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清水建設、発破の低周波音エネルギーを低減するトンネル工事向け技術を開発
音響制御技術で発破に伴う低周波音エネルギーを1/10に低減
〜吸音ボックスがトンネル工事で活躍〜
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、音響制御技術の活用により、トンネル工事の発破に伴う低周波音の低減技術「トンネル吸音ボックス」を開発・実用化、当社JVが施工中の東北中央自動車道栗子トンネル(福島側)工事で低減効果を確認しました。音響制御技術とは、劇場などの残響時間を調整する技術であり、なかでも当社は特定の周波数を限定的に吸収する吸音ボックス(共鳴箱)の特性に着目し、トンネル工事への適用を検討してきました。
トンネル工事においては、発破に伴う騒音対策が非常に重要です。可聴域の高周波音については坑口に設ける防音扉により低減できますが、近隣の住環境に影響を与える恐れがある低周波音については効果的な低減技術の開発が求められていました。そこで当社は、トンネル工事仕様の吸音ボックスの開発に向け、室内試験や音響解析を重ねるとともに、栗子トンネルで実証実験を実施。その結果、プロトタイプのトンネル吸音ボックス50個により、可聴音のうち防音扉で遮音が困難な20〜30ヘルツの低周波音を10デシベル、エネルギーに換算して1/10に低減できることを確認しました。
実験結果を踏まえ、トンネル吸音ボックスの材質や規模・形状を検討した結果、材質は爆風に耐えられるプラスチック、大きさ・形状は縦0.5m・横1.0m、奥行き3m程度のボックス型にするとともに、ボックス内部に間仕切り板を設け内部の空洞をU字状とし、ボックスの1面には100cm2程度の開口を設けることとしました。発破により生じる低周波音は、開口からトンネル吸音ボックスの中に入ることによって、ボックス内部で共鳴して吸音される仕組みになっています。設置個数は、施工条件や低減目標によって異なりますが、概ね50〜100個で、設置位置や設置角度は任意です。なお、ボックスは容易に組立て・解体でき、繰返し使用することが可能です。
トンネル吸音ボックスのコストは、防音扉を1基から2基に増設して同等の低周波音低減効果を得る場合の1/3程度で済みます。また、優れた吸音効果があることから、坑口付近の掘削においても、従来の機械掘りに代えて発破を早い段階から実施できるので掘削効率も向上します。
当社は今後、周辺環境保全が課題となるトンネル工事に対して、トンネル吸音ボックスの採用を提案し、技術の差別化を図っていく考えです。
以 上
≪参考≫
東北中央自動車道 栗子トンネル(福島側)工事の概要
発注者 :国土交通省 東北地方整備局
請負者 :清水・大豊特定建設工事共同企業体
工事概要 :トンネル掘削一式(NATM工法)
トンネル延長L=5,146m(栗子トンネル全延長L=8,972m)
工事場所 :福島県福島市飯坂町中野 地内
工期 :2009年8月18日〜2015年3月31日
※トンネル吸音ボックスの画像とトンネル吸音ボックス構造図は添付の関連資料を参照