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東北大、2月にロシアで空中爆発を引き起こした隕石落下の観測結果など公表

2013-11-13

チェリャビンスク空中爆発を引き起こした隕石落下の観測
および回収隕石の宇宙化学的解析の結果について


《概要》
 東北大学大学院理学研究科・地学専攻の中村智樹教授とアン・インスー博士は、チェリャビンスク空中爆発を引き起こした隕石を解析する国際コンソーティアム研究に参画し、隕石試料の同位体宇宙化学的解析を行いました。その結果、チェリャビンスク隕石を構成する元素のうち最も多い酸素の同位体比は、地球の岩石の組成と異なり小惑星起源のコンドライト隕石と同一であることがわかりました。さらにチェリャビンスク隕石は、小惑星探査機はやぶさが回収した小惑星「イトカワ」の微粒子とほぼ同一の酸素同位体組成であることを示しました(図1)。
 この結果からチェリャビンスク隕石がS型小惑星を起源とする物質であることが明らかになりました。本成果は2013年11月7日にサイエンス誌に掲載される国際共同研究による論文の一部として公表されます。

 2013年2月15日に起こったロシア・チェリャビンスク市への隕石落下は、1908年に起きたツングースカ大爆発以来の大きな空中爆発をもたらしました(図1)。その落下の様子はさまざまな観測機器で測定されました。高度約30km の上空でチェリャビンスク隕石は分裂し、それに伴う温度上昇により隕石は大爆発を起こしました(図2)。その際に発生した衝撃波により1200名が負傷し、また輝度は太陽より明るく、発生した紫外線でやけどを負った人もいるほどでした。地上には約5トンの隕石が落下したと考えられますが、その質量は地球に飛来した元の物体の全質量の1%にも満たず、大部分は空中で蒸発したか、分裂し塵になったと考えられます。回収された隕石(図3)の詳しい分析により、この隕石はもともと小惑星上で大きな衝突を経験し、衝撃による割れが隕石中に形成され、それにより隕石強度が下がり地球落下時の分裂につながったことがわかりました。また、隕石の主要鉱物の化学組成、および酸素同位体比組成などから、チェリャビンスク隕石はLLタイプのコンドライト隕石であることがわかりました。さらに解析を進めると、例えば隕石の主要鉱物であるカンラン石の鉄とマグネシウムのモル比を百分率で表したFa数は28.65 ±0.54であり、この値は小惑星探査機はやぶさが回収したS型小惑星「イトカワ」の微粒子に含まれていたカンラン石のFa数(=28.46 ±1.17)と一致しました。また、酸素同位体組成もイトカワ微粒子とほぼ一致することがわかりました(図1)。これらの事実からチェリャビンスク隕石はイトカワと同様のS型小惑星を起源とすることが判明しました。

 彗星や小惑星の欠片(隕石)の地球への衝突が、気候変動や恐竜の絶滅の原因とされています。そのような大きな影響を与える隕石衝突を、気候変動をもたらすような大規模なものではないとはいえ、現代の高度な技術により観測し、どのように、また、どの程度地球に被害を及ぼすのか、定量的に理解することに成功したのが大きな意義です。また、詳しい化学分析により、チェリャビンスク隕石が初期太陽系の進化過程を記録する科学的に貴重な試料であるということ示したことも重要な成果です。


 論文タイトル:
 Chelyabinsk Airburst,Damage Assessment,Meteorite Recovery and Characterization
 著者:
 Popova O.P.(ロシア科学アカデミー)他、中村智樹とアン・インスーを含む57名


 ※図1〜3は、添付の関連資料を参照


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