イマコト

最新の記事から注目のキーワードをピックアップ!

Article Detail

東大、マウスでメタボリックシンドロームにおける新たな免疫細胞の役割を解明

2013-10-31

マウスにおいてメタボリックシンドロームにおける新たな免疫細胞の役割を解明
―脂肪組織の慢性炎症を標的とする新しい治療の可能性を示唆―



 近年、食生活の変化や運動不足に伴い肥満が増加しており、心筋梗塞や脳卒中の危険因子としてメタボリックシンドローム(用語解説参照)が注目されています。メタボリックシンドロームでは、脂肪組織に慢性炎症がおき、全身に悪影響を与えると考えられていますが、そのメカニズムはまだよくわかっていません。東京大学医学部附属病院 循環器内科 システム疾患生命科学による先端医療技術開発 特任准教授 西村智(研究当時。現 自治医科大学分子病態治療研究センター 教授)、東京大学医学部附属病院 循環器内科講師 真鍋一郎、東京大学 名誉教授 永井良三(現 自治医科大学 学長)は、2009年にマウスにおいてCD8陽性T細胞(用語解説参照)が脂肪組織の炎症を引き起こすことを明らかにしていました。
 今回研究グループは、マウスにおいて脂肪組織に存在する制御性B細胞(用語解説参照)が、脂肪組織の炎症を抑えることを世界に先駆けて発見しました。また、この制御性B細胞は肥満するとマウスのみならずヒトでも減少することも分かりました。その結果、炎症を進行させる細胞の働きの方が炎症を抑える細胞の働きよりも強くなり、炎症が進んでしまう可能性があります。また、制御性B細胞が作るインターロイキン10が炎症の抑制に重要であることも見いだしました。
 本研究の成果により、脂肪組織の制御性B細胞はメタボリックシンドロームの新たな診断・治療法開発の標的になることが期待されます。
 なお、本成果は、イノベーションシステム整備事業先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム(文部科学省)「システム疾患生命科学による先端医療技術開発」、最先端研究開発支援プログラム(内閣府/日本学術振興会)「未解決のがんと心臓病を撲滅する最適医療開発」の支援を受けて行われました。


【発表者】
 東京大学医学部附属病院 循環器内科 システム疾患生命科学による先端医療技術開発
  特任准教授 西村智(研究当時。現 自治医科大学分子病態治療研究センター 教授)
 東京大学医学部附属病院 循環器内科 講師 真鍋一郎
 東京大学 名誉教授 永井良三(現 自治医科大学 学長)


【研究の背景】
 近年、食生活の変化や運動不足に伴い肥満が増加しており、心筋梗塞や脳卒中の危険因子としてメタボリックシンドロームが注目されています。肥満では脂肪組織に慢性の炎症が起き、メタボリックシンドロームに伴う心血管病や糖尿病等の生活習慣病の発症を促進していると考えられています。一方で、脂肪組織には多くの免疫細胞が存在し、これまでにマウスにおいてCD8陽性T細胞や炎症性マクロファージといった細胞が炎症を進めることが明らかとなっていました。しかし、脂肪組織の炎症がどのように始まり、また制御されているのか、そのメカニズムはよく分かっていませんでした。


【研究の内容】
 今回、東京大学医学部附属病院の研究グループは、マウスの脂肪組織に多数の制御性B細胞が存在することを発見しました。このB細胞の多くは、炎症を抑えるサイトカイン(インターロイキン10)を分泌しており、脂肪組織の炎症を抑える役割を持つことを見いだしました。インターロイキン10を作れないB細胞を持つマウスでは、肥満に伴う脂肪組織の炎症が悪化するだけでなく、肥満によって生じた糖尿病の状態も悪くなりました。つまり、脂肪組織の制御性B細胞の働きは、全身の代謝の制御にも大きく影響することが明らかとなりました。この脂肪組織の制御性B細胞は、肥満するとマウスのみならずヒトにおいてもその数と機能が低下します。その結果として、肥満脂肪組織では炎症を進行させる免疫細胞の働きが、炎症を抑える制御性B細胞の働きを上回り、炎症が拡大していくと考えられます。
 今回新たに見つけた制御性B細胞の働きを人為的に強めることによって、脂肪組織の炎症を抑えられる可能性があります。このように制御性B細胞は、肥満に伴う脂肪組織の炎症への新たな治療標的になることが期待できます。


【用語解説】
 ・メタボリックシンドローム:腹囲の基準に加えて、高脂血症、糖尿病、高血圧のうち2つ以上に該当すると診断される。糖尿病、心筋梗塞や脳卒中の原因となる。
 ・B細胞:リンパ球の一つ。多くは、抗原に応答して増殖し、抗体を生産する。
 ・制御性B細胞:B細胞の一種で、サイトカインを分泌し炎症を抑える役割がある。
 ・T細胞:リンパ球の一つ。B細胞による抗体産生の調節、ウイルスに感染した細胞の破壊する、などの役割を持つ。


【発表雑誌】
 雑誌名:Cell Metabolism
 論文名:Adipose natural regulatory B cells negatively control adipose tissue inflammation
 掲載日:米国東部夏時間10月24日(オンライン版に掲載)


【参照URL】
 東京大学医学部附属病院 循環器内科 HP(http://plaza.umin.ac.jp/~utok-card/
 Cell Metabolism HP(http://www.cell.com/cell-metabolism/

Related Contents

関連書籍

  • 死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    死ぬまでに行きたい! 世界の絶景

    詩歩2013-07-31

    Amazon Kindle版
  • 星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    星空風景 (SKYSCAPE PHOTOBOOK)

    前田 徳彦2014-09-02

    Amazon Kindle版
  • ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    ロンドン写真集 (撮影数100):ヨーロッパシリーズ1

    大久保 明2014-08-12

    Amazon Kindle版
  • BLUE MOMENT

    BLUE MOMENT

    吉村 和敏2007-12-13

    Amazon Kindle版