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帝国データバンク、第4回全国「休廃業・解散」動向調査結果を発表
第4回:全国「休廃業・解散」動向調査(2012年度)
2012年度の「休廃業・解散」は2万6050件
〜4年ぶりに前年度比増加を記録〜
<はじめに>
金融庁が監督指針で「事業の持続可能性が見込まれない債務者に対し、債務整理等を前提とした債務者の再起に向けた適切な助言や、債務者が自主廃業を選択する場合の円滑な処理への協力」の必要性に言及したのは、2011年4月のこと。その後も「円満な退出」という言葉を用いて、地域において事業の選択と集中、再編が進む可能性を示唆している。
帝国データバンクが毎月公表している「倒産」件数は、2008年度を直近のピークとして4年連続で前年度比減少を記録しているが、この数字は"ハードランディング"した企業の件数を表しており、言わば「円満な退出」をした企業は含まれていない。金融機関等が、中小企業金融円滑化法の出口戦略としてコンサルティング機能を一層発揮し"ソフトランディング"を目指すなか、「休廃業・解散」を選択した企業は多い。
帝国データバンクは、企業概要データベース「COSMOS2」(143万社収録、以下、C2)から削除されたデータを収録したファイル(「削除ファイル」)を用いて、2006〜2012年度の間に休業、廃業、解散に至った事業者(法人、個人含む)を集計。倒産件数との比較や、業種別、都道府県別にその傾向を分析した。なお、本調査は2012年5月28日に続き4回目。
<調査結果(要旨)>
1. 2012年度(2012年4月〜2013年3月)の「休廃業・解散」件数は、2万6050件判明。前年度(2万5008件)を1042件(4.2%増)上回り、4年ぶりに前年度比増加を記録した
2. 種類別では、「休廃業」(1万6345件)が2年連続で前年度比増加
3. 業種別では、7業種中「運輸・通信業」を除く6業種で前年度比増加
4. 地域別では、「四国」、「北陸」、「近畿」で前年度比2ケタの増加
5. 代表者を年齢別にみると、「60代」が8411件(構成比37.9%)となり最多
※以下、調査結果詳細は添付の関連資料を参照
5. まとめ
2012年度の「休廃業・解散」件数は2万6050件となった。中小企業金融円滑化法の倒産抑制効果により「倒産」件数が4年連続前年度比減少となった一方で、4年ぶりに前年度比増加を記録した。中小企業金融円滑化法により「倒産」が抑制されることで、経営再建が厳しく本来であれば市場から退場すべき企業が生き残り、その結果、市場内における正当な競争が阻害されているという懸念があったが、今回の調査によって、2012年度における企業の新陳代謝は「倒産」という形よりも、「休廃業・解散」という形で進んだことが判明した。
2013年度も、アベノミクスへの期待で企業心理は改善しているものの、中小企業の経営実態はいまだ厳しく、「休廃業・解散」を選択せざるを得ない企業が後を絶たないと想定されることから、中小企業金融円滑化法の出口戦略のなかで、「休廃業・解散」件数は増加する可能性が高い。
また、この「休廃業・解散」すべてが「円満な退出」であるわけではないことには注意が必要だ。業種別の休廃業・解散率は、オーバープレーヤー問題等構造的問題を抱えた業種ほど高く、都道府県別では『TDB景気動向調査』で景気動向指数が低い都道府県ほど高い結果となっている。このことは、採算が取れずに事業を休止していたものの、残務整理の過程で通常清算ができずに法的整理(「倒産」)に移行する企業が出てくる可能性を示唆している。休業状態の企業の倒産手続き入りは、「倒産」件数の押し上げ要因。「休廃業・解散」件数がさらに増加するのであれば、必然的に「倒産」件数も増加するであろう。
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