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東レ、カットファイバーを用いた炭素繊維複合材料で理想強度の90%を発現する技術を開発

2011-01-11

カットファイバーを用いた炭素繊維複合材料で理想強度の90%を発現する革新技術を開発
−スタンピング成形で新領域を開拓−


 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:)は、このたび、炭素繊維のカットファイバーと熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維強化プラスチック(CFRP1))で、従来の射出成形やスタンパブルシートなどの既存材料では得られなかった、優れた力学特性と等方性を世界で初めて実現しました。

 今回、長さ数mmの炭素繊維を1本1本ランダムに配置して、特殊な熱可塑性樹脂で固めた繊維のネットワークを補強構造として、等方的特性を有する新しい概念の複合材料(「カットファイバーコンポジット」)を開発しました。従来の短繊維複合材料と一線を画し、課題であった理論強度からの乖離と、異方性を大幅に改善し、航空機用CFRPに代表されるプリプレグに匹敵する強度発現率を達成しました。

 同時に、不連続繊維複合材料の強度シミュレーションを世界で初めて実現し、構造部材の強度保証において大きく前進しました。この技術により、不連続繊維複合材料において、強度の発現率を定量化することができます。今回開発した「カットファイバーコンポジット」では、理想強度の90%を等方的に発現することに成功しました。

 中間基材として開発した新規スタンパブルシートを、所定の形状にカット、積層してスタンピング成形し、金属のプレス成形のように1分以内での成形が可能です。従来プリプレグや金属のプレス成形では困難なリブ、凹凸、絞りといった複雑形状の成形品を高速成形でき、自動車用途をはじめとする産業用途で幅広い活用が期待できます。

 また、この中間基材自体が等方性であることから、積層方向を設計する必要がなく、局所的に厚みを変えることも可能で、材料ロスや労力を最小限に抑えるのに有効です。また、熱可塑性樹脂を使用していることから、熱溶着のような量産性に優れた加工方法が適用できる他、リサイクルにも有利です。

 新規スタンパブルシートは、厚み0.1〜数mmまでを組み合わせて使用します。マトリックス樹脂はポリプロピレン、ナイロン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)など、用途・ニーズに合わせて設計することが可能です。炭素繊維の含量を従来プリプレグの半分以下におさえつつ、航空機用CFRPと同等の比曲げ強度・比曲げ剛性を実現することで、同様の軽量効果が期待できます。東レは今後、「カットファイバーコンポジット」の実用化開発を進めていきます。

 今回開発した技術は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合技術開発機構(NEDO)からの受託事業「サステナブルハイパーコンポジット技術の開発」における開発成果です。本プロジェクトでは、熱可塑性CFRPを輸送機器に適用することでエネルギー消費の大幅削減を目指しています。研究期間は2008〜2012年度までの5年間で、東京大学がプロジェクトリーダーを務め、東レは強度シミュレーションについて東北大学と、成形加工技術においてタカギセイコー社とそれぞれ共同で研究を進めています。今年度は中間基材の開発に成功しました。引き続き、成形技術、接合技術、リサイクル技術の実用化に関わる研究開発を推進していきます。

1)CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plasticの略


以 上

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