用すれば、アプリ利用者の現在位置、川や海等の情報、道路情報なども同時に閲覧することができるため、防災教育の中で近くの避難所までの安全な避難経路を検討する授業などに活用の可能性が期待されます。
 現在、「津波AR」に含まれる津波痕跡高の情報や被災地の写真は全国のデータが表示されますが、避難所情報は宮城県内の情報のみとなっているため、宮城県外の情報を載せたいと考えています。パノラマ画像を用いたコンテンツは、現時点で宮城県の志津川のみとなっているため、震災遺構を中心にコンテンツを増やしていく予定です。また、津波ARアプリとは別アプリとして存在しているため、リンクを張ることで疑似体験したい地域を選択するとパノラマコンテンツへ容易に飛べるようシステムの開発を進めていく予定です。
 さらに、現在、地理教育の研究者、高校教員の先生方と本アプリの利用やコンテンツの開発を検討しており、オリエンテーリングを伴うクイズ、パノラマチャンネルを使った教材などの利用が検討されています。ARアプリは、地図と現実の両方を切り替えて見ることができるため、教材の提示だけでなく、地図の読み方の理解を深めることにもつながる可能性もあります。実践の結果を反映させてシステムのブラッシュアップを行なう予定です。


【用語解説】
 AR Augmented Reality (拡張現実)の略語であり、スマートフォン等の携帯端末に搭載されるカメラを通して映しだした現実画像に情報を付加して映し出す技術のこと。


 *参考文献は添付の関連資料を参照


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