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帝国データバンク、12月の全国企業倒産集計を発表
2010年12月報
倒産件数は949件、16ヵ月連続の前年同月比減少
負債総額は2168億5500万円、2010年2番目の低水準
倒産件数 949件
前月比 1.5%増
前月 935件
前年同月比 7.1%減
前年同月 1021件
負債総額 2168億5500万円
前月比 20.8%減
前月 2739億2300万円
前年同月比 27.7%減
前年同月 2998億4900万円
<件数・負債総額の推移>
※グラフ資料は、添付の関連資料を参照
■件数
ポイント 16ヵ月連続の前年同月比減少
倒産件数は949件(前月935件、前年同月1021件)で、前月比は1.5%の増加となったものの、前年同月比は7.1%の減少となった。16ヵ月連続で前年同月を下回り、2010年7月(918件)以降、6ヵ月連続で900件台となった。
要因・背景
1.中小企業金融円滑化法による返済猶予や緊急保証制度が件数減少に寄与
2.負債5000万円未満の零細企業の倒産は5ヵ月連続の前年同月比増加、全体の5割占める
3.地域別では中国(33件、前年同月比▲32.7%)、四国(13件、同▲35.0%)で大幅減少
■負債総額
ポイント 2010年2番目の低水準、2ヵ月連続の前年同月比減少
負債総額は2168億5500万円(前月2739億2300万円、前年同月2998億4900万円)で、前月比は20.8%の減少、前年同月比も27.7%の減少。8月(1692億3300万円)に次いで2010年2番目の低水準となるとともに、2ヵ月連続の前年同月比減少となった。
要因・背景
1.負債100億円以上の倒産は、不動産コンサルティングの(株)シーエーエム(負債142億円、東京都)のみ1件にとどまる
■業種別
ポイント 運輸・通信業除く全業種で前年同月比減少
業種別に見ると、運輸・通信業を除く全業種で前年同月比減少となった。なかでも、不動産業(21件)は前年同月比53.3%の大幅減少で2010年最低を記録。製造業(150件、前年同月比▲10.7%)も12ヵ月連続で前年同月を下回り、前年同月比減少率は2ケタとなった。建設業(262件、同▲3.0%)は2ヵ月ぶりに前年割れとなり、北陸(8件、同▲55.6%)、四国(2件、同▲71.4%)で減少が目立った。
要因・背景
1.不動産業…土地・建物売買業(3件、前年同月比▲82.4%)で大幅減少
2.製造業…衣料品・繊維製品製造(9件、前年同月比▲50.0%)や木材・木製品製造(2件、同▲80.0%)などで減少目立つ
■主因別
ポイント 「不況型倒産」の構成比84.2%、19ヵ月連続で80%台の高水準
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は799件(前月786件、前年同月846件)となった。構成比は84.2%(前月84.1%、前年同月82.9%)で前月比は0.1ポイント、前年同月比も1.3ポイントの増加となり、2009年6月の81.2%以降、19ヵ月連続で80%台の高水準となった。
要因・背景
1.円高関連倒産が12件発生(前年同月0件)、うちデリバティブ関連は8件
2.製造業の「不況型倒産」は137件、構成比91.3%で前年同月比11.5ポイントの大幅増加
倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
ポイント 負債5000万円未満、5ヵ月連続の前年同月比増加
負債額別に見ると、負債5000万円未満の零細企業倒産は468件、5ヵ月連続の前年同月比増加となり、構成比は49.3%を占めた。一方、負債100億円以上の大型倒産は1件で、8月の0件を含め20ヵ月連続で1ケタの件数にとどまった。中小企業基本法に基づく中小企業・小規模企業(下表定義参照)を見ると、中小企業は948件で倒産全体の99.9%、小規模企業も810件で構成比85.4%を占め、小規模倒産は依然高水準で推移した。
要因・背景
1.6月の改正貸金業法の完全施行の影響などもあり、小規模・零細企業の倒産は高水準続く
2.負債100億円以上の倒産は、金融支援策の効果などで20ヵ月連続の1ケタにとどまる
■地域別
ポイント 東北、中部を除く7地域で前年同月比減少
地域別に見ると、9地域中7地域で前年同月比減少となり、なかでも中国(33件、前年同月比▲32.7%)、四国(13件、同▲35.0%)の2地域で減少が目立った。一方、東北(56件、前年同月比+33.3%)は唯一前年同月を上回った。中部(138件)は前年同月と同水準。
要因・背景
1.中国は卸売業やサービス業、四国は建設業や小売業で減少目立つ
2.東北は岩手や宮城で金属・機械製造業、岩手や山形でサービス業などが増加
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは32.9で前月比0.6ポイント増、2ヵ月連続改善
2010年12月の景気動向指数(景気DI:0〜100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.6ポイント増の32.9となった。2ヵ月連続で改善したものの、その改善幅は0.6ポイントと2010年のなかでは6月と並び最小で、水準も今回の景気回復局面で最高となった33.5(2010年7月)には戻していない。
外需は中国などの新興国を中心に好調で、内需も年末需要や家電、住宅などに対する政策支援で個人消費が下支えされたほか、下旬には寒気の流入によって季節需要も刺激されたことで企業の売り上げは回復傾向となり、生産や出荷、設備稼働率、時間外労働時間なども改善基調が続いた。
国内景気の回復力は依然として弱く、踊り場局面続く
しかし、景気DIがリーマン・ショック前の水準を回復したに過ぎないなかで、いまだ雇用や所得環境は厳しく、エコカー補助金の終了や家電エコポイントの縮小が一段の改善に水を差す要因となっている。特に「自動車・同部品小売」は直近で最高となった2010年8月に比べて約20ポイント低い水準で推移するなど、影響は大きい。
また、原材料価格が上昇傾向にある一方、デフレで企業の収益性は厳しさを増しており、為替は一時1ドル=81円台に戻すなど、円高水準の長期化も改善の重しとなっている。国内景気の回復力は依然として弱く、踊り場局面が続いている。
今後の見通し
■倒産件数は1万1658件、5年ぶりの前年比減少
2010年の倒産は1万1658件と、2009年の1万3306件に比べ12.4%の2ケタ減少、2005年(8225件、前年比9.1%減)以来、5年ぶりに前年を下回った。月別推移も2010年はすべての月で前年同月を下回り、2009年9月以降16ヵ月連続の前年割れとなった。倒産が減少に転じた要因は、金融円滑化法と緊急保証という二段構えの金融支援策にある。過去に例を見ない手厚い中小企業支援策で、多くの企業が資金繰り破綻を回避した。堅調な外需や景気刺激策による下支えも倒産抑制に働いた。他方、負債総額は6兆9366億400万円で2009年に比べ1.9%増と、2年ぶりに前年をわずかに上回った。しかし、これは日本航空3社が負債2兆3221億8100万円で倒産した影響が大きく、3社を除く負債額は過去10年で最低となるなど縮小傾向が続いた。負債100億円以上の大型倒産も39件と、2009年の91件から約6割減少した。
■政策効果が寄与し、建設業、小売業が2年連続減少
業種別では、全7業種で前年を下回った。このうち、建設業と小売業の2業種は2年連続の前年比減少。建設業は年前半に公共工事前倒し発注の効果が続いたうえ、二段構えの金融支援策も倒産減少に寄与した。小売業はエコカー補助金や家電エコポイントなどの景気刺激策の恩恵もあり、自動車小売、家電小売がともに約20%の大幅減少となった。地域別でも全9地域で前年を下回った。北陸、中国、四国など公共工事依存度の高い地方圏を中心に、建設業倒産の減少を受け2ケタ減となった。このほか、上場企業倒産が9件にとどまり、2009年の20件から半減した。日本航空、武富士など2つの大型案件はあったものの、総じて沈静化が続いた。
■円高関連倒産が58件発生、前年比6割強の増加
年明け1月6日の日経平均株価は、約8ヵ月ぶりに1万500円台を回復した。好調な外需、内需も年末の季節需要に下支えされ、企業の生産活動は改善基調が続いた。しかし、依然として国内景気の回復力は弱く、2010年夏場以降の歴史的な円高の影響もじわり広がってきた。2010年の円高関連倒産は58件発生し、2009年の35件に比べ6割強増えた。輸出企業の収益悪化に加え、輸入企業でも為替デリバティブ取引による大幅損失で倒産に至るケース(2010年25件)が目立った。関連倒産の件数こそまだ少ないものの、58件のうち30件が9月以降に発生したうえ、12月は12件と前月比倍増となるなど、さらなる影響拡大が懸念される。
■年度末以降、前年同月を上回る月も
今後の注目は、各種政策支援で抑制された倒産がいつ増加に転じるかだ。政策効果の息切れが顕著となった2010年9月(943件、前年同月比0.3%減)を境に、反転増の兆しはみられる。前年同月比減少率が2ケタから1ケタ台に縮小したうえ、前月比では増加の月も出てきた。2010年の年間件数をみても、倒産全体の約3割を占める建設業倒産が下半期にほぼ底を打ったうえ、政策効果が行き届きにくい零細規模の倒産はわずかながら前年を上回った(負債5000万円未満の倒産=5739件、前年比1.4%増)。販売不振や業界不振を原因とする「不況型倒産」の構成比も83.5%に達し、2年連続で80%台の高水準となった。企業を取り巻く事業環境は「回復」には程遠いなか、2011年は政策支援が相次いで終了される。このため、政策期限と資金需要期が重なる年度末以降、前年同月を上回る月が出てきそうだ。しかし、その後すぐに増加基調を強める可能性は低いとみられる。倒産抑制効果が大きい金融円滑化法の1年延長が決まったためだ。改正法案が今後成立すれば、倒産急増という事態は避けられるだろう。だが、延長期間中に経済環境が好転する保証はなく、円高、デフレ、雇用悪化、原材料高等のマイナス要因もあるなか、業績回復を伴わない延命策のツケを早晩払わされる可能性がむしろ高まっている。
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