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生理学研究所など、脳と脊髄の神経のつながりを人工的に強化することに成功

2013-11-14

脳と脊髄の神経のつながりを人工的に強化することに成功



<内容>
 脊髄損傷や脳梗塞による運動麻痺患者の願いは、「失った機能である自分で自分の身体を思い通りに動かせるようになりたい。」ということです。しかしながら、これまでのリハビリテーション法・運動補助装置では一度失った機能を回復させることは困難でした。今回、生理学研究所の西村幸男 准教授と米国ワシントン大学の研究グループは、自由行動下のサルに大脳皮質の神経細胞と脊髄とを4x5cmの神経接続装置を介して人工的に神経結合し、大脳皮質と脊髄の繋がりを強化することに世界で初めて成功しました。本研究成果を日常生活で利用可能な脊髄損傷や脳梗塞などの運動・感覚麻痺に対する新しいリハビリテーション法として応用することを目指します。本研究結果は、神経科学専門誌NEURON誌(2013年11月7日オンライン速報)に掲載されます。

 研究チームは大脳皮質と脊髄間の繋がり(シナプス結合)を強化する目的で、自由行動下のサルの大脳皮質の神経細胞と脊髄とを神経接続装置(図1)を介して、人工的に神経接続しました。神経接続装置は、大脳皮質の神経活動を記録し、それを電気刺激に変換し、0.015秒の遅延時間(刺激のタイミング)をおいて、脊髄に対して電気刺激をします。サルは神経接続装置と伴に、ご飯を食べたり、遊んだり、寝たり、自由に日常を変わらず過ごしていました(図2中)。すると、次の日には大脳皮質と脊髄間のシナプス結合の強さは、人工神経接続前と比較すると、より強くなっていました(図2左)。シナプス結合の強さは、刺激のタイミングが大変重要で、0.012−0.025秒だと強化され(図3赤丸)、0.050秒以上ではシナプス結合の強さに変化が見られませんでした。大変興味深いことに、刺激のタイミングを短くするとシナプス結合の強さが減弱されました(図3水色)。この結果は、自由行動下の動物でシナプス結合を強めたり、弱めたりした世界で初めての成果です。

 西村准教授は、「この技術は在宅で利用可能な脊髄損傷や脳梗塞後の運動・感覚機能の機能再建・リハビリテーションに役立つことが期待されます。シナプス結合は学習や記憶を司り、脳・脊髄の至る所にあります。この技術は学習能力や記憶を強化することにも応用可能かもしれません。」と話しています。

 本研究は、JST戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)の「脳情報の解読と制御」研究領域(研究総括:川人 光男(株)国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 所長)における研究課題「人工神経接続によるブレインコンピューターインターフェイス」(研究代表者:西村 幸男)の一環として行われました。

 また、今回の動物実験に関しては、動物実験の指針を整備するとともに、研究所内動物実験委員会における審議を経て、適切な動物実験を行っております。

<今回の発見>
 ・大脳皮質と脊髄との繋がりを強化・減弱することに成功。
 ・3.5x5.5cmの神経接続装置を使って、自由行動下のサルに大脳皮質運動野の神経細胞と脊髄とを神経接続装置を介して人工的に神経結合した。
 ・日常生活で利用可能な脊髄損傷や脳梗塞などの運動・感覚麻痺の新しいリハビリテーション法となり得る。

 ※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照

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