Article Detail
NHK、フィルム基板上でも長期間安定に発光し酸素や水分に強い有機ELデバイスを開発
酸素や水分に強い有機ELデバイスを開発
〜薄くて軽いシート型ディスプレーの実現に向けて〜
□NHKは、有機ELデバイス(OLED)(*1))を用いた、薄くて軽いシート型ディスプレーの研究開発を進めています。今回、株式会社日本触媒と共同で、フィルム基板上でも長期間安定に発光するOLEDの開発に成功しました。
□従来のOLEDは、基板上に陽極、有機層、電子注入層、陰極の順序で積層して成膜していきます(別紙 図1)。基板材料としてフィルムを用いた場合には、時間の経過とともに基板側および陰極側の両方向から、大気中の酸素や水分が進入し、電子注入層と陰極を劣化させ寿命が短くなります。
□今回、酸素や水分の影響を受けにくい電子注入層の材料を開発するとともに、劣化しにくい陰極用材料を使用しました。これらの材料を積層して成膜できるよう、陽極と陰極の位置を入れ替えた逆構造とすることによって、長期間安定に発光するiOLED(*2))を実現しました(別紙 図2)。
通常のOLEDは、100日間大気中にさらしておくと発光面積が約半分になってしまうのに対し、今回開発したiOLEDは同期間劣化しないことを確認しました。
□この研究成果は、5月30日(木)〜6月2日(日)に開催する「技研公開2013」でご覧いただけるほか、カナダで開催されるSociety for Information Display,International symposium(5/19−24)でも発表します。今後もフレキシブルディスプレーの早期実現に向けた研究開発を加速していきます。
*1)有機エレクトロルミネッセンスデバイスの略。ある種の有機材料の多層膜で構成され、電流を流すと発光するデバイス。デバイス内に注入された電子と正孔の再結合によって発光する。
別名OLED(Organic Light−Emitting Diode)。
*2)逆構造OLED(inverted OLED)
※本研究の一部は、総務省の委託研究「究極の省電力ディスプレイ実現に向けた高効率・長寿命有機ELデバイスの研究開発」として実施したものです。
・別紙は添付の関連資料を参照