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東北大など、卓上小型パルス強磁場分光で1ピコ秒の時間分解能を達成

2014-01-15

卓上小型パルス強磁場分光において1ピコ秒の時間分解能を達成


 東北大学とライス大学は共同で、30テスラの強磁場・低温で分光測定が行える卓上型パルス磁場発生装置を開発しました。磁石の小型化により可能になった直接光学系を採用することで、高波長分解能の分光測定が、従来より1桁高い1ピコ秒の時間分解能で行えるようになりました。

〈概要〉
 強磁場中の分光は、半導体をはじめとして材料評価に幅広く使用されている手法ですが、従来の大型の超伝導磁石やパルス磁石と組み合わせでは、光ファイバーを用いるため、高度な偏光測定や高時間分解能の計測が困難でした。
 東北大学金属材料研究所磁気物理学研究部門が開発した卓上パルス磁場システムは、小型かつ強力である上に、直接光学系の使用が可能であり、装置の光学窓間の距離がたった13.5cmしかないという特徴があります。このような優れた性能のために、従来大型施設でしか行えなかった実験の多くが大学の実験室で実現可能になり、研究の裾野が広がる事で、強磁場施設における研究の最適化にも寄与します。
 本装置は、ライス先端磁石広帯域分光システム:RAMBO”:Rice Advanced Magnet with Broadband Opticsと命名され、ライス大学に設置されています。この研究は、東北大学金属材料研究所国際共同研究センターの国際共同研究プロジェクトとして支援され、同研究所磁気物理学研究部門の野尻浩之教授、ライス大学の河野淳一郎教授、同研究員Timothy Noe博士らにより実施されました。その成果は、2013年12月27日(アメリカ時間)にアメリカ物理学会のReview of Scientific Instruments 84巻に論文番号123906として掲載されました。

〈研究の背景〉
 強磁場中の分光測定は、半導体や光学結晶あるいはカーボンナノチューブ等の評価をはじめとして、物理、工学、材料科学において幅広く使用されている手法です。分光測定においては、波長の分解能と時間の分解能が重要な性能指標となっています。通常、強磁場中の分光測定は、大型の超伝導磁石やパルス磁石を使用します。その場合、光源?試料?検出器の間は距離が数メートルもあるため、光ファイバーで結合されていました。この方法は、実験の配置が柔軟で容易な反面、高度な偏光測定や高時間分解能の計測が困難であるという短所がありました。このような問題点を、どのように解決するのかが、長らく課題となっていました。
 東北大学金属材料研究所磁気物理学研究部門は、かねてから、このような用途に対応するために可搬な小型パルス磁場の開発を進めており、既に放射光分光や中性子回折への応用で成果を上げてきました。今回、この装置を光学分光器と組み合わせるために、テーブルトップ型のシステムを開発し、ライス大学との共同研究で先端磁石広帯域分光システムの開発に成功しました。

〈成果の内容〉
 東北大学金属材料研究所磁気物理学研究部門が開発した卓上パルス磁場システムは、小型かつ強力である上に、直接光学系の使用が可能であり、装置の光学窓間の距離がたった13.5cmしかないという特徴があります。このために、試料の状態を実験時に直接覗く事が可能であり、これまでの大型磁石で用いられてきた数メートルにもおよぶ光ファイバーが不要です。光ファイバーは設置が容易な反面、光を伝搬する時に波束が変化するために、時間分解能が高くできず、通常は20ピコ秒程度の分解能で実験が行われています。今回開発した装置では、これを1桁以上改善する1ピコ秒の分解能を達成しました。このような優れた性能のために、従来大型施設でしか行えなかった実験の多くが大学の実験室で実現可能になり、研究の裾野が広がる事で、強磁場施設における研究の最適化にも寄与します。
 直接光学系の採用により、高分解能の実時間測定だけでなく、高精度の偏光解析、非線形光学実験、高分解能実験やテラヘルツ分光など、これまでの強磁場分光実験では困難であった高度の分光実験が可能になります。実際、今回公表された論文では、In0.2Ga0.8 As超格子の超蛍光の観測に応用し、1ピコ秒の時間分解能が達成されている事を実証しました。

〈本研究成果の意義〉
 今回の成果は、従来存在しなかった超短パルスレーザーと卓上型超強磁場の組み合わせを世界で初めて実現する事で、分光実験の世界に新しい可能性をもたらすものであり、世界的にもユニークな成果です。このシステムが普及することにより、物理学、工学、材料科学分野における超強磁場分光の応用が格段に広がります。その結果、広範な国際協力を含む共同研究が今後世界的に盛んになることが期待されます。

〈特記事項〉
 本研究は、東北大学金属材料研究所とライス大学の間の国際共同研究であり、金属材料研究所の国際共同研究センターのプロジェクト研究により支援されました。使用された技術の一部は、科学研究費助成事業:基盤研究(S)で開発されたものであり、博士課程教育リーディングプログラムで利用されます。ライス大学における研究は、The National Science Foundation,the Department of Energy and the Robert A.Welch Foundationにより支援されています。東北大学金属材料研究所は今回開発した卓上強磁場装置を既に英国マンチェスター大学へMTA:研究成果移転プログラムにより輸出しています。

<ライス大学:300,Rice University,6100 Main St.,Houston,TX 77005>
 アメリカテキサス州ヒューストンにキャンパスがあり、U.S.News&World Report誌によれば、アメリカのトップ20の大学にランクされている。
 建築、経営、光学をはじめとして、3,708名の学部学生と2,374名の大学院生が学んでおり、教員と学生の比率は1:6と手厚い教育で知られている.
 ウェブサイト http://tinyurl.com/AboutRiceU


 ※図1〜5は、添付の関連資料を参照

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