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日本IBMなど、国際標準の電子タグを使ったトレーサビリティー共同実証実験を実施

2012-11-28

国際標準の電子タグを活用した共通基盤で生産者を支援
− 静岡県袋井市産果物のトレーサビリティ共同実証実験を実施 −


 慶應義塾大学SFC研究所(所在地:神奈川県藤沢市、所長:金子郁容)、一般財団法人流通システム開発センター(所在地:東京都港区、会長:井上毅、以下流通システム開発センター)、株式会社大和コンピューター(本社:大阪府高槻市、社長:中村憲司、以下大和コンピューター)、神奈川工科大学(所在地:神奈川県厚木市、学長:小宮一三)、日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都中央区、社長:マーティン・イェッター、NYSE:IBM、以下日本IBM)の5者は、国際標準の識別番号体系(注1)を用いてモノを個体識別して、モノの場所と状況を共通のフォーマットでクラウド上に保存することで、モノの生産者と消費者の交流や、複数の物流会社にまたがる出荷状況の追跡など様々なアプリケーションからデータを利活用できる共通基盤を構築し、国内および海外(香港)で共同実証実験を行いました。

 近年、農業・漁業を始めとする日本の第1次産業で、担い手不足、国内市場の縮退などの課題が指摘されている中、生産・物流・販売を一手に行う第6次産業の発展が注目されています。このたび5者が行った実証実験は、静岡県袋井市で収穫された果物のトレーサビリティならびにeコマースを実現する共通基盤を構築し、本年11月に収穫された果物を生産地から東京・大阪・千葉と香港まで追跡し、関連情報を共有するというものです。

 本実証実験では、静岡県袋井市で収穫された果物の糖度、農場の放射線量を測定し、生産者、収穫地、収穫日、食べごろ、出荷数といった生産情報とともに、生産者自身がFacebookページに登録します。消費者は、これらの情報をFacebookページで閲覧でき、Facebookにリンクされたeコマースサイトから、果物を購入することができます。収穫地から運ばれた果物は、出荷場で果物の個体識別子と梱包の個体識別子、物流業者の識別番号がeコマースの発注番号と関係づけてクラウドに登録されます。こうすることにより、出荷された果物は、流通経路での配送状況や温度情報が追跡できるようになります。

 この共通基盤を実用化することで、生産の効率化のみならず、生産者の利益の向上や、消費者の安心・安全などに対する要求を満たすことができるようになり、第6次産業の発展に寄与することができます。また今後、自治体や農業生産者が、簡単かつ気軽に利用できる仕組み作りを検討していく予定です。

 流通システム開発センターでは、GS1(Global Standard One)国際標準の利用推進を通じて、サプライチェーン全体の効率化、情報化推進に努めています。今回の実証実験では、GS1国際標準であるEPCやEPCIS(注2)を活用することで、農業生産から流通段階の情報を消費者に対しても提供できることを確認しました。今後もサプライチェーン全体のトレーサビリティ・システムの構築に国際標準を活用すること
を推進していきます。

 なお慶應義塾大学SFC研究所は、Auto−IDラボ(代表:村井純環境情報学部教授)が本研究開発を担当し、EPCISのオープンソフトウェアFosstrakを用いたEPCISアダプターを開発するとともに、農園における環境センシングシステムの構築を担当しました。放射線量測定に関しては地球環境スキャニングプロジェクト(http://scanningtheearth.org/)も協力しています。Auto−IDラボは世界7大学(慶應義塾大学、MIT(米)、Cambridge(英)、ETH/St.Gallen(スイス)、Fudan(中国)、KAIST(韓)、Adelaide(豪))に設置された”モノのインターネット(Internet of Things)”に関する研究組織であり、バーコード・電子タグの国際標準団体GS1の研究所としても活動しています。

 本実証実験のシステムの詳細は以下のとおりです。

・生産情報公開システム
 果物にQRコード付の電子タグを付けることで、トレーサビリティ情報を取得できるだけでなく、消費者がQRコードをスマートフォンで読んで、果物に関する様々な情報(糖度、食べごろ、流通過程での温度情報、おいしい食べ方、農場の放射線量情報、生産者情報等)を参照できます。

・EPCISトレーサビリティ・システム
 国際標準の識別番号体系(EPC)でモノを個体識別し、その場所と状況を共通のフォーマットでクラウド上に保存することで、様々なアプリケーションからのデータ利活用を可能にしました。

 本システムは、ユーザアプリケーションとクラウド間にEPCISアダプターと呼ばれる新しい仕組みを開発したこと、センサ情報をEPCシステムに導入したことの2つの特長を持ちます。

 EPCを使ったシステムを実際に導入・運用するためには、例えば二重登録の防止、先入れ先出しのための入荷時期確認などの作り込みが必要であり、従来はアプリケーション毎に個別に開発していました。EPCアダプターはこうした作り込みを共通化する仕組みです。これにより、ユーザアプリケーションの開発を容易にするとともにクラウドとのやりとりを効率化・高速化することが可能です。

 また、センサ情報の導入に関しては、農場の安全性をeコマース上でアピールするために温室内にガイガーカウンタを2台設置しました。温室は1棟が7m×24m程度あり、今回の出荷分ではそのうち2棟を使うため、無線(ZigBee)ネットワークを用いて、ガイガーカウンタによる放射線量情報を農場内で収集し、携帯回線を使って慶應SFCのデータベースに蓄積するとともに、EPCISクラウドに投入しました。センサ付きトレーサビリティの場合、従来、センサとモノのデータをアプリケーション側でまとめてデータベースに投入することが一般的ですが、このようにデータ取得とそのデータ購読を独立、自在に設定する仕組みを使うことで、1つ1センサデータを複数のサービスに用いることができるようになります。1つ1個体識別子にサービスが複数定義された場合にも、サービスをインターネット上から検索することや、登録することもできます。

 本システムでは、アクセス方式はアプリケーション等によって自由に選択しますが、その上位層での情報は国際標準IDに基づいた表現を用いることで、モノに関する情報を自由に組み合わせられる仕組みになっています。

 5者は昨年度から本システムの構築を開始し、本年11月に収穫を開始した果物で、東京・神奈川・大阪・千葉・香港を最終到達地とする実証実験を行いました。(香港への到着は11月26日を予定)

 大和コンピューターは、SIerとして、また農業法人の立場で、農作物に「情報価値」を付加して6次産業化できる共通基盤の構築を目指し、「生産情報公開システム」の構築と、情報の閲覧、生産者と消費者との交流を実現するFacebookページの作成を行いました。また、海外(香港)からも活用できるよう、英語対応も実施しました。

 慶應義塾大学神奈川工科大学は、共通基盤のメインシステムのひとつである、「EPCISトレーサビリティ・システム」を開発しました。

 日本IBMは、「コマースシステム」と「オーダー管理システム」を構築し、「コマースシステム」では、高度な消費者向けeコマースサイトの運用に対応するソフトウェア「IBM(R) WebSphere Commerce」を活用しました。また実証実験環境として、IBMのパブリック・クラウド・サービス「IBM SmarterCloud Enterprise(SCE)」を利用しました。

 なお、本実証実験で活用した電子タグリーダー機器やトレースされた果物は、11月22日、23日に東京・六本木の東京ミッドタウンで開催される「SFC Open Research Forum 2012」にて、公開します。

 本システムのeコマースサイトは以下をご参照ください。
 http://commerce.dc-agri.com/


以 上


※以下の画像は添付の関連資料を参照
 ・画像1〜4:果物に付加したQRコード付き電子タグとスマートフォンで読込んだ糖度と食べごろ情報
 ・イメージ図:共通基盤を使ったイメージ


注1:GS1 EPCglobalが推進する、電子タグ向け国際標準コードであるEPC(Electronic Product Code)。今回は、商品識別及びケース識別にSGTIN、場所・事業所の識別にGLNを利用。

注2:EPCに紐づけられたモノの情報を登録・検索するためのサービス。EPCISは、Electronic Product Code Information Servicesの略称。


 IBM、IBM ロゴ、ibm.com、WebSphereは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点での IBM の商標リストについては、 http://www.ibm.com/legal/copytrade.shtml をご覧ください。

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