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京大と浜松ホトニクス、フォトニック結晶レーザーの実用化に成功

2013-10-02

フォトニック結晶レーザー:世界に先駆けて実用化に成功
高出力で高ビーム品質、単一スペクトルを同時に実現
次世代型レーザー光源となるフォトニック結晶レーザー
来年春にはサンプル出荷開始予定



 京都大学(大学院工学研究科電子工学専攻教授、光・電子理工学教育研究センター長、野田 進)と浜松ホトニクス株式会社(本社 浜松市中区、代表取締役社長、晝馬 明(ひるまあきら))らのグループは、高出力で高ビーム品質、単一スペクトル、ビーム広がりの抑制を同時に実現する、従来の概念を越えた次世代型レーザー光源とも言うべき、フォトニック結晶(1)レーザーの実用化に世界に先駆けて成功しました。来年春には、各種用途(例:直接レーザー微細加工用光源、各種励起用光源、プロジェクター用の波長変換用基本波光源、センシングや計測用光源、位置検出、測距イメージセンサ、プロファイル測定、モーションセンサなどの用途)に向けて、浜松ホトニクスから国内外の各種装置メーカーにサンプル出荷を開始する予定です。
 なお、本開発品は、11月7日(木)から3日間、アクトシティ浜松(浜松市中区)で5年ぶりに開催される、浜松ホトニクス総合展示会「フォトンフェア2013」に出展されます。
 本開発に際し、独立行政法人科学技術振機構(JST)戦略的創造研究推進事業CRESTプログラム、文部科学省最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム等などの支援を受けました。


<開発の背景と意義>
 一般に、レーザーは、DVD・ブルーレイディスク等の光記録や、光ファイバーを用いた通信、さらには、車体等の金属加工を始めとするものづくりやレーザーメスなどの医療用途など、我々の生活を豊かにする先端技術として広く応用されています。中でも、光記録や光ファイバー通信において必要となるレーザーの出力は、ミリワット(千分の1ワット)程度と小さくて良いため、出力は小さいものの小型かつ低消費電力で安価な半導体レーザーが用いられています。しかし、各種金属・材料加工などのものづくり用途においては、極めて高い出力かつ高光密度が求められるため、半導体レーザーでは対応できす、大がかりな気体レーザーや固体レーザー、ファイバ・レーザーが用いられています。金属・材料加工におけるレーザーの需要は大きいことから、小型・安価・低消費電力である半導体レーザー単体で、高出力化・高光密度化を実現することは、我が国のものづくりの現場へ高品質な高出力レーザーを安価・安定に提供できるという意味で、ものづくりプロセスを一変させる可能性を秘めています。最終的には、ほぼ全てのレーザー光源を半導体レーザーに置き換えることが出来る可能性を持つことからも、その波及効果は極めて大きいと言えます。
 一般に、半導体レーザーで高出力を得るためには、その発光面積を大きくしていくことが重要ですが、発光面積を大きくすると、レーザーから出射されるビームの形状が、単峰ではなくなり、多峰化するため、ビーム品質が極端に悪くなってしまいます。そのために、光出力が増大しても、高光密度化を図ることは困難でした。この点が、半導体レーザーが発明されてから、現在に至るまでの大きな課題であったと言えます。
 1999年に、京都大学の野田教授のグループは、フォトニック結晶と呼ばれる人工的な光ナノ構造を用いることで、ビーム品質を劣化させることなく、半導体レーザーの高出力化が可能になりうるという基本概念を提案するとともに、その基本実証に成功しました。その後、デバイス物理の詳細な理解と、性能向上へのフィードバック、さらには、出力ビームの偏光状態の制御やビーム形状の制御、短波長化による青紫色への展開、さらには、ビーム走査機能の付加など、新たな可能性・機能性を次々と実現してきました。この間、多くの企業との産学連携研究を積極的に推進することで、高出力で高ビーム品質、単一スペクトル、高機能性を同時に実現する、従来の半導体レーザーの概念を越えた、「フォトニック結晶レーザー」の具現化と実用化に向けた取り組みを積極的に進めてきました。
 その中でも、京都大学と浜松ホトニクスは、2007年度より、特に、デバイスの特性・信頼性向上の要となる、フォトニック結晶の形成法(有機金属気層成長法)に関して、連携開発を進めてきました。その結果、フォトニック結晶構造を、レーザー内部の不要欠陥を極力抑えた状態で、形成することが可能となるとともに、形成されたフォトニック結晶構造も、高出力化に適した構造となり、上述の優れた特性をもつ「フォトニック結晶レーザー」の実用化に世界に先駆けて成功しました。これは、大学から生み出された新しい基本概念に基づくデバイスを、産学連携を通じて、実際に製品化までに導くことに成功したことを意味し、所謂、基礎研究から製品化の間にまたがる「死の谷」を超えることが出来た重要な成果と言えます。今回の製品は、その光出力が、0.2W(CW(2))クラスのものですが、この成功を契機に今後高度化を進め、1〜10W、さらには100W超の出力をもつフォトニック結晶レーザーの製品化を目指すという意味で、重要な一歩が達成されたと言えます。以下、本デバイスの構造、原理、特性について説明します。


フォトニック結晶レーザーの構造
 基本構造は、図1に示すように、電子と正孔が結合して光を出し、増幅する活性層近傍に、フォトニック結晶を配置し、活性層に閉じ込められた光がフォトニック結晶の共振、回折(3)効果を受けるように構成します。本開発品は、出力を増大させるためにフォトニック結晶構造を最適化し、フォトニック結晶を形成後、有機金属気相成長法によりエピタキシャル成長(4)することで素子の信頼性を向上させています。


 ※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照

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