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産総研など、電気絶縁性とシール性に優れた産業用シートガスケットを開発

2013-07-22

電気絶縁性とシール性に優れた産業用ガスケット
−粘土膜と膨張黒鉛シートを積層し広範な用途に使用可能−


<ポイント>
 ・粘土とポリイミドコンポジット膜と膨張黒鉛シートの多積層構造
 ・極低温から高温までの幅広い温度範囲で高いシール性を発揮
 ・高電気絶縁性によりガスケットやフランジの電蝕を防止


<概要>

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)コンパクト化学システム研究センター(http://unit.aist.go.jp/ccs/index.html)【研究センター長 花岡 隆昌】蛯名 武雄 首席研究員らの研究グループと、ジャパンマテックス株式会社【代表取締役 塚本 勝朗】(以下「ジャパンマテックス」という)、住友精化株式会社【社長 上田 雄介】(以下「住友精化」という)は、粘土とポリイミドからなるコンポジット膜と膨張黒鉛シートを交互に積層させた産業用シートガスケットを開発した(図1)。このガスケットは極低温から高温までシール性能に優れ、電気絶縁性であるため、フランジが腐食しにくい。

 今回開発したガスケットでは、コンポジット膜が膨張黒鉛シートの細かい隙間に入り込んで一体化した構造とすることにより、金属を使わずにシール性を著しく向上できた。極低温(−196℃)におけるシール性は、従来最もシール性に優れているステンレス膨張黒鉛多積層構造ガスケットを上回り、シートガスケットとしては世界最高レベルである。今回、多積層シートガスケットの製造方法を確立し、室内リークテストにより、高いシール性能を確認したが、さらに実プラントの高温蒸気配管に使用して性能評価を行い、高いシール性と耐久性を確認した。

 地熱発電所、車両用ガスケットをはじめ、石油精製、石油化学、電力、製鉄、製紙プラントなど多くの産業分野で、幅広い温度条件下の配管部分のシール材としての使用が期待される。

 この成果の詳細は、2013年7月24日〜26日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される、第8回 再生可能エネルギー世界展示会で発表される。

 ※図1は、添付の関連資料を参照


<開発の社会的背景>

 多くの化学産業分野では、プラントの配管連結部などで、液体や気体の漏れ(リーク)を防止するために、ガスケットが用いられている。従来、高温となる部分のガスケットにはアスベスト製品が広く用いられてきたが、アスベストが厳しく規制され、代替品として膨張黒鉛製品が用いられるようになってきた。しかし、一般の膨張黒鉛製品は、粉落ち、焼付き、シール性の低さなどの問題点があった。また、高温で使用できるガスケットとしてはバーミキュライトという粘土鉱物に有機物を加えシート状に成形したものが用いられてきたが、十分に緻密でないため、シール性が悪いという問題があった。そのため、幅広い温度範囲で使用できるガスケットの開発が求められていた。


<研究の経緯>

 産総研は、平成16年に、粘土結晶を主原料として樹脂を少量添加し、ピンホールのない均一な厚みの粘土膜「クレースト(R)」を開発した。クレーストは柔軟で耐熱性に優れたガスバリア膜である。

 ジャパンマテックスは、以前から膨張黒鉛ガスケット製品を製造・販売していたが、膨張黒鉛製品とクレーストとの複合化を提案し、平成17年度に、産総研と共同で基礎研究を開始した。その成果を基に、クレーストをコーティングした新しい膨張黒鉛ガスケット製品を開発し、原子力発電所を含め国内約50カ所の事業所で使用され、これらの製品の導入により非アスベスト化を達成した事業所を生み出すなどの成果をあげ、第2回ものづくり日本大賞優秀賞を受賞した。その後も、さらなる高温条件下で使用可能なシール材の製造技術の開発、製品評価試験などを行った(平成22年9月13日 産総研プレス発表(http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100913/pr20100913.html))。

 しかしこれらのガスケットは、さらにシール性を高めるためには、金属板の枠をはめたり、金属板で覆ったりする必要があり、電気絶縁ができず、ガスケットとフランジに電蝕によるさびが発生するという問題点があった。

 住友精化は、高機能材料開発への展開を行う上で、産総研の粘土膜技術に注目し、共同研究を開始した。多種多様な粘土とプラスチックの組み合わせの中から従来よりも飛躍的に取り扱い性が向上したコンポジット膜を見いだし、学校法人 東京理科大学 山下 俊 准教授のポリイミドに関する知見を合わせて、さらなる取り扱い性の向上や、優れた膜特性の把握などを行うとともに、原料ペーストの生産プロセスを確立した(平成23年8月30日 産総研プレス発表(http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110830/pr20110830.html))。

 今回、この3者で、コンポジット膜と膨張黒鉛シートとの多積層化により、幅広い温度範囲で使用でき、電気絶縁性のガスケットの開発に取り組んだ。


※研究の内容・用語の説明などは、添付の関連資料を参照

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