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浜松ホトニクス、シンチレーター面観察方式の基礎技術を開発

2013-11-01

世界初、工業用デュアルエナジーX線CTを実現する
当社独自のシンチレータ両面観察方式の基礎技術を開発


 当社は、世界で初めて工業用デュアルエナジーX線CTを実現する、当社独自のシンチレータ両面観察方式(DSSD)の基礎技術を開発しました。本技術を国内外のX線CTメーカーに向けてライセンス販売やユニットエンジンとして供給していく予定です。
 なお、本開発品は、11月7日(木)から3日間、アクトシティ浜松浜松市中区)で5年ぶりに開催される、浜松ホトニクス総合展示会「フォトンフェア2013」に出展します。

<技術の概要>
 本技術は、自社内にあるX線源、高感度デジタルカメラ、シンチレータプレートの要素技術を組み合わせることで、世界で初めて開発した工業用デュアルエナジーX線CTの基礎技術です。当社独自のシンチレータ両面観察方式は、高エネルギー画像と低エネルギー画像を1回の撮影で取得できるため、従来の工業用シングルエナジーX線CTでは取得不可能だった、特定の物質分別を1回のX線照射で実現することができるようになります。さらに、本技術に基底物質分解手法を用いることにより、仮想単色X線画像を作成することが可能になります。その結果、取得された画像データに線質硬化異常画像(ビームハードニングアーチファクト)補正ができるため、高速かつ簡便にデュアルエナジーの効果が得られます。これにより、線質硬化異常画像の改善などを行うことができ、形状認識や物質分別の精度向上が期待されます。
 また、本技術はシンチレータ、カメラ、光学倍率を容易に変更できるシンプルな構成となっているため、以下のようなカスタマイズが容易なうえ、低コストで自由度の高いX線CTシステムが構築可能となります。
 既存のX線CTシステムは、
 (1)検出器のサイズによって撮像対象のサイズが決まってしまう制約があり、さまざまな大きさに対応するには、複数の検出器を用意する必要がある。
 (2)検査対象の物質に最適なシンチレータの大きさや種類、厚みを変えることが容易ではない。
 (3)システムの解像度に自由度を持たせることは困難。
 (4)検出器にX線を直接照射するため検出器自身が被曝のダメージを避けられず、検出器の交換が必要となってしまう。

などの制約がありましたが、今回開発したデュアルエナジーX線CTシステムはこれらの問題を低コストで克服することが可能となります。
 また、本技術は、検出器(デジタルカメラ)をX線照射範囲外に設置できることや1回の照射で同時にデュアルエナジーデータを取得することにより被曝が軽減あるいは防止されるため、X線照射を直接受けるシンチレータの交換のみで、メンテナンスコストを軽減します。
 当社では、以下の市場での応用が進むことを期待しています。
 ・複合素材など新素材の解析用途
 ・金属加工品などのメタルアーチファクト効果の低減
 ・スマートフォンや携帯端末などの非破壊検査(異常画像低減)
 ・ダイヤモンドや鉄、レアメタルレアアースなどの資源選別
 ・工業製品の体積測定(相対値でなく定量的データ取得可能)
 ・高ダイナミックレンジCTによる工業製品の高精度計測

<開発の背景>
 近年、非破壊検査用途で工業用X線CTの需要が高まりつつあります。X線CTで、複数の物質から構成される検査対象物から、特定の物質を選択的に抽出・分別する場合、これまでのシングルエナジーX線CTでは、使用する管電圧によって結果が変わってしまうという課題がありました。これは、物質を透過したX線を輝度情報のみで検出する場合、重くて薄い物質と軽くて厚い物質が同等の信号となってしまうためです。また、シングルエナジーX線CTは、実用面において、虚影や異常画像が現れる線質硬化異常画像などの問題もあり、画像処理ソフトによる画像の補正が必須となっていました。
 医療分野では、人体X線透過画像から骨や血管などの特定した構造を選択的に抜き出して再構成をする必要性が高まっているため、デュアルエナジーCT撮影手法が急速に広まりつつあります。
 デュアルエナジーCTでは、異なるX線波長で複数回撮像する必要があるため、X線源と検出器が2対になった2管球方式や、2回撮影する2回転方式と管電圧高速スイッチング方式などが用いられていますが、シングルエナジーCTに比べるとコストが高い、被曝量と計測時間が増加するなどの問題があるため、工業用途においては技術の普及がみられませんでした。

<基本技術の原理>
 デュアルエナジー撮像は、異なる波長のX線を照射することで、シングルエナジーでは識別することができない、重くて薄い物質と軽くて厚い物質を識別することができるようになることで知られています。
 当社独自のシンチレータ両面観察方式は、光学レンズを介して2台の高感度カメラで両面からシンチレータを撮像する方式で、1回のX線撮像でデュアルエナジー画像を得られる画期的な技術です。
 本技術の仕組みは、X線を可視光に変換する2種類の異なるシンチレータを、遮光板や反射板で張り合わせ、低エネルギーと高エネルギーの異なるエネルギー画像を両面から2台の高感度カメラ(科学計測用CMOSカメラ)で同時に撮像する構成となっています。
 また、本技術によって得られたデュアルエナジー画像から基底物質分解(Basis Material Decomposition)と呼ばれる手法を適用することにより、シングルエナジーCTで問題となる線質硬化アーチファクトが除去された仮想単色X線画像などの応用画像を作り出すことが可能となり、物質分別の精度向上が期待できます。

 ※参考画像は、添付の関連資料「参考画像1」を参照

■デュアルエナジーX線イメージングによる基底物質分解
 X線には波長によって物質の透過率が異なるという特徴があります。そのため、2波長以上の異なるエネルギーで画像を複数回取得すれば、シングルエナジーでは取得できなかった物質固有の情報を得ることができるようになります。基底物質分解とは、これらの物質ごとに異なるX線吸収計数の波長依存性を予めテーブルとして作成しておくことで、得られたデュアルエナジーX線画像から、対象とする物質を抽出した画像に作り変えることができる手法です。

■線質硬化異常画像(ビームハードニングアーチファクト)
 線質硬化異常画像とは、同じ材質、密度でも輝度値が一様にならない、虚影が現れる現象です。X線吸収率が低い物質中に、金属などのX線吸収率が非常に高い物質が点在する場合や、撮影方向によりX線通過距離が大幅に異なる場合に発生します。工業用製品は軟らかい樹脂と硬い金属などが混在しているため、線質硬化異常画像が生じやすく、画像から正しい形状の認識や材質ごとの切り分け(物質分別)が困難になります。
 大型シンクロトロン施設などの単色X線源では、線質硬化が発生しませんが、施設に限りがあるなど一般的な利用には向いていない面もあります。工業分野においては安価なX線源が広く使われています。一般的なX線源は、さまざまなエネルギーが含まれる連続スペクトルの白色X線を発生するため、X線が物質を通過するとき、X線エネルギーが低いほど、物質の吸収係数は高くなり、結果的にX線のエネルギー分布は少しずつ高い側に移動(シフト)するため、線質硬化は避けられません。
 本技術によって得られるデュアルエナジーX線画像を応用することで、線質硬化アーチファクトが取り除かれた定量的な仮想単色X線画像を作り出すことが可能となります。

 ※参考画像は、添付の関連資料「参考画像2・3」を参照


<この件に関するお問い合わせ先>
■一般の方
 浜松ホトニクス株式会社 システム営業推進部
 〒431−3196 浜松市東区常光町812
 TEL053−431−0150
 FAX053−433−8031
 E−mail:sales@sys.hpk.co.jp

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