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名大など、植物の時間情報を司る遺伝子発現のネットワーク構造を発見

2012-10-06

植物の時間情報を司る遺伝子発現のネットワーク構造を発見



 名古屋大学高等研究院・科学技術振興機構(JST さきがけ)の中道範人特任助教、同大学大学院生命農学研究科の神岡真理院生、山篠貴史助教、水野猛教授、同大学大学院生命理学研究科・JST ERATOの鈴木孝征講師と東山哲也教授、理化学研究所植物科学研究センターの木羽隆敏研究員と榊原均グループディレクターの研究グループは、植物の一日の時間情報を司る遺伝子発現のネットワーク構造を発見しました。これにより植物の時間環境への適応などの理解が進むと期待されます。この成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS誌)のオンライン版10月1日午後3時(米国東部時間)にて発表されます。


【ポイント】
 モデル植物シロイヌナズナにおける重要な生理現象(花芽の形成、組織の伸長、低温ストレスへの応答など)が、一日のうちの特定の時間で見られる仕組みが分かりました(図)。


【背景】
 植物の概日時計は、遺伝的に備わった一日の時間を測り取る機構です。研究グループは以前に、シロイヌナズナの概日時計の運行に関わるタンパク質群として、PSEUDO−RESPONSE REGULATOR(PRR)ファミリーを報告しています。このファミリーのうちのPRR5タンパク質は、昼から夜半にかけて存在し、その時間帯に時計機能に関わった働きをします。また、古くから植物における重要な生理現象(花芽の形成、組織の伸長、低温ストレスへの応答)は一日のうちの特定の時間帯にのみ認められることが知られていました。しかし、これらの生理現象の発現時間を決める仕組みは分かっていませんでした。


【研究の内容】
 今回研究グループは、シロイヌナズナのPRR5タンパク質は自身のC末端にあるドメイン構造を通して生体内でDNAに結合することを見いだしました。さらにこの機能に着目し、PRR5が生体内で結合し、さらに作用しうる遺伝子領域を高速DNAシークエンサーと強制的活性化型PRR5を用いたマイクロアレイ解析によって決定しました。これらの方法で、およそ60個にのぼるPRR5の直接的なターゲット遺伝子が見つかりました。これらの遺伝子の多くは、PRR5だけでなくPRR7とPRR9にもターゲットされていました。60個のターゲット遺伝子の発現の抑制のタイミングは、昼から夜半に認められていました(図)。この時間帯は3つのPRRが機能している時間と同じであったため、PRRはこれら遺伝子の発現のタイミングを決める上で主要な抑制因子として振舞うことが考えられます。
 さらにPRRのターゲット遺伝子には、花成の時期の決定、組織の伸長、そして低温ストレスへの応答の鍵となる転写因子タンパク質をコードしているものがあり、概日時計からこれら生理現象への制御経路が具体的に明らかとなりました(図)。


【成果の意義】
 植物の概日時計に関連する因子が、他の生理現象の鍵転写因子タンパク質の発現を直に制御することで、それら生理現象の発現する時間を一括的に制御するしくみが分かりました。このような遺伝子発現のネットワーク構造は、分子的な起源の異なる時計を持つ生物種(昆虫や動物)でも近年報告されています。従って今回の発見は、生命システムの収斂的な進化の側面をとらえています。
 また人類が原産地とは異なる緯度に作物を育種する過程で、概日時計に関わる遺伝子の変異が選抜されてきたことが分かっています。今回の発見は、育種過程で重要であったイベントに、分子生物学的な裏付けを与えることが出来ました。今後は時計分子の機能やネットワーク構造の理解を踏まえた上での効率的な育種も期待できます。


※用語説明などは、添付の関連資料を参照

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