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東京商工リサーチ、東証1部・2部上場メーカーの12年4−6月期「為替差損」調査結果を発表

2012-09-13

東証1部・2部上場メーカー419社
2012年4−6月期「為替差損」調査
〜為替差損総額1,645億円前年同期の約2.4倍〜



 東証1部、2部に上場する主なメーカー419社のうち、2012年4−6月期に為替差損を計上したのは266社(構成比63.4%)で、前年同期(252社)より14社増加した。為替差損の総額は1,645億8,400万円で、前年同期(687億4,900万円)の約2.4倍に膨れ上がった。
 2012年2月14日に日本銀行が追加金融緩和を決定し、円相場は一時、円安ドル高に振れ、3月15日には1米ドル=84円台と2011年4月以来の水準となった。しかし、5月に再び78円台に上昇し、その後も高止まりが続いている。東証1部、2部に上場するメーカー145社の2013年3月期の想定為替レートは、1米ドル=80円(91社)、1ユーロ=105円(60社)の設定企業が多かった。
 恒常的な円高で大手メーカーは価格競争力が低下し、2012年4−6月期も厳しい決算が多かった。円高対応が長引くと、産業空洞化や雇用問題など国内経済への暗雲は広がりかねない。
 ※本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカー(3月決算)を対象に実施。


<2012年4−6月期為替差損総額は前年同期の約2.4倍>
 上場メーカー419社のうち、2012年4−6月期に為替差損を計上したのは266社(構成比63.4%)だった。前年同期(252社)より14社増加した。為替差損の総額は1,645億8,400万円で、前年同期(687億4,900万円)より958億3,500万円増と約2.4倍に拡大した。
 為替差損を計上した266社を市場別にみると、東証1部が224社(前年同期211社)、差損総額は1,615億4,100万円(同654億5,400万円)。東証2部は42社(同41社)、差損総額は30億4,300万円(同32億9,500万円)だった。東証1部、2部上場ともに社数は、前年同期を上回った。為替差損総額は、東証2部が前年同期を下回ったが、東証1部が大幅に増加し全体の差損総額が膨らんだ。

<2012年4−6月期為替差益総額は前年同期の約3.5倍>
 上場メーカー419社のうち、2012年4−6月期に為替差益を計上したのは61社(構成比14.5%)で前年同期(69社)より8社減少した。差益総額は278億1,500万円で、前年同期(77億5,300万円)より200億6,200万円増の約3.5倍に増加した。
 差益を計上した企業は減少したが、差益総額は大幅に増加した。これは、一部の企業で円高の高止まりを念頭に、想定為替レートを高めに設定したことが貢献したとみられる。

 〔為替差損益 計上社数〕

  *表資料などは添付の関連資料「添付資料」を参照

<為替差損額上位10社のうち、7社は海外取引が主体>
 2012年4−6月期に為替差損を計上した266社のうち、差損計上額の最も大きかったのは任天堂(株)で211億500万円だった。次いで、日産自動車(株)171億3,900万円、マツダ(株)94億4,500万円、三菱重工業(株)84億6,200万円、富士重工業(株)65億8,000万円と続く。
 任天堂(株)の2012年4−6月期為替レートは、1米ドル=79.3円(期首想定レート80.0円)、1ユーロ=98.7円(同105.0円)と想定レートを上回り、為替差損額は前年同期(50億6,500万円)の4.1倍に拡大した。同社の地域別売上高は、米大陸、欧州で56.0%と海外売上が主体になっており、為替変動の影響を大きく受けた。
 日産自動車の2012年4−6月期為替レートは、1米ドル=80.2円(期首想定レート82.0円)、1ユーロ=102.8円(同105.0円)と想定レートを上回り、為替差損額は前年同期(60億7,900万円)の2.8倍に拡大した。同社の地域別販売比率は、国内が20.4%、米大陸が31.6%、中国15.8%、欧州が15.1%と海外販売が主体で、特に欧州の為替変動の影響が大きかった。マツダ(株)は、欧州での為替変動が大きく、為替差損は前年同期(46億4,300万円)の2倍に膨らんだ。
 上位10社のうち、三菱重工業(株)、SMC(株)、日本電気(株)の3社は国内販売が50%以上を占めるが、大半はグローバル展開する企業で為替変動に左右された。


 2012年2月にエルピーダメモリ(株)が会社更生法を申請したが、その後も大手企業の業績不振が相次いで表面化している。今年に入り、ルネサスエレクトロニクス(株)、シャープ(株)のほか、日本電気(株)、ソニー(株)、パナソニック(株)など、大手メーカーが希望・早期退職者の募集や人員削減計画を打ち出すなど、円高などで価格競争力が低下したメーカーは大きな影響を受けている。
 2月後半から3月にかけ、一時的に円安に振れ2012年3月期の業績の上方修正の要因となったが、その後は欧州の金融危機の再燃から再び1米ドル=78円台と、円高に戻している。
 円高の高止まりは、大手メーカーでは価格競争に対応するため生産拠点の海外移転や、工場の閉鎖・再編を加速させることも懸念される。また、大手企業の動きに合わせ、中小企業でも生産拠点を海外に移転する可能性もあり、産業の空洞化が深刻さに拍車をかけることが懸念される。
 さらに、中小企業では資金的な制約や従業員の問題で海外に移転できない企業が多いとみられ、中小企業間の格差拡大は今後、国内雇用を含めて大きな問題になる可能性を残している。
 大手メーカーは想定為替レートの見直しにとどまらず、下請けや納入業者への一層の価格切り下げを要請する可能性もある。円高は単なる企業収益にとどまらず、雇用など幅広い課題を突きつけている。

 〔決算状況〕

  *表資料は添付の関連資料「添付資料」を参照


【為替差損状況】

 *表資料などは添付の関連資料「添付資料」を参照


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