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京大、細胞膜シグナル伝達のためのラフト構造を解明
細胞膜シグナル伝達のためのラフト構造を解明
−アルツハイマー病発症、HIV感染などの研究に貢献−
楠見明弘 物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)・再生医科学研究所 教授、鈴木健一 iCeMS准教授らの研究グループは、細胞のはたらきを制御するのに重要な役割を果たすとされる、細胞膜上のラフト領域の構造とシグナル伝達の仕組みを世界で初めて解明しました。
本研究では、ラフト経由でのシグナル伝達をおこなうGPIアンカー型受容体に注目しました。その結果、GPIアンカー型受容体は同じ分子同士で2量体を作ること、それらがコレステロールと結合して安定化され、寿命が0.2秒のラフトを作ることが分かりました。つまり、ラフトは数個から数十個の分子が集まっただけの直径数ナノメートルの小さい構造で、しかも、常にできたり壊れたりしていることが分かりました。
さらに、GPIアンカー型受容体に細胞外からのシグナル分子(リガンド)が結合すると、2量体をもとに安定な4量体を形成します。この2量体を結合させる糊として、コレステロールを含むラフトが働きます。このラフトの働きが、GPIアンカー型受容体のシグナル伝達に必要であることが分かりました。
ラフトを介したシグナル機構の解明は、アルツハイマー病、HIV、BSE(牛海綿状脳症)など、ラフト経由で発症や感染する疾病の研究に貢献することが期待されます。
本成果は米国東部時間2012年7月22日13時(日本時間23日2時)に米科学誌「Nature Chemical Biology(ネイチャー・ケミカル・バイオロジー)」オンライン速報版で公開されました。
<背景>
細胞膜上の受容体に、細胞外からやってきたシグナル分子(リガンド)が結合すると、それが細胞内に伝わって、細胞は増殖したり移動したりします。このように、細胞機能を変化させるシグナル伝達は、細胞膜の最も重要な働きの一つです。
細胞膜は2次元的な構造をもつ膜ですが、液体であることが分かっています。その中に、直径0.1〜数ミクロンのイカダのようなラフト領域が浮かんでいると考えられてきました(図1)。ちょうど、フライパンに液体のオリーブオイルを敷き、そこにコレステロール含量が多いバター(ラフト)を浮かべたような構造です。イカダに多くのシグナル分子が集合しており、シグナル伝達経路の1/3程度は、ラフトが担っているとする「ラフト仮説」が15年くらい前から提案されていました(Simons & Ikonen, Nature 387; 1997)。しかし、世界中で研究が行われてきたにもかかわらず、ラフトの大きさも、寿命も、シグナルを伝達する仕組みも不明なままでした。
<図1:従来、一般に広がっていた「ラフト」の概念を示した図>
※添付の関連資料を参照
※以下、リリース詳細は添付の関連資料を参照