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産総研など、0.1nmより短波長のX線自由電子レーザー光強度を初めて測定

2012-07-12

0.1nmより短波長のX線自由電子レーザー光強度を初めて測定
−国際的な計測基準での測定で標準供給と校正が可能に−



<ポイント>
 ・エネルギー密度が極めて高い世界最短波長のX線自由電子レーザー用に極低温放射計を新規開発して測定
 ・校正されたオンラインビームモニターで、実験中の光強度をリアルタイムで提供
 ・ライフサイエンスやナノテクノロジー分野での研究の基盤技術としての活用を期待


<概要>
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)計測標準研究部門【研究部門長 千葉 光一】量子放射科 加藤 昌弘 研究員、田中 隆弘 研究員、齋藤 則生 研究科長と、独立行政法人 理化学研究所【理事長 野依 良治】(以下「理研」という)放射光科学総合研究センター【センター長 石川 哲也】ビームライン研究開発グループ 矢橋 牧名 グループディレクター、公益財団法人 高輝度科学研究センター【理事長 白川 哲久】(以下「JASRI」という)XFEL研究推進室利用技術開発・整備チーム 登野 健介 チームリーダー、ドイツ物理技術研究所【理事長Joachim Hermann Ullrich】(以下「PTB」という)、ドイツ電子シンクロトロン【理事長Helmut Dosch】(以下「DESY」という)は共同で、X線自由電子レーザー(XFEL)の平均パルスエネルギー(光強度)の絶対値を測定する技術を開発した。さらにオンラインビームモニターを校正することで、実験中のXFELのパルスエネルギーを正確に測定することが可能となった。XFELを利用する研究では、パルスエネルギーによって得られるデータが大きく異なるため、パルスエネルギーを1つの変数とした実験結果の評価や最適なパルスエネルギーのレーザー光を用いた研究など、多くの研究での活用が期待される。この測定技術はSPring−8に隣接するXFEL施設SACLAで開発されたが、他のXFEL施設での応用も見込まれる。

 なお、この技術の詳細は、米国の科学雑誌、Applied Physics Lettersに2012年7月11日(日本時間)にオンライン掲載される。


 ※参考画像は添付の関連資料を参照


<開発の社会的背景>
 2011年6月にSACLAが波長0.12nmのXFELの発振に成功した。現在、レーザーの波長は0.1nm以下となり、日本でもXFELの本格的な利用が始まろうとしている。SACLAが供給するレーザー光の主な特徴は、(1)SPring−8などで供給される放射光に比べて10億倍以上明るい、(2)位相がほぼ完全にそろっている、(3)パルス幅がフェムト秒単位と極めて短い、という3点である。このような特徴を活用し、基礎・基盤研究だけでなく、産業や国民の生活に役立つ幅広い応用研究開発への貢献が期待されている。例えば、ライフサイエンスの分野では、タンパク質の構造解析を通じてがんやエイズなどの難病に対する特効薬の開発が期待される。またナノテクノロジー分野では、分子が微細空孔に取り込まれる様子の解析を通じて有害化学物質を選択的に取り込む新素材の開発が期待されるなど、幅広い分野の発展が見込まれている。XFELを利用する研究では、入射光の強度により反応過程が異なることがあるため、パルスエネルギーは不可欠な情報である。また光強度は最も基本的な物理量であり、国際単位系(SI)トレーサブルな値の公表は、わが国初のXFEL施設を国際的にアピールする上で重要な役割を果たす。そのため、XFELのパルスエネルギーを正確に測定する技術が求められてきた。


<研究の経緯>
 産総研は、前身の工業技術院のころから放射線線量の標準供給を行っている。近年は、従来のγ線源やX線管を線源とする線量測定の高度化に加えて、放射光や医療用リニアックなどの強度測定技術の開発に取り組んできた。2010年には、熱量測定によって光強度を評価する極低温放射計を用いた極紫外領域の自由電子レーザーのパルスエネルギーを絶対測定する技術を開発した。

 XFELは極紫外自由電子レーザーに比べてエネルギー密度が極めて高いため、検出器へのダメージや検出器出力の飽和(オーバーフロー)が強く懸念される。そこでXFEL用極低温放射計を新たに開発して、SACLAのビーム強度を産総研・理研・JASRI・PTB・DESYで協力して測定することを試みた。

 なお、本研究開発の一部は、文部科学省の科学技術試験研究委託事業「X線自由電子レーザー利用推進研究課題(平成21〜22年度)」、および理化学研究所「SACLA利用装置提案課題(平成23年度)」により実施したものである。


 ※以下、研究の内容などリリース詳細は添付の関連資料を参照

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