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名大など、安全・安価なマグネシウム超分子触媒の開発などに成功

2013-03-13

[触媒の匠工房:単一分子触媒から超分子触媒へ]
安全・安価なマグネシウム超分子触媒の開発と光学活性リン化合物の触媒的不斉合成に成功


<掲載論文>
 Chiral Magnesium(II)Binaphtholates as Cooperative Bronsted(*1)/Lewis Acid−Base Catalysts for Highly Enantioselective Addition of Phosphorous Nucleophiles to α,β−Unsaturated Esters and Ketones

 キラルマグネシウム(II)ビナフトラートを酸・塩基協同機能触媒として用いるリン求核剤のα,β−不飽和エステル及びケトンへの高エナンチオ選択的付加反応

 *1の単語の正式表記は添付の関連資料を参照


<著者>
 Manabu Hatano,Takahiro Horibe,Kazuaki Ishihara
 波多野学(准教授)、堀部貴大(大学院生)、石原一彰(教授)
 名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻

 本研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)として実施した。
 研究領域「プロセスインテグレーションに向けた高機能ナノ構造体の創出」
  (研究総括:入江正浩(立教大学))
 研究課題「酸・塩基複合型超分子動的錯体を鍵とする高機能触媒の創製」
  (研究代表者:石原一彰(名古屋大学))

<掲載誌>
 Angewandte Chemie International Edition
 アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション
 ドイツ化学会誌、Wiley−VCHより出版
 化学の分野ではNature Chem.やJ.Am.Chem.Soc.と肩を並べる最高峰の学術誌である本誌に掲載されることが決定したのみならず、掲載論文のなかでも特にVIP(very important paper)の栄誉が与えられ、掲載号の表紙を飾ることになった。


<要旨>
 酵素は環境に優しい理想的な高機能触媒であるが、その精巧な鍵穴(注1)をもった数万から数10万の分子量を有する触媒(注2)を単一分子として人工的に設計・合成するのは技術的に困難である。名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻の石原一彰教授らの研究グループでは、JST・CRESTの研究の一環として、『予め分子設計しておいた数種類の小分子をフラスコ内で混ぜ、分子が自発的に集まって機能化する自己組織化(注3)を利用し一種類の超分子錯体(注4)に一気に収束させて、酵素機能を凌駕するナノサイズの高機能触媒を設計・開発する』ことを目的に研究を行っている。

 この度、同研究グループは、ミネラルとして体内の必須元素でもあるマグネシウムイオンと入手容易で安価な光学活性(注5)ジオールを2:3のモル比で混ぜるだけで自己組織化し一種類の超分子錯体に収束することを見出した。さらに、この超分子錯体(3or 4)を不斉触媒として、不飽和カルボニル化合物への有機リン化合物の付加反応を試したところ、用いる基質に応じて、高選択的に光学活性β−ホスホリルエステルや光学活性α−ヒドロキシホスホン酸エステルが合成できることがわかった。光学活性β−ホスホリルエステルは様々なP,N−配位子(注6)へと合成変換できるため、新たな不斉触媒の開発に繋がる。また、光学活性α−ヒドロキシホスホン酸エステルは、加水分解酵素であるプロテアーゼやエステラーゼの阻害剤合成の鍵中間体となることが知られているため、新薬の開発への貢献が期待される。本触媒反応はグラムスケールでも再現性よく進行し、簡便な実験操作で実施できるため、極めて実用性の高い技術である。

 なお、本研究成果はドイツ化学会誌アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディションから注目の論文(VIP= very important paper)として評価され、近日中に同誌のオンライン版に公開される。また掲載号の表紙を飾ることも決定している。

 以下詳細は、参考画像および添付の関連資料「リリース詳細」を参照


<用語解説>

注1)鍵穴:酵素や触媒の活性中心近傍に存在する溝またはポケット。一方、反応基質は鍵に喩えられる。反応は鍵穴のなかで活性化される。

注2)触媒:特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう。また、反応によって消費されても、反応の完了と同時に再生するものも触媒とされる。

注3)自己組織化:自然に秩序が生じて、自分自身でパターンのある構造を作り出して組織化していく現象

注4)超分子錯体(触媒):複数の分子が共有結合以外の結合(配位結合、水素結合など)や比較的弱い相互作用により秩序だって集合してできる錯体(触媒)

注5)光学活性:両鏡像異性体のどちらかが過剰に存在するために旋光性を示す性質

注6)P,N−配位子:窒素原子とリン原子で中心原子にキレートする配位子

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