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慶大、マッキューン・オルブライト症候群の新しい遺伝子診断法を開発

2013-03-29

マッキューン・オルブライト症候群の新しい遺伝子診断法を開発
― 従来法と比較して遺伝子変異検出感度100倍・血液からの超高感度診断が可能に ―


 マッキューン・オルブライト症候群は、骨病変(線維性骨異形成;病的な骨折や頭蓋骨の変形を起こす)、皮膚病変(カフェオレ斑と呼ばれる褐色の色素沈着)、内分泌病変(0〜10歳で乳房発達・性器出血が起こる思春期早発症など)を主要症状とするまれな症候群です。根本的治療のない難治性疾患であり、厚生労働省の小児慢性特定疾患治療研究事業(注1)の対象疾患に指定されています。これまで行われてきたマッキューン・オルブライト症候群の遺伝子診断法は、遺伝子変異の検出感度が不十分であり、より高感度な遺伝子診断法の開発が望まれていました。
 厚生労働科学研究(難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業)の一環として、慶應義塾大学医学部の鳴海覚志(なるみさとし)特任助教、長谷川奉延(はせがわとものぶ)教授らが、旭川医科大学小児科と行った共同研究により、次世代遺伝子解析装置(注2)を用いたマッキューン・オルブライト症候群の新しい遺伝子診断法の開発に成功しました。この新しい方法は、従来法と比べ遺伝子変異の検出感度が100倍向上しており、患者さんの血液中、正常遺伝子の中に潜む、わずか0.01%の遺伝子変異が検出できます。この超高感度診断法により、従来法では診断できなかったマッキューン・オルブライト症候群患者さんの遺伝子診断が行えるようになることが期待されます。
 本研究の論文は、科学誌PLOS ONE オンライン版(http://www.plosone.org)に3月26日(日本時間)に公開されます。


1.研究の背景
 マッキューン・オルブライト症候群は、1936年に米国医師マッキューンが初めて論文に記載し(注3)、1937年に米国医師オルブライトが概念を確立した先天性疾患です。骨病変(線維性骨異形成;病的な骨折や頭蓋骨の変形を起こす)、皮膚病変(カフェオレ斑と呼ばれる褐色の色素沈着)、内分泌病変(0〜10歳で乳房発達・性器出血が起こる思春期早発症など)を主要症状とするまれな症候群であり、根本的な治療のない難治性疾患です。小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患として指定されており、効果的な診断法・治療法の開発が待たれています。
 血液中をめぐるホルモンが細胞に作用する際にその信号を伝達する分子のひとつにGsたんぱく質(GNAS)があります。マッキューン・オルブライト症候群では、GNAS遺伝子に起こった変異により、GNASの働きが異常に増加した状態となります。このようなGNAS変異が体内に存在すると、ホルモンが分泌されていなくてもホルモンの働きが現れてしまうこととなり、その結果、骨、皮膚、卵巣などの臓器に症状が起こります。
 マッキューン・オルブライト症候群の患者さんの体内では、全ての細胞にGNAS変異が存在するわけではなく、一部の細胞のみが変異を持つ状態(これを「体細胞モザイク」と呼びます)となっていることが知られています。GNAS変異は体内の様々な細胞に大きな影響を与えるため、全細胞に変異が生じる「生殖細胞系列変異」(注4)を持つ個体は、胎児期に亡くなり出生できないと考えられています。マッキューン・オルブライト症候群の特徴である「体細胞モザイク」が、遺伝子診断を行うことを難しくしています。骨など症状が現れている部位には一定量のGNAS変異が存在するはずですが、一般的に病変部位からの細胞採取は患者さんへの負担が大きく、容易には行えません。一方、遺伝子診断の生体材料として広く用いられている血液細胞においては、GNAS変異の存在量は通常極めて低く、一般的な遺伝子診断法によりGNAS変異を検出することはできません。
 1997年にマッキューン・オルブライト症候群に関わるGNAS変異だけを増幅する手法が初めて開発され、2000年にはその改良法ともいえるペプチド核酸法(注5)が開発されました。これにより、マッキューン・オルブライト症候群を疑われる患者さんの約半数において遺伝子診断が可能になりました。しかし、診断法の改良はその後10年以上にわたり停滞しており、遺伝子変異の検出感度が十分でない状態が続いていました。今回、私たちは、ペプチド核酸法と次世代遺伝子解析装置を組み合わせることにより、遺伝子変異の検出感度を大幅に改善させる新規遺伝子診断法の開発に取り組みました。

 <次世代遺伝子解析装置に関する詳細>
  次世代遺伝子解析装置を用いた遺伝子解析法(以下、次世代法)は大量並列配列解析とも表記される画期的なDNA解析技術であり、それまで普及していたキャピラリー型遺伝子解析装置の数万倍以上の量の塩基配列を短時間で解析できます。次世代法をキャピラリー型装置と比較する際、量的な面(塩基配列決定量)に目を奪われがちですが、質的な面(塩基配列決定の過程)にも違いがあります。キャピラリー型装置では数百万個のDNA分子から発せられる蛍光信号を積算して検出するのに対し、次世代法では個々に分離された数百万〜数千万のDNA分子に由来する蛍光信号をそれぞれ独立に検出します。このため、後者では「体細胞モザイク」のため低頻度となっている変異であっても検出することが可能です。



※以下、「研究の概要と成果」などリリースの詳細は添付の関連資料を参照


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