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ルネサスエレクトロニクス、産学官連携で省電力化ルーターアーキテクチャーを開発

2013-07-02

産学官連携での省電力化ルータアーキテクチャの研究開発
〜0−40Gbps帯域に対して、評価システムで最大約70%の省電力化を実証〜


 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)は、2010年度より総務省から「ネットワーキングハードウェアの徹底したスライス化に基づく省電力ルータアーキテクチャの研究開発」(注1)の委託を受けて、株式会社日立情報通信エンジニアリング(代表取締役社長:小菅 稔、以下日立情報通信エンジニアリング)、国立大学法人大阪大学(総長:平野 俊夫、以下大阪大学)および公立大学法人大阪市立大学(学長:西澤 良記、以下大阪市立大学)と研究を進めてまいりました。その研究開発では、新しい省電力スライス化ルータアーキテクチャの設計と、評価用ボードの試作を行い、2012年度の実証実験でその有効性を確認しました。またこれらの評価システムで、0−40Gbps(1Gbpsは1秒あたり10億ビットのデータ量)帯域において、最大で約70%の省電力化、かつ、約210マイクロ秒(1マイクロ秒:100万分の1秒)でのスタンバイ状態からの高速な復帰を確認しています。この研究開発においてルネサスでは、ピーク動作時以外には不使用とすることで省電力化できる機能を抜き出してLSI化し、機能単位で二種類のスタンバイ状態に移行できるシステムの構築に寄与いたしました。

 近年のネットワーク市場の急速な成長に伴い、ネットワークを構成するルータやスイッチなどのネットワーク機器における消費電力は著しく増大しています。経済産業省の試算では、国内のネットワーク機器の総消費電力量は2006年の約80億kWh(キロワット時)から2025年には約1,033億kWhに急増すると指摘されており、ネットワーク機器の省電力化はエネルギー問題・地球温暖化問題の観点からも重要な課題のひとつです。

 これまで、ルータなどのネットワーク機器はトラヒック量の変動に関係なく、常に100%の処理能力で動作することを前提として設計されてきており、夜間や休日などのトラヒック量が少ない場合には、消費電力に大きな無駄が生じています。そこで、トラヒックエンジニアリング技術(注2)や、サービス規約(SLA:Service Level Agreement)によって定められた通信品質を最低限守るような省電力化手法が従来から研究されてきましたが、ネットワーク品質の維持と効果的な電力削減の両立が困難という課題がありました。

 この解決すべき課題に向けて、IPネットワークの信頼性を損なうことなく、消費電力を効果的に削減するために、ルータが処理すべきトラヒック量に応じて処理能力を段階的に調整可能なアーキテクチャの研究開発が進められました。まず、ネットワーク機器のコンポーネントを独立動作可能なサブ・コンポーネント(以下、スライス)に分割し、時々刻々と変化するトラヒック量に応じて必要十分な処理を行えるだけのスライスを起動できる構成、かつ、制御を実現することで、ダイナミックにトラヒック量に追従する省電力制御を実現します。各スライスでは、省電力性は低いがアクティブ(注3)への高速復帰が可能なホットスタンバイ(注4)、復帰に時間を要するが電流消費がほぼゼロのコールドスタンバイ(注5)の2つのスタンバイ状態をサポートすることで、ネットワーク品質の維持と高い省電力性を実現しています。

 このたび開発した省電力ルータアーキテクチャの特長は、以下の通りです。

 (1)独立動作可能なサブ・コンポーネント(スライス)へ機能を分割し、スライス単位でホットスタンバイとコールドスタンバイの2種類のスタンバイ状態をサポートする、スライス分割動作技術。
 (2)トラヒックの統計情報を収集し、過去から現在までの統計データから将来のトラヒック量をマイクロ秒(100万分の1秒)オーダーで高精度に予測する、トラヒック予測化技術。
 (3)トラヒック予測化技術と連動し、トラヒック量の増減やパケットデータの滞留状況に応じて必要十分な数のスライスのみを動作させて不要なスライスをスタンバイ状態にする、スライス制御技術。

 また、研究開発グループは、上記の特長を持つ省電力ルータアーキテクチャをLSIと評価ボードに実装しました。そして、評価システムを用いた実証実験の結果、0−40Gbps帯域において最大で約70%の電流削減効果を確認するとともに、コールドスタンバイからアクティブへの約210マイクロ秒での高速な復帰の実現を確認しました。
 さらに、省電力ルータをネットワーク・システムに応用するために、省電力ルータを内包するネットワーク環境について、帯域計測手法や通信プロトコル設計に関する研究を行い、その有効性を確認しています。

 ※参考画像は、添付の関連資料を参照

 新技術は、パケット処理量に応じて、必要なだけのスライスを使用して処理し、他のスライスは動作を停止させることで電力の消費を抑制できるため、ネットワーク機器の低消費電力化に貢献します。

 研究開発グループは、本技術を、2012年6月24日からセルビア国ベオグラード市で開催された国際会議「IEEE 13th Conference on High Performance Switching and Routing(HPSR 2012)」にて、6月27日(現地時間)に発表しました。


以 上


 (注1)2010年度、2011年度は総務省ICTグリーンイノベーション推進事業(PREDICT)の受託研究として、2012年度は総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の受託研究として実施。

 (注2)トラヒックエンジニアリング技術:ネットワーク資源の有効利用のために、トラヒック経路を最適化する技術。例えば、省電力化のために、トラヒック変動に応じてトラヒックを特定の経路に集約し、不要となった経路上のルータを停止させる手法など。

 (注3)アクティブ:電源とクロックが供給状態で、スライス内部は各種命令やデータは活性化。

 (注4)ホットスタンバイ:電源は供給するがクロックは遮断状態で、スライス内部の命令やデータは非活性。

 (注5)コールドスタンバイ:電源、クロック、スライス内部の命令やデータが全て遮断状態。


*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。

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