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京大、二酸化炭素の資源化につながる太陽エネルギーを活用した有機合成手法を開発

2012-11-27

太陽エネルギーを駆動力として二酸化炭素を取り込む新手法を開発−二酸化炭素の資源化に期待−


 村上正浩 工学研究科教授、石田直樹 同助教、島本康宏氏(同博士後期課程)らのグループの共同研究で、太陽光のエネルギーを駆動力として利用して、二酸化炭素を基本的な有機化合物であるアミノケトンに導入する新しい有機合成手法が開発されました。

 本成果は、2012年11月6日付の独国化学会誌「Angewandte Chemie」に掲載されました。


<概要>
 本研究チームは、太陽エネルギーを駆動力としてアミノケトンに二酸化炭素を取り込み、環状炭酸エステルを合成する新手法を開発しました。本成果は、太陽光を駆動力として有機化合物に二酸化炭素を取り込むための基礎的な方法論を提案・実証したものです。この方法論をさらに押し進めることで、二酸化炭素を炭素資源として活用することができるようになるものと期待されます。


<背景>
 現代社会は化石資源や原子力に由来するエネルギーに依存して発展してきました。しかし、化石資源の枯渇、地球温暖化、原子力技術に内在する危険性などの諸問題が顕在化するに伴い、大幅な方向転換を迫られています。科学技術の分野も例外でなく、自然エネルギーを有効に利用する新しい技術の開発が強く求められています。一方、二酸化炭素地球温暖化の原因物質とされ、その削減が地球規模での急務の課題となっています。太陽エネルギーを活用して二酸化炭素を有機化合物中に取り込む手法は、環境・資源両問題の解決に貢献しうる手法として期待されます。


<研究手法・成果>
 本研究チームは、太陽エネルギーを駆動力として二酸化炭素を取り込む手法として、太陽エネルギーを取り込む反応(明反応)と、二酸化炭素を取り込む反応(暗反応)を連続的に行うことを提唱しました。まず、太陽光を原料に照射して、高エネルギー化合物へと変換します。この変換反応は光エネルギーを化学エネルギーに変え、高エネルギー化合物に蓄積する過程です。続いて、そのエネルギーを駆動力として高エネルギー化合物に二酸化炭素を取り込みます(図1)。


 *図1は添付の関連資料を参照


 このモデルケースとして、温和な条件下でアミノケトンに二酸化炭素を取り込み、環状炭酸エステルを得る手法を開発しました。まず、パイレックス製のガラス容器にアミノケトン1を有機溶媒に溶かしたものを入れ、容器内を常圧の二酸化炭素で満たします。この容器を太陽光にさらすと(写真1)、アミノケトンが太陽光のエネルギーを吸収して、高エネルギー中間体アゼチジノール2が生成します。この反応は晴れた日のみならず、曇りの日(写真2)であっても、速度は低下しますが進行します。続いてこの反応溶液に炭酸セシウムを添加して60度に加熱すると、二酸化炭素の取り込みがおこり、炭酸エステル3が83%の収率で生成します。得られた環状炭酸エステルには医薬品の原料や燃料添加剤の用途が期待されます。(図2)


 *図2は添付の関連資料を参照


<波及効果>
 本研究で得られた成果は、理想的なエネルギー源である太陽光を駆動力として二酸化炭素を取り込むための基礎的な方法論を提案・実証したものです。この方法論をさらに押し進めることで、将来的には二酸化炭素の資源化のみならず、太陽光のエネルギーを駆動力として用いる、環境に配慮した精密物質変換が可能になるものと期待されます。


<今後の予定>
 二酸化炭素の資源化に向けて、二酸化炭素の還元過程を含む分子変換が求められます。本研究では二酸化炭素を取り込むことに成功していますが、二酸化炭素の酸化状態は変化しておらず、今後は還元過程を含む反応の開発に取り組む予定です。

 本研究の一部は、文部科学省・科学研究費補助金および旭硝子財団の助成を受けて行われました。


<書誌情報>
 [DOI]:http://dx.doi.org/10.1002/anie.201206166

 "Solar−Driven Incorporation of Carbon Dioxide into α−Amino Ketones" Naoki Ishida,Yasuhiro Shimamoto, Masahiro Murakami:Angewandte Chemie,International Edition,2012,51,11750−11752.


<用語解説>

・アミノケトン
 アミノ基を置換基として持つケトン(R−C(O)−R"、R,R"はアルキル、アリール基など)。アミノ酸などから容易に合成される。

・炭酸エステル
 −O−C(O)−O−骨格を有する有機化合物。

・還元
 電子を受け取る化学反応。

・酸化状態
 原子の電子密度が、単体と比較してどの程度かを示す目安の値。


 ・京都新聞(11月20日 27面)に掲載されました。

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