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森林総合研究所、「カシノナガキクイムシ」の遺伝子の組成が本州の北東と南西で異なることを解明
ナラ枯れは「地元」のカシノナガキクイムシが起こしている
−遺伝子解析が示すナラ枯れ被害拡大の要因−
ポイント
●ナラ枯れを媒介する「カシノナガキクイムシ」の遺伝的変異を解析したところ、被害を受けるナラ類と同様に、本州の北東と南西で遺伝子の組成が明瞭に異なっていることが明らかになりました。
●このことから、カシノナガキクイムシは近年になって気候変動によって北方に分布を広げたのではなく、以前から各地に生息しており、昨今の森林環境の変化にともなって被害が顕在化したと推定されました。
概要
最近、ミズナラなどが集団で枯れる被害が顕著になっています。その原因は病原菌で、「カシノナガキクイムシ」という昆虫に運ばれて、寄主であるナラ類に被害をもたらしていることが分かっています。今回、「カシノナガキクイムシ」の遺伝的変異を解析したところ、本州中部を境にして遺伝的な組成が大きく異なることが判明しました。この違いは「カシノナガキクイムシ」の寄主であるナラ類の遺伝的変異の分布とも一致し、両者が長くそれぞれの場所で共存してきたことを示しています。したがって、現在のナラ枯れ被害は、気候変動等により「カシノナガキクイムシ」が南西から北東へ急激に分布を拡大したためではなく、里山の放置等による樹木の大径木化など、他の環境変化に原因があることが強く示唆されます。
予算:先端技術を活用した農林水産研究高度化事業 「ナラ類集団枯死被害防止技術と評価法の開発(平成17〜19年度)」
新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業 「ナラ類集団枯損の予測手法と環境低負荷型防除システムの開発(平成20〜22年度)」
関連リンク
プレスリリース全文:ナラ枯れは「地元」のカシノナガキクイムシが起こしている −遺伝子解析が示すナラ枯れ被害拡大の要因−
http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2011/20110131/documents/20110131.pdf
本成果の掲載論文
タイトル:Genetic structure of the oak wilt vector beetle Platypus quercivorus : inferences toward the process of damaged area expansion (ナラ枯れの媒介昆虫カシノナガキクイムシの遺伝的構造が示す被害エリアの拡大過程)
著者:加賀谷 悦子(森林総研)・斉藤 正一(山形県森林研究研修センター)・布川 耕市(新潟県森林研究所)・岡田 充弘(長野県林業総合センター)・野崎 愛(京都府)・津田 吉晃(ウプサラ大)
掲載誌:BMC Ecology(BMCバイオメッドセントラル生態学、英国)、10巻(2010年)21(オンラインジャーナル)
doi: 10.1186/1472−6785−10−21(外部サイトへリンク)http://www.biomedcentral.com/1472-6785/10/21
※ 図表資料など詳細は関連資料参照