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放医研など、認知症で神経細胞死を引き起こす異常タンパク質の生体での可視化に成功

2013-09-26

認知症神経細胞死を引き起こす異常タンパク質
生体での可視化に世界で初めて成功
―タウ(※1)タンパク質病変を画像化するPET(※2)薬剤を開発―


【本研究成果のポイント】
 ●認知症神経細胞死に直結するタウタンパク質(以下、タウ)の蓄積を生体で可視化するポジトロン断層撮影(以下、PET)用薬剤PBB3(※3)を開発し、アルツハイマー病及びアルツハイマー病以外の認知症におけるタウ病変の生体画像化を世界で初めて実現した。
 ●このPET薬剤で描出されたタウ病変の広がりは、神経細胞死の範囲と認知症の重症度を反映することが示され、認知症の診断と治療薬開発の促進が期待される。


 放射線医学総合研究所(以下、放医研)分子イメージング研究センター分子神経イメージング研究プログラム(須原 哲也 プログラムリーダー)脳分子動態チームの樋口 真人 チームリーダーらは、世界で初めて脳内でのタウの蓄積をPETにより画像化することに成功し、タウの蓄積とアルツハイマー病の重症度の関連性を示唆する成果を得ました。さらに、アルツハイマー病以外の認知症でのタウの画像化においても有効であるとの成果を得ることができ、多様な認知症についての発症メカニズムの解明や、症状からの診断が困難である発症初期の診断、重症度の客観的な診断、認知症治療薬の開発促進が期待されます。
 近年、認知症患者の増加が社会問題となっていますが、発症原因は不明な点も多く、効果的な治療法は確立されていません。国内の全認知症患者の半数にのぼるとされるアルツハイマー病患者の脳内では、アミロイドベータ(以下、Aβ)(※4)やタウの蓄積に伴い神経細胞が死ぬことで、物忘れなどの症状が発現していきます。アルツハイマー病の確定診断は脳内において、これら異常タンパク質の蓄積を確認することが必要ですが、これまでは患者の死後に脳切片を染色して顕微鏡で見ることで、確認できるものでした。その状況を変えたのがPETによる生体内でのAβの画像化技術ですが、タウの画像化は未開発でした。
 今回、放医研は、タウの蓄積を画像化するPET薬剤(PBB3)を開発し、認知症モデルマウス(※5)とヒトで脳内タウ病変を明瞭に画像化しました。アルツハイマー病患者では、疾患の進行に伴うタウ蓄積部位の拡大が明らかに確認でき、皮質基底核変性症(※6)という異なる種類の認知症のタウ病変も画像化できました。
 本研究の成果により、発症初期からの認知症の鑑別診断、及び疾患の進行度の客観的評価が可能になりました。これまでは、神経細胞死に密接に関わるのは神経の外に蓄積するAβであると考えられていましたが、最近の研究により、より影響を与えているのは神経の中に蓄積するタウであるという考えが強くなっていることから、PBB3はモデルマウスを活用したタウ蓄積抑制治療薬の評価や、その後のヒトでの新規治療薬の評価など、認知症の根本治療法の開発への貢献も期待されます。
 本研究は、文部科学省委託事業「分子イメージング研究戦略推進プログラム」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)等の支援を受けて実施されたもので、Neuronのオンライン版に9月19日午前2時(日本時間)に掲載されます。


【研究の背景と目的】
 厚生労働省研究班の調査によると、国内の認知症患者は2012年の時点で約462万人にのぼることが判明しています。このうち、約半数はアルツハイマー病患者であると考えられています。アルツハイマー病患者数はこの数年でも急増していますが、人口の高齢化が進むにつれて、今後ますます増加すると予想されます。
 アルツハイマー病患者の脳内にはアミロイドベータ(以下、Aβ)とタウと呼ばれるタンパク質が蓄積し(図1上)、これに伴って神経細胞が死んで脱落することから脳が萎縮し(図1下)、物忘れなどの症状が発現してきます。こうした異常タンパク質蓄積は、存命している状態で検出することは難しく、これまで患者が亡くなってから脳を解剖して調べていました。
 近年、病的な蓄積をするタンパク質に特異的に結合する薬剤を開発し、これを用いることで生きている患者の脳における病変を画像化する研究が進められています。薬剤を特定の放射性同位元素で標識してこれを投与した患者のPET撮影を行い、薬剤から出てくる放射線のデータを解析することで、タンパク質の異常な蓄積を画像化することが可能になります。


〔図1 アルツハイマー病における脳の変化〕

 *添付の関連資料を参照


 最近の研究から、神経細胞死に密接に関わるのは神経の外に蓄積するAβではなく、神経の中に蓄積するタウであると考えられていることから、放医研では、タウ病変を画像化することでAβの画像化では十分評価できなかったアルツハイマー病の病勢評価や根本的治療法の開発が可能になると考え、生体脳でタウ病変に結合するPET薬剤の開発に着手しました。


 *以下の資料は、添付の関連資料「参考資料」を参照
  ・研究手法と結果
  ・本研究成果と今後の展望
  ・用語解説

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