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東大、日本人は相手にアイコンタクトをとられると「近づきがたい」と感じる事を発表

2013-03-20

日本人はアイコンタクトをとられると「近づきがたい」と感じる
―より円滑な異文化コミュニケーションに向けて―


1.発表者:
 明地 洋典(日本学術振興会 特別研究員PD)
 長谷川 寿一(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
 ヤリ・ヒエタネン(タンペレ大学(フィンランド) 教授)


2.発表のポイント:
◆成果:日本人が欧米人(フィンランド人)と比較し、アイコンタクトをとられるとその相手に対し「近づきがたい」「怒っている」と感じやすいことを示しました。
◆新規性:アイコンタクト行動には文化差があることが報告されてきましたが、その差は生理的な要因によるものではなく、アイコンタクトに関わる文化的慣習に起因する可能性が示唆されました。
◆社会的意義/将来の展望:アイコンタクトは社会的コミュニケーション上、不可欠です。今回の研究結果が、円滑なコミュニケーションを行うための糸口となることが期待されます。


3.発表概要:
 東アジア人は欧米人に比べてアイコンタクトの頻度が低いことが知られています。しかし、その文化差を生み出す生理・心理メカニズムについては知られていませんでした。
 東京大学大学院総合文化研究科の長谷川寿一教授、同研究科博士課程 (現・日本学術振興会特別研究員PD)の明地洋典氏らの研究グループは、フィンランドタンペレ大学のヤリ・ヒエタネン教授とともに、日本人とフィンランド人を対象とした実験により、アイコンタクトに対する感じ方に文化差があることを発見しました。
 本研究グループは、電動液晶シャッター(注1)を通して、視線が正面向き、よそ向き、または目を閉じている他者の顔を画像ではなく実際に提示し、その際の心拍の変化や感じ方の違いについて記録しました。その結果、正面向きの顔がシャッターにより自動的に提示された場合、日本人もフィンランド人もよそ向きに比べて心拍数の減少が見られたため、生理的には文化差はありませんでしたが、心理評定においては、日本人はフィンランド人に比べて正面向きの顔をより「近づきがたい」「怒っている」と感じることが明らかになりました。
 アイコンタクトは社会的コミュニケーションをとる上で不可欠であることから、今回の結果を念頭に置くことで、コミュニケーション、特に異文化間の交流が円滑なものとなることが期待されます。今後は、この結果が、他の東洋・西洋の国々、また、日常の場面に一般化できるかどうかについて検討していく必要があります。

 ※図は添付の関連資料を参照


4.発表内容:
(1)研究の背景・先行研究における問題点
 アイコンタクトに対する敏感さは、発達的にとても早い段階から見られ、赤ちゃんはアイコンタクトをとっている人の顔をよく見ます。このような反応は生後2〜5日でも見られるため、アイコンタクトへの敏感性は生まれながらにしてヒトに備わっているものであると言えます。一方で、アイコンタクトのとり方には文化差も存在することがわかっています。たとえば、日本人は、アメリカ人などの欧米人に比べ、アイコンタクトの頻度が低いことが報告されてきました。このことは、アイコンタクトへの敏感さは生まれながらのものでありながら、その使用は環境の影響も受けるということを示しています。しかし、どのような生理・心理メカニズムがこのようなアイコンタクトの文化差を生み出しているのかについてはこれまで検討されてきませんでした。

(2)研究内容(具体的な手法など詳細)
 明地らの研究グループでは、日本人とフィンランド人を対象に、それぞれ東京とタンペレ市で実験を行いました。それぞれの国の人の顔を実験刺激として、電動液晶シャッターを通して実際に人(モデル)の顔を提示しました。モデルの視線方向として、正面向き、よそ向き、また、目を閉じている条件がありました。そのモデルの顔を見ている間の心拍数変化の測定や、様々な心理評定を行いました。それぞれの国でモデルが異なるため、解析の際は、目を閉じている条件をベースラインとして扱い、モデルの顔の物理的特性の影響を統制しました。
 その結果、文化(国)に関係なく、正面向きの顔はよそ向きの顔と比較し、心拍数の減少を引き起こし、心理評定の結果から覚醒度が高まる感じがすることが示されました。これは、アイコンタクトをとられると、文化に関わらず注意が高まると解釈されます。そのように、通文化的なアイコンタクトの効果が見られた一方で、アイコンタクトに関する文化差が心理評定において見られました。日本人は、フィンランド人と比べて、正面向きの顔をより「怒っている」「近づきがたい」と感じることが示されました。

(3)社会的意義・今後の予定など
 アイコンタクトは社会的コミュニケーションをとる上で不可欠です。今回の結果を念頭に置くことで、コミュニケーション、特に異文化間の交流が、より円滑になることが期待されます。たとえば、日本人は西洋人と会った際、アイコンタクトが「怒り」を示すものではないと知っておいた方がよく、逆に西洋人は日本人と会った際、日本人があまりアイコンタクトをしないのは無意識に近づきがたい印象を与えないようにしている可能性を考えるとよいでしょう。今後は、この結果が、他の東洋・西洋の国々、また、日常の場面に一般化できるかどうかについて検討していく必要があります。


5.発表雑誌:
 雑誌名:「PLOS ONE」(オンライン版の場合:3月13日午後5時(米国東部夏時間)公開予定)
 論文タイトル:Attention to eye contact in the West and East: autonomic responses and evaluative ratings
 著 者:Hironori Akechi,Atsushi Senju,Helen Uibo,Yukiko Kikuchi,Toshikazu Hasegawa,&Jari K. Hietanen
      明地洋典、千住淳、Helen Uibo、菊池由葵子、長谷川寿一、Jari K.Hietanen
 DOI番号:journal.pone.0059312
 アブストラクトURL:http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0059312


6.問い合わせ先:
 <研究内容に関するお問い合わせ>
 明地 洋典(日本学術振興会特別研究員PD)


7.用語解説:
(注1)電動液晶シャッター:
 普段は不規則に並んでいるため光を拡散し、不透明であるガラスの液晶分子が、電圧がかかると同じ方向へ並ぶようになり、透明となります。本研究で使用したUMUガラスは、1ミリ秒という短い時間で不透明から透明へ変化します。


8.参考資料:
 実際の実験状況とは少し違いますが、以下のような状況で、液晶シャッターを使い、実際に実験参加者とモデルとなる人が対面しました。
 http://europepmc.org/articles/PMC3150859?figure=F1/

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