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JSTと金沢大、ナノロッドシートを用いた高効率有機太陽電池を開発

2012-07-27

ナノロッドシートを用いた高効率有機太陽電池を開発


【ポイント】
 ・有機薄膜太陽電池の効率向上に不可欠な従来構造は高コストや材料面で限界
 ・斜め蒸着で形成したナノロッドシートの新構造で、従来を越える効率が実現
 ・高効率化、簡便・安価で材料を選ばない新構造の有機太陽電池界全般の応用に期待


 JST 課題達成型基礎研究の一環として、金沢大学 理工研究域附属 サステナブルエネルギー研究センターの當摩(タイマ)哲也 准教授らは、有機薄膜太陽電池(注1)で既存のバルクへテロ構造(注2)を越える新しい構造を開発し高効率化に成功しました。
 有機薄膜太陽電池は、光が当たると電子を放出するドナー材料と、放出された電子を受け取って電極まで運ぶアクセプター材料の2種類の半導体材料で構成されています。近年、それらを単純積層するのではなく、2種類の材料を混合し、接合界面の増加によって、効率的に電荷分離を起こす「バルクヘテロ構造」が開発され、変換効率の大幅な向上が図られています。ところが、この構造も万能ではなく、半導体材料によっては分子同士が重なり合ってしまう凝集(注3)が起こるなど適応できないものがあり、また混合層の作製には手間とコストがかかるという実用化に向けた課題を抱えています。
 今回、研究者らは、バルクヘテロ構造を用いずに、これと同等以上の効率が得られる新しい構造の創出に挑戦しました。まず、デバイスの基板上に斜め蒸着を用いて、CuI(ヨウ化銅)をナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)の棒状粒子(ナノロッド)の形で散りばめた、山谷構造を持つシートを形成します。その上に、ドナー材料の亜鉛フタロシアニン(Pc)とアクセプター材料フラーレン(C60)を単純積層すると、それらもナノロッドの山谷構造に合わせて成長するため、平坦な基板に比べて結晶性は高くなり、2つの材料間の接触界面も増加します。これは、ナノロッドの作製には、高価な平坦透明電極基板よりも、安価で表面が荒れた基板が適するというコスト面の有用性を示唆します。
 さらに、研究者らがこれまでに発見したヨウ化銅と亜鉛Pcの相互作用による分子の配向制御によって、光吸収が増加しました。それらの相乗効果の結果、ナノロッドシートを用いた新構造太陽電池の効率は、単純積層型に比べて3倍の値(4.1%)を示し、従来のバルクヘテロ太陽電池を越えるものでした。
 これまで有機太陽電池効率化の唯一の選択肢であったバルクヘテロ構造に代わる、材料を選ばず、簡便・安価に作製できる新デバイス構造が開発されました。このナノロッドシートは、亜鉛Pcに限らず、他の半導体でも効率向上が確認されており、有機太陽電池全般への応用が期待できます。本研究の要素技術は、すでに国内で特許出願されており、今後、企業などとの共同研究によって、早期の実用化の加速を目指します。
 本研究成果は米国化学会誌「NANO LETTERS」のオンライン版で近く公開されます。


 本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
  戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
  研究領域:「太陽光と光電変換機能」
       (研究総括:早瀬 修二 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授)
  研究課題名:「交互分子積層により結晶性を制御した高性能太陽電池の研究開発」
  研究者:當摩 哲也(金沢大学 テニュア・トラック准教授)
  研究実施場所:金沢大学 理工研究域附属 サステナブルエネルギー研究センター
  研究期間:平成21年10月〜平成27年3月
 この研究領域では、化学・物理・電子工学などの幅広い分野の研究者の参画により異分野融合を促進し、次世代太陽電池の実用化につながる新たな基盤技術の構築を目標として、理論研究から実用化に向けたプロセス研究に渡る広域な研究を対象とするものです。


 ※以下、研究の背景と経緯などリリース詳細は添付の関連資料を参照

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