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東京商工リサーチ、1−9月の金融円滑化法に基づく貸付条件変更利用後の倒産動向を発表
2012年1−9月
「中小企業金融円滑化法」に基づく貸付条件変更利用後の倒産動向
〜 前年同期比48.6%増の162件9月までで前年1年間を上回る〜
2012年1−9月の中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)に基づく貸付条件変更利用後の倒産は162件(前年同期比48.6%増)に達した。9月までの累計は2011年(1−12月)累計の150件を上回るハイペースで推移している。
<2012年9月は18件>
金融円滑化法の期限切れが来年3月末に迫るなか、2012年9月の金融円滑化法に基づく貸付条件変更利用後の倒産は18件(前年同月25件)だった。前年同月が2011年の最多件数だったこともあってマイナスになったが、今年2月以降は件数が乱高下することなく、20件前後のペースで推移している。ここにきて月間倒産が1,000件を下回る低水準で推移しながら、金融円滑化法を活用した企業の倒産は一定ペースで発生している。これは金融支援で下支えされた企業の業績改善が進まず、資金繰りに行き詰まっている状況を浮き彫りにしている。
9月の産業別では、最多は製造業の6件。次いで、建設業と小売業が各3件、卸売業と運輸業が各2件、農・林・漁・鉱業と不動産業が各1件だった。
<2012年1−9月累計産業別では製造業が倍増>
2012年1−9月の金融円滑化法に基づく貸付条件変更利用後の倒産は累計162件。このうち、製造業が48件(前年同期比108.6%増)と倍増、全体の約3割(構成比29.6%)を占めて注目される。
産業別では、製造業が48件で最も多く、前年同期比108.6%増(前年同期23件)と倍増した。
円高に加え、大手企業がリストラ策の一環で工場閉鎖・縮小を加速する中、下請けを中心とした中小企業は厳しい状況に置かれている。次いで、建設業が44件(前年同期比33.3%増)、卸売業が23件、サービス業他が17件、小売業が13件、運輸業が10件の順。
<2012年1−9月累計原因別では「赤字累積」と「放漫経営」が急増>
原因別では、販売不振が83件(前年同期比27.6%増)で最多だった。しかし、既往のシワ寄せ(赤字累積)が前年同期比80.0%増(20→36件)、放漫経営が同200.0%増(6→18件)と急増した。政策的な金融支援で資金繰りが一時的に緩和しても、業績回復や経営改善が伴わずに資金的に息切れする企業の増加を示している。
※「円滑化法関連倒産月次推移」「円滑化法関連倒産月次推移」は添付の関連資料「参考資料1」を参照
<2012年1−9月累計形態別では破産が前年同期比71.9%増>
形態別では、破産が98件(前年同期比71.9%増、前年同期57件)で最も多く、高い増加率を示した。これに対し、再建型の民事再生法は15件(前年同期同数)にとどまっている。
金融円滑化法に基づく貸付条件変更を利用した企業の中には、業績回復が伴わず事業再建を断念せざる得ないケースが増えていることを裏打ちした。
なお、金融円滑化法と並んで有効な金融支援策だった「景気対応緊急保証制度」は、2011年3月で取扱いを終了したが、9月8件で7カ月連続で前年同月を下回った。
2012年1−9月の「景気対応緊急保証制度」利用後の倒産は、66件(前年同期比32.6%減、前年同期98件)となった。
※以下は添付の関連資料「参考資料2」を参照
・円滑化法関連 産業別倒産状況(1−9月)(産業別 件数構成比)
・原因別倒産状況(1−9月)(原因別 件数構成比)
・形態別倒産状況(1−9月)(形態別 件数構成比)