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産総研、有機フッ素化合物を用いずに耐熱性に優れた透明はつ油性塗膜を開発

2013-09-14

透明はつ油塗膜の耐熱性を飛躍的に向上
−有機フッ素化合物を使わない環境にやさしい表面処理技術−


<ポイント>
 ・耐熱性(空気中350℃、250℃の油浴中で共に24時間以上)に優れたはつ油処理技術を開発
 ・有機フッ素化合物や特殊な装置を用いないため低コスト・低環境負荷
 ・蒸留塔、エンジン、オイルポンプ、オイルダクトといった高温部材へのはつ油処理に期待


<概要>
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)サステナブルマテリアル研究部門【研究部門長 中村 守】高耐久性材料研究グループ 穂積 篤 研究グループ長、浦田 千尋 研究員は、有機フッ素化合物を用いずに、耐熱性(空気中、350℃で24時間以上、250℃の油浴中で24時間以上性能保持)に優れた透明はつ油性塗膜を開発した。

 現在、はつ油処理の多くは、有機フッ素化合物や表面の微細加工に依存している。しかし、有機フッ素化合物は人体や環境に影響を及ぼし、微細加工は特殊な装置や条件を必要とする。このため、有機フッ素化合物や微細加工に依存しない表面処理技術が求められている。

 今回、メチルシロキサン骨格の耐熱性に着目し、メチルシランを主原料とすることで、透明で耐熱性とはつ油性に優れた塗膜を開発した。また、この耐熱性透明塗膜の加工を施す際に、特殊な装置なども必要としない。蒸留塔、エンジン、オイルポンプ、オイルダクトなど、使用時に高温となるさまざまな表面のはつ油処理に活用でき、有機フッ素化合物を用いたはつ油処理の代替として、コストの低減や安全・信頼性の向上が期待できる。

 なお、この技術の詳細は、平成25年9月24〜25日に福岡工業大学福岡県福岡市)で開催される一般社団法人 表面技術協会 第128回講演大会で発表される。

 ※参考画像は、添付の関連資料を参照


<開発の社会的背景>
 有機フッ素化合物は、耐候性、耐薬品性、耐熱性などの多くの優れた特長を持ち、はつ油剤の主原料として、さまざまな産業分野で利用されている。近年では、マイクロメートルからナノメートルのオーダーで凹凸構造を付与した基材表面を、有機フッ素化合物で被覆・湿潤することで、はつ油性の向上が図られている。このようなはつ油処理された表面では、基材をわずかに傾斜させるだけで、油滴はハスの葉表面の水滴のように滑落する。

 しかし、有機フッ素化合物の製造に必要な蛍石は地球上に偏在しているため、価格が変動しやすく供給が不安定である。また、有機フッ素化合物の生体および環境に対する高い残留性・生物蓄積性が指摘されているため、規制も年々厳しくなっている。そのうえ、有機フッ素化合物を耐熱温度以上にさらすと、腐食性・有毒性の強いガスが発生するため、高温使用時は安全面に問題がある。さらに、微細加工には特殊な装置や条件が必要であることが多く、適応可能な基材や形状が限定されるため、生産性や加工性において課題がある。その他にも、微細構造により光が散乱しやすくなるため、塗装面の透明性を確保しにくいといった問題もある。

 有機フッ素化合物に依存しない材料/プロセス技術は、生体や環境にやさしい技術であり、省エネルギー・省資源・低環境負荷・安全の観点からも、その開発が望まれている。


<研究の経緯>
 産総研では、2011年より有機フッ素化合物および微細加工に依存しない、はつ油処理の研究開発に着手し、一般的なはっ水処理剤であるアルキルトリアルコキシシラン(有機シラン)と、ガラスの原料となるテトラアルコキシシラン(スペーサーシラン)を原料として得られた透明な塗膜が、優れたはつ油性を示すことを見いだした(2012年3月13日 産総研プレス発表)。この処理技術は各工程で特殊な装置や条件を必要とせず、また、さまざまな基材(ガラス、金属、プラスチックなど)に適用できることを特長としている。そのうえ、有機フッ素化合物(パーフルオロアルキルトリアルコキシシラン(有機フッ素シラン))で処理された表面やフッ素樹脂表面よりも、はつ油性に優れている。しかし、従来開発した透明はつ油塗膜は耐熱性に劣っており、大気中150℃以上で長時間加熱すると、膜が崩壊するとともにはつ油性が著しく低下するため、高温に長時間さらされる表面への適用は困難であった。これは、高温環境下で有機シラン中のC−C結合が徐々に変質・分解するためである。

 このような問題の解決に向け、有機フッ素化合物を用いることなく、高温環境条件でも、長時間はつ油性を維持することが可能な表面処理技術を模索してきた。


<研究の内容>

 ※添付の関連資料を参照


<今後の予定>
 今回開発した塗膜は、あらゆる固体表面に処理することが可能である。今後は、ニーズに合わせたコーティング方法のカスタマイズを予定している。さらに、蒸留塔、エンジン、オイルポンプ、オイルダクトなど、使用時に高温となるさまざまな表面への適用を目指し、より長期間、高温環境条件にさらされても、はつ油性が維持できるよう、耐熱性のさらなる向上を目指して研究開発を進めていく。


<用語の説明>

 ※添付の関連資料を参照

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