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産総研、植物系放射性セシウム汚染物の焼却灰を除染する技術を実証

2013-11-26

植物系放射性セシウム汚染物の焼却灰を除染する技術を実証
−10トン超を焼却し、焼却灰の放射性セシウム60〜90%を抽出・固定化−



<ポイント>
 ・適切に管理された条件下で焼却処理することにより、汚染物の重量を50分の1〜100分の1に低減
 ・焼却灰に水を混ぜ、水に溶け出した放射性セシウムを独自開発の吸着剤でほぼ完全に回収
 ・吸着剤は極めて少量で済み、搬送コストの削減、中間貯蔵施設のスペース節減、汚染物管理の簡易化に寄与

<概要>
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)ナノシステム研究部門【研究部門長 山口 智彦】グリーンテクノロジー研究グループ 川本 徹 研究グループ長、伯田 幸也 主任研究員、田中 寿 主任研究員、小川 浩 上級主任研究員、南 公隆 主任研究員、北島 明子 産総研特別研究員、Durga Parajuli産総研特別研究員らは、東京パワーテクノロジー株式会社【代表取締役社長 角江 俊昭】(以下「TPT」という)、関東化学株式会社【代表取締役社長 野澤 学】(以下「関東化学」という)、日本バイリーン株式会社【代表取締役社長 吉田 俊雄】(以下「日本バイリーン」という)、株式会社阿部鐵工所【代表取締役 阿部 兼美】(以下「阿部鐵工所」という)と共同で、樹木の幹や枝などの植物系放射性セシウム汚染物を焼却し、生じた焼却灰からプルシアンブルー(以下「PB」という)ナノ粒子吸着剤により放射性セシウムを抽出・回収する技術を開発し、その有効性を福島県双葉郡川内村に設置した実証試験プラントを用いて確かめた。

 この実証試験では、汚染物の種類や焼却条件を変え、合計11回の焼却試験を行い、計10トン以上の植物系放射性セシウム汚染物を焼却し、まず約80kgの焼却灰にした。次に、焼却灰中の放射性セシウムを水に抽出し、その灰中の放射性セシウムの60〜90%を除去することに成功した。抽出された放射性セシウムは、灰の約500〜3,000分の1、焼却前の植物系放射性汚染物の10,000分の1以下の重量のPBナノ粒子吸着剤によって回収できる。これにより、今後設置される除染廃棄物用の中間貯蔵施設における必要容積を大きく低減することが可能になる。

 ※参考画像は、添付の関連資料を参照

<開発の社会的背景>
 2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所放射性物質漏えい事故以来、福島県など広範囲にわたる地域の除染の推進が国の事業として進められている。しかし、除染により生じた放射性物質を含んだ廃棄物を貯蔵・保管する施設については、検討が進んでいるものの、いまだその設置場所は決定しておらず、貯蔵や保管に十分な規模の施設を確保できるかどうか不透明な状況にある。そのため、除染により生じる廃棄物の量を減らす減容技術の確立が喫緊の課題となっている。

 減容すべき廃棄物の一つは植物系放射性セシウム汚染物である。住宅の周辺などを除染した際に集められる草や木の枝葉などに加え、農林業で生じる樹皮、堆肥などにも放射性セシウムで汚染されているものがある。また、森林の除染については、例外的に住宅敷地から20mを超える範囲についても除染を認める方針が出されており、除染対象地域が拡大している。

 植物系放射性セシウム汚染物を焼却した場合、放射性セシウムを高濃度に含む灰が排出されるため、その管理方法が課題となる。灰については、8千Bq/kgと、10万Bq/kgという二つの基準を環境省が提示している。除染作業以外で排出される場合は、8千Bq/kg超の灰のみ指定廃棄物として管理型処分場または中間貯蔵施設で管理される。さらに、これらの指定廃棄物と、除染で生じた廃棄物については、10万Bq/kgを超えるか否かで、管理方法が大きく変わる。このため、廃棄物に含まれる放射性セシウムの濃度を最終的に8千Bq/kgまたは10万Bq/kgという二つの基準値よりも下げることができれば、廃棄物の管理を簡便にすることが可能となる。

 結果として本技術の実用化により、中間貯蔵施設の設置の加速、仮置き場から中間貯蔵施設への除染廃棄物移送の加速、ひいては除染作業の加速などの効果が期待される。

<研究の経緯>
 産総研は、東京電力福島第一原子力発電所放射性物質漏えい事故以降、精力的に除染技術の開発に取り組んできており、特に、高効率・高選択性を示すセシウム吸着剤としてのPBナノ粒子の開発を進めてきた。そして、焼却灰から放射性セシウムを水に抽出した後に、その抽出水にPBナノ粒子を加えて放射性セシウムを回収し、放射性セシウム汚染物を減容させる方法を提案した(2012年2月8日 産総研プレス発表)。PBナノ粒子は、セシウムと似た性質のナトリウムやカリウムのイオンが高濃度に存在する水からでも、セシウムイオンを選択的に高効率で吸着する。

 一方、TPT(旧東電環境エンジニアリング株式会社)と産総研は、植物系放射性セシウム汚染物の焼却について、郡山チップ工業株式会社主導の下、平成23年度除染技術実証試験事業において、放射性セシウムに汚染された樹皮を焼却した場合にも、バグフィルターの設置によって、排気ガス中には放射性セシウムが検出されないことなどを明らかにした。

 これらの検討結果を基に、焼却、灰の除染(放射性セシウムの回収)までを一貫して実施することを目的として、実証試験プラントを設計・開発し、平成24年11月から福島県双葉郡川内村において実証試験を開始した(2012年11月12日 産総研プレス発表)。平成25年10月末にこの実証試験で予定していた試験を終了した。今回の発表は、その成果を報告するものである。


 ※以下の資料は、添付の関連資料「参考資料」を参照
  ・研究の内容
  ・今後の予定
  ・用語の説明

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