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富士キメラ総研、耐熱・光学ポリマーの世界市場調査結果を発表
耐熱・光学ポリマーの世界市場を調査
――2016年予測(2012年比)――
耐熱ポリマー 4兆46億円(14.9%増) 〜次世代自動車用途が市場拡大を牽引
透明ポリマー 1兆5,345億円(12.3%増) 〜光学特性を活かした高付加価値分野で成長
マーケティング&コンサルテーションの株式会社富士キメラ総研(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 田中 一志03−3664−5839)は、2012年11月から2013年1月にかけて、高い耐熱性や光学特性を有し、金属やガラス等の無機素材代替などにより各種エレクトロニクス産業や自動車産業の発展に大きく寄与している耐熱・光学ポリマーの世界市場を調査した。その結果を報告書「2013年 耐熱・光学ポリマー市場の現状と将来展望」にまとめた。
本報告書では、耐熱性と透明性のそれぞれのポリマーの市場の動向と方向性を明確化することを目的とし、耐熱ポリマー19品目、透明ポリマー17品目を調査対象とした。また、近年、成長が著しいエネルギー分野、自動車分野、その他新規エレクトロニクス分野に注目し、具体的な用途動向、市場実態、樹脂間の競合関係についても把握を実施した。加えて、各種特殊コンパウンドの市場動向についても調査を行った。
<調査結果の概要>
耐熱ポリマー・透明ポリマー世界市場推移
※表資料は、添付の関連資料を参照
耐熱・光学ポリマー市場は、エレクトロニクスや自動車用途を中心に拡大してきたが、ここ数年はリーマンショックや中国経済の成長鈍化、欧州景気不安などによる影響を受け苦戦している。2012年の市場は、一部電気・電子分野の不振や欧州市場の低迷が響き、金額ベースで2011年比1.0%減の4兆8,498億円となった。
市場を取り巻く環境は厳しい状況が続いているが、スマートフォンやHV・EV、医療機器、各種エネルギー等の成長分野もあり、ポリマーによっては高成長を維持している品目もある。今後の耐熱・光学ポリマー市場拡大のためには、既存用途に縛られずに、新たな成長用途を獲得していく必要がある。2013年以降は品目による差があるものの、自動車分野等が牽引して市場は拡大に向かうと考えられ、2016年の市場は2012年比14.2%増の5兆5,391億円が予測される。
[耐熱ポリマー市場]
耐熱ポリマー市場は、リーマンショックで落ち込んだ後徐々に販売量が増加しているが、2011年から2012年にかけては成長率が鈍化した。欧州景気不安、中国経済の停滞が要因と考えられる。2012年の市場は金額ベースで2011年比1.0%増の3兆4,838億円に留まった。
用途別では、これまで牽引役であったエレクトロニクス分野が不調であった。特に、樹脂使用量が多いLCDについては大型TVの需要が一巡した感があり、スマートフォンやタブレットの需要が拡大しているものの、大型TVに比べると樹脂使用量が少ないため販売量へ影響している。
今後の用途としては、HVやEV等の次世代自動車向けが注目される。自動車はこれまでも電装化、樹脂化が進んできたが、EV等では電装化・樹脂化が加速し、耐熱エンプラ等の使用量増に結び付く可能性を秘めている。2016年には2012年比14.9%の4兆46億円が予測される。
耐熱ポリマー分野における高成長品目としては、TPI、PEEKなどが挙げられる。TPIはフィルム向け、PEEKは様々な用途で採用が広がっている。また、用途の裾野が広く、電気・電子用コネクタやLEDリフレクタ、自動車で一定の需要を獲得している耐熱PAも高成長が期待できる。
[透明ポリマー市場]
透明ポリマー市場は、市場の約6割を構成するPC(ポリカーボネート)が、主要用途である光ディスク需要の減退により2010年から縮小しており、2012年は2011年比6.0%減の1兆3,660億円となった。
2013年以降市場は拡大に転じ、2014年以降年率2〜3%程度の成長が予測される。特に、導光板、拡散板等の光学フィルム・シート、光学レンズ、自動車レンズカバー類などの光学特性を重視する高付加価値分野では高成長が期待できる。2016年の透明ポリマー市場は2012年比12.3%増の1兆5,345億円が予測される。
また、今後期待される品目として、光学系撮像レンズ、耐熱車載レンズ、マイクロレンズ等での応用が進められている高屈折硬化系樹脂、中国をはじめとするアジア、及び東欧、中南米などの新興国市場向け眼鏡レンズ用途で低屈折樹脂レンズからの需要シフトが顕著な透明熱硬化系樹脂、携帯電話やDSC等の光学系撮像レンズ向けで需要が拡大し、今後も車載用、監視カメラへ採用が拡張すると考えられる高屈折熱可塑性樹脂があげられる。
<注目市場>
1. 耐熱PA(ポリアミド)
2012年 2016年予測 2012年比
世界市場 919億円 1,267億円 137.9%
*コンパウンド市場動向
主鎖の種類や構造によって種々のPAが開発されているが、ここでは耐熱性の高いPA(変性PA6T、PA46、PA9T、PA4T)を対象とした。
自動車部品向けが需要の約45%を占め、特に機構部品での採用が多い。近年の電装化の進展に加え、HV・EVでの採用、燃費向上を目的とした軽量化の推進により、今後も金属代替需要としての用途が拡大すると考えられる。また、自動車用チューブ等の新規用途の開拓も進められている。
電気・電子分野ではコネクタやスイッチに採用されている。液晶テレビや携帯電話・スマートフォン、ノートパソコン等での使用が多いため、これらの製品の生産状況による影響を受けやすいものの、PAはSMT(表面実装技術)化に対応可能なことから採用増加が期待できる。
また、LED等の高耐熱ニーズの拡大により、PAの採用は増加傾向にある。近年は低価格化が進んでいるが、原料価格の高騰により一部では値上げが実施されていることもあり、耐熱PA市場は2016年に2012年比37.9%増の1,267億円が予測される。
2.PPS(ポリフェニレンサルファイド)
2012年 2016年予測 2012年比
世界市場 560億円 689億円 123.0%
*コンパウンド市場動向
PPSは、フェニル基と硫黄が交互に繰り返される分子構造を持つ結晶性熱可塑性樹脂である。すぐれた耐熱性、耐ヒートショック性、樹脂自体の難燃性、耐薬品性が大きな特長である。これらの特性から耐熱製品の材料、金属製品の代替材料、熱硬化性樹脂製品の代替材料などとして採用されている。ウォーターポンプを始めとする自動車部品や、電気・電子部品、水廻り・住設機器などで用途展開がなされている。加えてHV・EV向け部品の採用増加も予想される。
今後、金属代替や小型化・軽量化のニーズを捉えた様々な用途への採用が期待され、PPS市場は2016年に2012年比23.0%増の689億円が予測される。特に自動車部品用途の需要拡大が期待できる。自動車の軽量化ニーズや製造コストの削減などによりアルミ代替としての採用が拡大するのに加え、PPS採用部品がガソリン車の数倍になるHV・EVの普及も後押しすると予想される。
自動車部品向け以外の電気・電子部品用途としては、SMTコネクタ、コイルボビン、光ピックアップベースなどでの採用が挙げられる。エレクトロニクス分野の製品市場の拡大や、製品の小型化・軽量化ニーズによる金属や熱硬化性樹脂の代替進行など、潜在的な需要が期待される。ただし、LCP(液晶ポリマー)等の他樹脂との競合も激しくなっており、電気・電子部品用途では今後横ばいと考えられる。
3.PC(ポリカーボネート)
2012年 2016年予測 2012年比
世界市場 8,210億円 9,125億円 111.1%
*ポリマー/コンパウンド市場動向
PCは耐衝撃性・耐熱性・寸法安定性・電気的特性・難燃性等のトータル物性に優れ、透明性を有している。これらの特性を活かして電気・電子分野、自動車分野、医療機器、雑貨、建材の分野等、多岐に亘って利用されている。
光ディスク需要が大きく減退していることを背景に、光学分野の需要が右肩下がりとなっている。LEDやFPD向けが堅調であるもののカバーしきれていない。2012年は、設備的に大きく余剰の状態となったこともあり、販売量は伸長したものの価格が下がり、市場は2011年比10.8%減の8,210億円となった。
PCは幅広い用途があり、多様な需要を取り込むことで、2013年以降、市場は回復基調で推移すると予測される。中国や東南アジア向けの投資拡大に伴い、建材や家電、雑貨などの分野で需要拡大が期待される。自動車用途は生産台数の増加に比例して堅調に拡大するとみられ、特にBRICs地域をはじめとした新興国地域における市場の伸びが大きいと考えられる。またOA機器や小型機器においても同様の需要拡大が期待できる。
一方で、光ディスク向けは減少していくとみられ、またFPD関連の伸びは今までよりも鈍化する見通しである。今後更なる市場拡大のためには、LEDのような新規アプリケーションの開拓が必要となる。
<調査対象>
耐熱ポリマー:LCP(液晶ポリマー)、耐熱PA(耐熱ポリアミド)、変性PPE(変性ポリフェニルエーテル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PSU(ポリサルフォン)・PPSU(ポリフェニレンサルフォン)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PAR(ポリアリレート)、PI(ポリイミド)、TPI(熱可塑性ポリイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、耐熱ポリエステル(PCT、他)、耐熱ABS(耐熱アクリルブタジエンスチレン)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)、エポキシ、シリコーン、フッ素
透明ポリマー:PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、MS(スチレン−メチルメタクリレート)・MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)、透明ABS(透明アクリルブタジエンスチレン)、SBC(スチレン−ブタジエンブロックコポリマー)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィン・ポリマー)・COC(シクロオレフィン・コポリマー)、フルオレン系ポリエステル、PEN(ポリエチレンナフタレート)、脂環式エポキシ、透明PI(透明ポリイミド)、透明PA(透明ポリアミド)、透明フッ素、透明エラストマー、透明熱硬化系樹脂、高屈折熱可塑性樹脂、高屈折硬化系樹脂
<調査方法>
富士キメラ総研専門調査員による調査対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査と一部文献調査
<調査期間>
2012年11月〜2013年1月
以上
資料タイトル:「2013年 耐熱・光学ポリマー市場の現状と将来展望」
体裁:A4判 312頁
価格:書籍版 97,000円(税込み101,850円)
CD−ROM付 107,000円(税込み112,350円)
調査・編集:富士キメラ総研 研究開発本部 第二研究開発部門
TEL:03−3664−5839 FAX:03−3661−1414
発行所:株式会社 富士キメラ総研
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