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富士フイルムなど、インフルエンザ感染時の症状軽減など「サラシア」の免疫調整作用を実証

2012-10-23

「サラシア」の免疫調整作用を実証
インフルエンザ感染時の症状が軽減


 富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、糖の吸収抑制効果があることで知られるサラシア属植物の腸管免疫に対する作用に関して京都府立大学(動物機能学研究室・動物衛生学研究室)と共同研究を行いました。その結果、サラシア属植物抽出エキスを摂取すると、免疫力の指標となるNK細胞(※1)の活性が高まり(図1)、インフルエンザ感染時の症状が軽減されることを、マウスを用いた試験における免疫学的解析・病理学的解析・臨床症状観察から実証しました。
 当社は写真分野で蓄積してきた原材料の精製加工技術や独自のナノ技術、解析技術などをベースに、これまでに、さまざまな有用成分を高濃度に抽出・安定化することや吸収を高めることに成功しているほか、有用成分の新たな作用のメカニズムを解明してきました。サラシア属植物についても、抽出エキスを摂取することで腸内環境が改善され、生体内の免疫力が高まることをこれまでに確認してきました。免疫力が適正に調整されることによる花粉症などのアレルギー抑制への期待に加え、今回インフルエンザ感染時の症状軽減という研究成果を得られたことで、健康増進に繋がるサラシア属植物の新たな応用をさらに検討していきます。

 〔図1:サラシア属植物抽出エキス投与、非投与の場合のインフルエンザウイルス感染マウス NK 細胞活性を比較〕

  *添付の関連資料「図1」を参照

 ※1:ナチュラルキラー細胞(Natural Killer Cell)。自然免疫の重要な因子として働くリンパ球の1種で、自分の体の一部ではないと認識した細胞を攻撃する働きを持ちます。私たちの体は、ウイルスに感染すると免疫に関連する細胞も順次活動を開始します。NK細胞はウイルスに感染したときに、それを攻撃するために最初に活動を開始する細胞といえます。NK細胞の活性を測定することで、感染したときの防御力を評価することができます。NK細胞活性が高いほど、ウイルスへの防御力が高いという指標になります。


■サラシアとは
 インドやスリランカなど南アジア地域に自生するデチンムル科のサラシア属植物(Salacia reticulata、Salacia oblonga等)の総称で、インドに古くから伝わる伝承医学(アーユルヴェーダ)においては初期の糖尿病治療に使用されてきました。最近では、サラシア属植物抽出エキスに含まれるサラシノール、コタラノール等が、腸内でオリゴ糖の分解を促進する酵素(α−グルコシダーゼ)の活性を阻害することが確認されており、サラシア属植物抽出エキスを摂取することで小腸での糖の吸収が抑制され、血糖値上昇を抑える効果があることが明らかになっています。


■研究の背景
 当社はこれまで、サラシア属植物抽出エキスを摂取することで、腸内のpHの低下、腐敗産物やアンモニアを減少させるなどの腸内環境改善効果があることを実証してきました。また、小腸で糖の吸収が抑制されてオリゴ糖が大腸に届き、腸内フローラ(※2)が改善され、腸管免疫系(※3)に作用し、小腸において免疫関連遺伝子(※4)の発現が高まることを確認しています。今回、マウスにサラシア属植物抽出エキスを摂取させた試験を実施し、インフルエンザウイルスに感染させたときの免疫に関連する細胞の活性、臨床的な症状の観察、病理学的解析を行い、感染症に対するサラシア属植物抽出エキス摂取の作用解明を試みました。

 ※2:腸内細菌叢。健康な人の腸内には、100種を超える総数で100兆個の腸内細菌がバランスを保って住みついています。特に小腸の終わり(回腸)から大腸にかけては、腸内細菌が種類ごとにまとまりを作ってびっしりと敷き詰められ生息している状態なので、「花畑」にたとえて「腸内フローラ」と呼ばれています。腸内フローラは食習慣・年齢・ストレスなどにより変化し、バランスが崩れると病気やアレルギーの原因になるとされています。
 ※3:小腸は、食物に含まれる栄養素を吸収するという機能の他に、体内に侵入してきた異物を認識して排除する免疫機能を備えています。これらの免疫機能を担っている器官は、腸管に存在する(1)パイエル板、(2)小腸上皮細胞とそこに存在する腸管固有リンパ球、(3)粘膜固有層とそこに存在する粘膜固有リンパ球で、これらの免疫器官で腸管免疫系を構成しています。
 ※4:体内の免疫機能は「細胞性免疫」と「液性免疫」という2つの仕組みにより成り立っています。この両者はシーソーのように、一方の働きが強くなるともう一方は抑制される相反関係にあることが知られています。このバランスは、Th1細胞とTh2細胞という2種類のヘルパーT細胞が調整しています。Th1細胞は細胞性免疫を促進し、Th2細胞は液性免疫を促進します。Th1/Th2のバランスが崩れ、Th1へ傾くと自己免疫疾患に、Th2へ傾くとアレルギーになりやすいといわれています。サラシア属植物を摂取することによって腸内細菌叢が変化し、小腸において免疫関連遺伝子、特にTh1細胞関連遺伝子の発現が増加、Th2に偏りがちな状況を改善することがわかってきています。


■実験方法
 生後8週齢のメスのマウス10匹を1週間の予備飼育後、2つのグループに分け、一方の群にはマウスの体重1kgあたり20mgのサラシア属植物抽出エキス懸濁液を投与し、もう一方の群には非投与としました。各グループとも水と餌は自由摂取としました。2週間投与後、両方のグループにインフルエンザウイルス(H1N1)を鼻腔内接種することで実験的に感染させました。ウイルス接種後もサラシア属植物抽出エキス投与群においてはサラシア属植物抽出エキス懸濁液の投与を続けました。
 感染後、咳などの臨床症状の観察をするとともに、感染5日後に採取した臓器を用いて病理学的解析と免疫学的解析を実施しました。病理学的解析では肺などの組織を染色して顕微鏡で観察しました。免疫学的解析では、以下のような方法でNK細胞活性を測定しました。蛍光色素で標識したターゲット細胞(※5)を、NK細胞が含まれる肺組織または脾臓組織由来の懸濁液と混合培養し、その後、死細胞のみを選択的に染色するもう一つの蛍光色素で二重標識します。これらをフローサイトメーター(※6)で解析し、ターゲット細胞の生細胞数、死細胞数よりNK細胞活性を求めました。
 また、ウイルス非感染時のNK細胞活性と比較するために、上記実験とは別にインフルエンザウイルスを接種しない生後8週齢のメスの10匹のマウスを用いた同様の実験を行いました。

 ※5:NK細胞から攻撃を受ける標的となる細胞。NK細胞活性を測定する際にNK細胞と一緒に培養し、NK細胞から攻撃されると死細胞となります。
     細胞数を計測するために予め蛍光色素等で標識しておくことが一般的です。
 ※6:細胞懸濁液を細い流路に流すことにより、細胞をひとつずつ光学的に解析し、細胞の大きさ・蛍光などの情報が得られる装置。今回の実験では、ターゲット細胞のみから得られる蛍光・死細胞のみから得られる蛍光を各々解析して、ターゲット細胞の生細胞数・死細胞数を計測しました。


■結果
 (1)免疫学的解析により、サラシア属植物抽出エキス摂取マウスのNK細胞活性の上昇を確認
    免疫学的解析において、感染5日目で、サラシア属植物抽出エキス投与の有無によって免疫に関連するNK細胞の活性値に差が見られ、肺および脾臓において、サラシア属植物抽出エキス投与によってNK細胞活性が有意に高値を示しました。(図1)また、インフルエンザウイルスを接種しないウイルス非感染のマウスを用いた同様の実験では、NK細胞活性の上昇は見られなかったことから、サラシア属植物抽出エキス投与によりウイルス感染時にのみNK細胞活性を上昇させることが明らかになりました。

 (2)臨床症状観察・病理学的解析により、ウイルス感染に伴う症状の軽減を確認
    臨床症状観察から、サラシア属植物抽出エキス投与群においては、ウイルス感染に伴う咳の減少が見られました。また病理学的解析においては、サラシア属植物抽出エキス非投与群においては肺に重度の炎症が見られましたが、サラシア属植物抽出エキス投与群では肺炎によって引き起こされる組織障害の軽減が確認できました。

 (1)(2)の結果から、サラシア属植物抽出エキスを摂取することによって、インフルエンザウイルス感染時にNK細胞活性が上昇すること、およびインフルエンザウイルスに感染したときの症状が軽減されることを確認することができました。サラシア属植物抽出エキスを摂取することにより、ウイルスへの防御力が高まり、ウイルスに感染したときの症状が軽減されたと推察しています。

 当社はこれまでの研究で、サラシア属植物抽出エキスを摂取することで、腸内フローラが変化し、腸内の環境が改善されること、免疫調整が働くことを明らかにしてきました。今回の研究結果から、サラシア属植物抽出エキスを摂取することにより、ウイルス感染時のNK細胞活性が上昇すること、およびインフルエンザ症状が軽減されるという新たな効果を確認することができました。これらの研究結果をもとに、今後サラシア属植物の新たな応用を検討していきます。


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