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清水建設、揚水浄化処理で省エネと除去効率向上を解決するシステムを開発し効果を検証
揚水浄化処理設備とヒートポンプを一体化
〜汚染地下水の未利用エネルギーを回収、汚染物質の除去効率も向上〜
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、汚染地下水対策の一つである揚水浄化処理において、VOC汚染地下水の熱エネルギーを空調熱源に用いることで、省エネと除去効率の向上という2つの課題を同時に解決する「ヒートポンプ併設型VOC汚染地下水浄化システム」を開発、省エネ効果と除去効果をそれぞれ検証しました。
土壌汚染対策法の改正により、汚染の適正管理が求められるようになったことから、地下水汚染の拡散防止対策として揚水浄化処理を行うケースが増える見込みです。ただ、揚水浄化処理は低コストながら10年以上かかることが珍しくなく、その間継続して膨大な量の地下水を揚水します。そこで当社は、揚水される地下水の熱エネルギーに着目し、ヒートポンプと汚染地下水浄化技術を組み合わせたシステムを開発しました。
システムの特徴は、揚水浄化処理工程の中にヒートポンプによる熱交換工程を取り入れ、夏季には揚水した地下水の浄化処理前に、冬季には浄化処理後に熱交換し、回収した熱エネルギーを空調熱源に用いることです。夏季は、地下水の熱エネルギーで空調用空気を冷やすと地下水温度が5〜7℃上昇してVOCの揮発を促すため、浄化処理前に熱交換して除去効率の向上とランニングコストの低減を図ります。一方、冬季は空調用空気を暖めると地下水温度が下がるため、揚水後にまずVOCの除去処理を行い、その後に熱交換を行うことで除去効率の低下を防止します。
揚水浄化処理量は、日量数十tから数百tと現場の条件によって異なりますが、このシステムの適用により、揚水量1tにつき概ね65kWh/年の省エネが可能です。具体的な技術提案事例によると、揚水量337t/日の現場において、年間で22,106kWhの省エネとなり、ヒートポンプ採用による初期投資の増額分を5年弱で回収できる、夏季のVOC除去効率が10%向上する、という試算結果を得ています。揚水浄化処理期間は10年以上に及ぶことが多いので、最終的には揚水浄化処理費用の削減にも貢献できます。
システムの汎用性は高く、新たに揚水浄化処理を行う現場への適用はもちろんのこと、既設の揚水浄化処理設備にも組み込むことができます。当社は、本システムの採用を提案することにより、汚染地下水の揚水浄化処理工事の受注拡大を目指します。
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