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富士通研究所など、人工頭脳プロジェクトで代々木ゼミナールの模試に挑戦

2013-11-29

国立情報学研究所の人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」で、
代々木ゼミナールの模試に挑戦!



 国立情報学研究所(注1)(以下、NII)の人工頭脳プロジェクト『ロボットは東大に入れるか』(以下、東ロボ)の数学チームに、株式会社富士通研究所(注2)(以下、富士通研究所)は、昨年度から参画し共同研究を行っています。「東ロボ」はNIIの新井紀子教授を中心に2011年にスタートしたもので、2016年までに大学入試センター試験で高得点をマークし、2021年に東京大学入試を突破することを目標としています。

 本年度は、これまでの研究成果をもとに、学校法人高宮学園 代々木ゼミナール(注3)(以下、代ゼミ)の“代ゼミ模試”に挑戦しました。数学チームでは、全国センター模試(数IA、数IIB)と東大入試プレ(文系、理系)に取り組みました。問題テキストの言語処理の一部で人による介入を許しましたが、人工頭脳「東ロボくん」による自動求解の結果、東大模試では、文系4問中2問完答、理系6問中2問完答で、文系理系とも受験者中、偏差値約60でした。

 富士通研究所は、今後も「東ロボ」(数学)を通して、NIIと共同でヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティを実現するために必要な技術の開発を行っていきます。これにより、数理的な分析や最適化技術をはじめ、数学の様々な問題を正確に解くために必要となる計算技術を深化させ、現実世界の問題解決のために求められる高度な数理解析が自動化されることを目指していきます。


 代ゼミ模試挑戦の関連情報は東ロボプロジェクトのホームページ(http://21robot.org/)をご覧ください。

 数学チームの研究の取り組みについては、人工知能学会(注4)の2013年度全国大会論文集の『深い言語理解と数式処理の接合による入試数学問題解答システム』(松崎拓也、岩根秀直、穴井宏和、相澤彰子、新井紀子)、および、『数式処理による入試数学問題の解法と言語処理との接合における課題』(岩根秀直、松崎拓也、穴井宏和、新井紀子)にて紹介されています。


代ゼミ模試に挑戦>
 本年度は、東ロボプロジェクトとして初めて代ゼミ模試に挑戦しました。数学チームでは、全国センター模試(数IA、数IIB)と東大入試プレ(文系、理系)にも挑戦しました。

 問題文解釈の一部で人の手助けが必要なものもあり、問題テキストの言語処理の一部で人による介入を許しましたが、人工頭脳「東ロボくん」による自動求解の結果、東大入試プレでは、文系は4問中2問完答、理系は6問中2問完答で、文系理系とも受験者中、偏差値約60でした。

 実際の模試に挑戦することで、これまでの研究成果の評価検証を行い、技術的な課題抽出し今後の研究開発の促進につなげていきます。

 東ロボ数学の研究を進めるにあたって、東京書籍株式会社(注5)およびジェイシー教育研究所(注6)より数学問題のデータを提供いただいています。


<課題>
 数学の入試問題をコンピュータが解くとは、人間にとって理解しやすい自然言語や数式で表現された問題文を、コンピュータが計算プログラムで実行可能な形式に変換し、プログラム(ソルバ)で問題を解くことです。そのためには以下の3つの手順が必要です:
 (1)言語理解・意味解析:人間にとって理解しやすい自然言語や数式で表現された問題文を理解する。具体的には、問題テキストを形式的な意味表現へ翻訳する。
 (2)論理式の書き換え・立式:問題の意味表現を、実際に自動演繹が可能な形へ書き換える。つまり、コンピュータが処理できる形式に変換する。
 (3)推論系・計算処理:数式処理・自動演繹ソルバで答えを求める。

 言語理解・意味解析の部分の完全な自動化を実現するのは容易ではありません。(1)の処理部分については、さらに次の3つの処理から構成されています。
 (1−a)単語の間の文法的関係の認識(構文解析)
 (1−b)単語の意味表現から文の意味表現を合成(意味合成)
 (1−c)文の間の論理関係の認識(文脈解析)

 自動化達成のためにはそれぞれに課題が残っており、今年度の代ゼミ模試への挑戦においては、構文解析および文脈解析について、一部、人による介入を許しましたが、それ以外の部分は自動的に処理を行いました。

 数学ソルバとの結合の部分では、自然言語処理によって導かれる問題文の意味表現から立式した式が、人による立式に比べ大きく冗長な表現になることも多く、より簡単な式への立式方法やソルバの計算速度効率化が求められています。さらに、ソルバ側には、入試問題特有の計算アルゴリズムの開発も重要です。

 このように、各ステップにおいてさらに様々な理論・技術の開発が必要であり、それらの技術を問題ごとに適切に組み合わせつないでいくことも必要になります。


 ※「図1 東ロボくんの東大模試の答案用紙」は、添付の関連資料を参照


<数学チームの今後の取組みについて>
 今回の代ゼミ模試への挑戦を通して、様々な課題が明らかになってきました。東ロボくんが知らなかった単語などもあり、数学辞書や知識ベースの拡充をすすめつつ、構文解析や文脈解析の完全な自動化を目指していきます。

 さらに、より広範な問題へ対応するためには、意味解析や計算処理の高度化が欠かせません。意味解釈における問題の表現の仕方や求解処理の手順の工夫など高度化のための研究開発をすすめ、それにより自動求解の計算にかかる時間の低減やまだ取り組めていない単元の問題への対応も進めて行きます。


<商標について>
 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。


以上


「注釈」
 注1 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所
    所長 喜連川優。
 注2 株式会社富士通研究所:
    代表取締役社長 富田達夫、本社 神奈川県川崎市。
 注3 学校法人高宮学園 代々木ゼミナール
    理事長 高宮英郎、本部 東京都渋谷区。
 注4 一般社団法人 人工知能学会:
    会長 山口高平、事務局 東京都 新宿区。
 注5 東京書籍株式会社:
    代表取締役社長 川畑慈範、本社 東京都北区。
 注6 株式会社ジェイシー教育研究所:
    代表取締役 御園一成、本社 千葉県千葉市。


「関連リンク」
 ・国立情報学研究所の人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」に富士通研究所が“数学チーム”として参加(2012年9月10日 プレスリリース)
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2012/09/10.html


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