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大日本印刷、不妊治療クリニック向けにグループ培養が可能な受精卵培養ディッシュを発売
受精卵培養ディッシュを不妊治療クリニック向けに発売
微細なくぼみで複数の受精卵を個別管理しながらグループ培養が可能
大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、複数の受精卵を微細なくぼみで個別管理しながら、グループ培養が可能な、受精卵培養ディッシュを開発し、不妊治療クリニック向けに10月10日に発売します。
【開発の背景】
不妊治療のひとつとして行われる体外受精は、2010年には国内での実施件数が24万件を超え、年々増加する傾向にあります。しかし、高額な治療費の負担に加えて、高齢になると妊娠率が低下するということもあり、受精卵の体外培養技術の向上が望まれています。
DNPは、東京大学、家畜改良センターと共同で行った、発育の良い受精卵を識別する研究の一環として、2011年に、受精卵を1つずつ個別に管理する微細なくぼみを設けた培養ディッシュを開発し、家畜受精卵を対象とした検証を十分に重ね、製品化しました。DNPは、この製品の販売を通じて蓄積したノウハウをもとに、今回、不妊治療クリニック向けに新たに設計を行い、高い妊娠率を実現し得る培養性能を確保しつつ、滅菌やエンドトキシン(毒性物質)管理等の安全性に関わる検査を実施し、クリニックでの作業性の向上を実現する「WOW型培養ディッシュ」を開発しました。さらに、みなとみらい夢クリニック(神奈川県横浜市)の協力のもと、従来の体外受精の培養手法である「液滴培養法」との比較試験を実施し、胚発生や胚盤胞の作出において良好な結果が得られ(*1)たため、不妊治療クリニックに向けて広く販売することとしました。
【WOW型培養ディッシュの概要】
従来の液滴培養法では、胚発生率を向上させるためには、一滴の培養液内に複数の受精卵を培養するグループ培養が望ましいとされています。しかしグループ培養は、複数の受精卵が混在するため、個別の受精卵を厳密に識別できませんでした。一方、個別管理を優先すると、液滴ごとに受精卵を一つだけにする必要があり、グループ培養による効果が得られませんでした。
これに対し、DNPのWOW型培養ディッシュは、受精卵が1つずつ入る程度の微細な(*2)well(くぼみ)が25個(5×5個)並んだwell−of−well(WOW)型容器であり、それぞれのくぼみで受精卵を個別に管理できます。
【特長と他の培養手法との比較】
・微細なくぼみに受精卵を配置して同一の培養液で覆うことで、個別管理とグループ培養の両立が可能です。
・受精卵がくぼみに固定されているため、観察や操作などの作業が容易です。
・くぼみのサイズや形状は、複数の受精卵を顕微鏡の同一視野内で観察でき、良好な視認性が得られるように設計されています。
・一般の培養ディッシュと同様に、材質にポリスチレンを用いているため毒性の心配がありません。
・形状に配慮し、従来と同様の使い勝手が得られるよう設計しました。
※参考資料は、添付の関連資料を参照
【価格(税抜き)】
10個単位での販売となります。定価は、50個の場合で1個あたり2,500円となりますが、大量に使用される場合は別途ご相談に応じます。
【今後の取り組み】
販売は、DNPのグループ会社の大日本商事株式会社が担当します。
DNPおよび大日本商事は、本製品に関連して、2015年度までに5億円の売上を見込んでいます。
*1 以下の学会にて発表
2013年1月13日 第18回 日本臨床エンブリオロジスト学会「簡易型リアクター(WOW型ディッシュ)の有用性」
2013年8月8〜9日 第31回 日本受精着床学会「胚培養における簡易型リアクターの有用性」
2013年9月7〜8日 第16回 日本IVF学会「個別管理培養ディッシュによる培養システムの有用性」
*2 1個のくぼみのサイズは、直径280μm、深さ160μmで、ピッチは400μm。
(μm:マイクロメートルは10のマイナス6乗メートル。1マイクロメートル=0.000001メートル)
※製品画像、参考画像は添付の関連資料を参照