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日本無線、イギリスのベンチャー企業とマルチチャネルSAWバイオセンサーを開発
同時に複数診断が可能なマルチチャネルSAWバイオセンサを開発
−OJ−Bio Ltd.が国際医療機器展MEDICAに出展−
日本無線株式会社(本社:東京都杉並区、代表取締役社長:土田隆平 以下JRC 日本無線)とOJ−Bio Ltd.(*1)(本社:英国 ニューカッスル、代表取締役社長:Dale Athey 以下OJ−Bio)は共同で、同時に複数の診断が可能なマルチチャネルSAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)バイオセンサを開発しました。このバイオセンサの携帯型コンセプトモデルを、2013年11月20日からドイツで開催される国際医療機器展MEDICA(*2)に出展いたします。
感染症の拡大防止、家庭での健康管理や病気の早期発見のために、誰にでもその場で簡単に使えるバイオセンサの要求が高まっています。JRC 日本無線とOJ−Bioは、SAWデバイス(*3)技術とバイオ技術とを融合させることによりこれまでに無い小型、高感度なバイオセンサの実現に向けて研究開発に取り組んで参りました。
本バイオセンサは血液や尿等のサンプルをチップ上に滴下することで、抗原抗体反応による分子認識の結果として弾性表面波に変化が生じます。この弾性表面波の変化を電気信号の変化として測定するため、データの定量化による高精度な測定が可能です(図1)。結果が数値データとして得られることからネットワークでの管理も容易で、さまざまな用途での利用が期待されます。
※図1は、添付の関連資料を参照
このたび開発したバイオセンサは、マルチチャネル化により同時に3種類の診断が可能であり、たとえばインフルエンザA型、B型、RSウイルスを1チップで同時に診断することができるなど、感染症診断、生活習慣病診断、妊娠検査、動物や家畜の病気の診断など様々な用途に適用できます。現在、OJ−Bioはインフルエンザの他、HIV/AIDS、歯周病など3件の英国政府系プロジェクトを進めており、SAWバイオセンサの実用化に向けて研究開発を加速しています。
今回、開発したバイオセンサの具体的な利用イメージを明確にするために、スマートフォン接続形のコンセプトモデルを開発しました(図2)。このコンセプトモデルは、検出回路と、1回使い切りのマルチチャネルセンサチップで構成され、検出回路はブルートゥースによりスマートフォンとワイヤレスに接続できます。スマートフォンの通信機能を利用することで遠隔地の医療機関と連携することも可能になるため、病院などでの利用にとどまらず、ネットワークを介することで家庭(在宅医療、健康管理)、農場、病院の無いへき地など、様々なシーンにおける利用が想定されます。
※図2は、添付の関連資料を参照
OJ−Bioは、このコンセプトモデルを2013年11月20日(水)〜23(土)の4日間、ドイツで開催される国際医療機器展MEDICAに出展いたします(Hall−1、F09)。なお、OJ−Bioは商品化に向けてパイロット生産を検討中であり、JRC 日本無線は社内体制を強化してSAWバイオセンサの事業化に向けてOJ−Bioをサポートしていきます。
*1:OJ−Bio Ltd.(url http://www.oj-bio.com)
JRC 日本無線とOrla Protein Technologies Ltd.(本社:英国 ニューカッスル、代表取締役社長:Dale Athey 以下ORLA)との合弁会社として、2009年11月に英国 ニューカッスルに設立されました。JRCの持つSAW・電子回路技術とORLAの持つバイオ技術を融合し、家庭などで誰にでも簡単に使える小形バイオセンサを開発しています。
ORLAは、英国ニューカッスル大学構造生化学研究室ジェレミー・レーキー教授とデール・アーシー博士によって2001年に設立されたニューカッスル大学発のベンチャー企業で、水溶液中において、自己組織化工程によりタンパク質をナノスケールで表面に形成する革新的アプローチを開発し、基本特許を保有しています。
*2:国際医療機器展(MEDICA)
毎年11月にドイツ・デュッセルドルフで開催される、入場者数13万人以上の世界最大の医療機器・医療製品に関する専門見本市であり、2013年は11月20日(水)〜23日(土)に開催されます。
*3:SAWデバイス:弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子
水晶等の圧電基板の表面を振動して伝搬する音響波(弾性表面波)を利用した電子部品で、小型で大量生産が可能です。代表的な用途として高周波信号のフィルタがあり、携帯電話・スマートフォン等の無線通信装置で数多く使用されています。表面のわずかな変化で特性が変化するため、今回のようにセンサへの応用もできます。