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産総研など、ポリマー上の高性能トランジスタ作製技術など開発
ポリマー上でシリコンの性能を超えるトランジスタを作製
−ポストシリコン材料のバックエンド集積化技術−
<ポイント>
・シリコン基板上に安価な耐熱性ポリマーを用いて高性能化合物半導体層を転写
・ポリマーに接合した化合物半導体層を使って400℃以下の低温でシリコンの性能を超えるトランジスタを作製
・ポストシリコン材料とシリコン大規模集積回路を融合した高性能・多機能デバイスの開発を期待
<概要>
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)ナノエレクトロニクス研究部門【研究部門長 金丸 正剛】新材料・機能インテグレーショングループ 前田 辰郎 主任研究員、板谷 太郎 主任研究員らは、住友化学株式会社【代表取締役社長 十倉 雅和】(以下、「住友化学」という)と共同で、ポリマーを利用した化合物半導体の転写とポリマー上の高性能トランジスタ作製技術を開発した。
今回、産総研の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の化合物結晶成長技術というそれぞれの強みを生かし、ポストシリコン材料デバイスとシリコン大規模集積回路(Si−LSI)の集積化に向けて、(1)耐熱性能に優れた接着性ポリイミドの開発、(2)接着性ポリイミドを利用したシリコン基板上への高品質ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)層の転写技術の開発、(3)400℃以下の温度でシリコンの性能を凌駕するトランジスタを作製する技術の開発にそれぞれ成功した。
今回開発した技術によりポストシリコン材料とSi−LSIを融合した高性能・多機能デバイスの開発やエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスのより高密度な3次元積層集積化が可能となり、コンピュータの省電力化、高速化、ダウンサイジングが期待できる。
この技術の詳細は、2012年9月25日〜27日に京都市で開催される2012年国際固体素子・材料コンファレンス(SSDM 2012)で発表される。
※参考画像は、添付の関連資料を参照
<開発の社会的背景>
シリコンよりも優れた移動度特性をもつ化合物半導体やゲルマニウムは、ポストシリコン材料と呼ばれ、次世代のチャネル材料として世界各国で研究がすすんでいる。こうしたポストシリコン材料は、これまでのSi−LSIの機能をすべて置き換えるものではないため、必要な性能をもったポストシリコンデバイスが、Si−LSI上の必要なところに搭載され、機能を発揮する必要がある。そのため、Si−LSIを作製した基板上に高品質なポストシリコン材料を転写後、デバイス作製と配線を行うバックエンド集積化という新しい技術が求められてきた。また、ポストシリコン材料はシリコンにはない光学的に優れた物性をもつものが多く、バックエンド集積化技術はSi−LSIとフォトニックデバイスを有機的に融合させるプラットフォーム技術として期待されている。
<研究の経緯>
産総研と住友化学は、2008年よりエレクトロンデバイスとフォトニックデバイスの融合を目指したハイブリッド半導体技術開発の共同研究をすすめており、シリコン基板上で高性能半導体とフォトニック材料としてさまざまな機能をもつ化合物半導体やゲルマニウムとの融合を図る研究に取り組んできた(2011年6月12日、2011年9月27日産総研プレス発表)。今回、産総研による世界屈指の基板貼り合わせ技術とデバイス作製技術、住友化学の商用レベルの化合物半導体エピタキシャル成長技術を利用し、ポストシリコンデバイスとシリコンデバイスの機能集積に向けた高性能半導体結晶の貼り合わせと低温デバイス作成技術の開発に成功した。
※研究の内容などは、添付の関連資料を参照
<関連情報一覧>
http://www.aist.go.jp/db_j/list/relation.php?&co=8544