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カネボウ化粧品、幅広いスキンケア化粧品に応用できる"サステナブルな製剤"を開発

2012-07-07

肌はもちろん地球にもやさしい"サステナブルな化粧品"の開発
微生物発酵生産素材を用いた処方の拡充
まずは今秋に発売予定の「トワニー」ブランドスキンケアに応用


 カネボウ化粧品・スキンケア研究所は、化粧品の原料として"微生物発酵生産素材"に着目し、肌はもちろん地球にもやさしい"サステナブルな化粧品"の開発に注力しています。今回は、ユーグレナ(ミドリムシ)が作り出す高分子保湿剤「カルボキシメチルβ−1,3−グルカン(CMβG)」と、微生物界面活性剤の1種である「サーファクチンNa(SFNa)」の物性を解明し、高い保湿力を持ちながらべたつきの少ない処方の調製に成功するとともに、化粧水からクリームまでの幅広いスキンケア化粧品に応用できる"サステナブルな製剤"の開発に成功しました。
 今回開発した技術は、肌はもちろん、地球にもやさしい品質の化粧品を、将来にわたって提供するために必要な技術といえます。カネボウ化粧品では、今後もこのような"サステナブルな素材"を用いた化粧品の処方開発に注目し、研究を深耕していきます。
 なお、今回の成果は「日本化粧品技術者会第70回研究討論会」において発表し、また、この技術は今年秋に発売予定の「トワニー」ブランドのスキンケアに応用していきます。


<注目される微生物発酵生産素材>
 サステナビリティや環境への負荷を考慮する必要性が増大している昨今、微生物を用いて生産された発酵生産素材が注目されています。微生物発酵生産素材は、高い安全性、生分解性を持ち、製造にかかるエネルギーも少ないことから、地球にやさしい"サステナブルな素材"と言えます。しかも、化学合成できないような特殊な構造を持ち、機能的にも優れた特性を有する可能性があります。化粧品原料としては、これまでにも保湿成分であるヒアルロン酸、生理活性成分のビタミンやアミノ酸などの発酵生産素材が使用されてきましたが、近年では、化粧品の保湿効果や感触に大きな影響を及ぼす「界面活性剤」や「増粘剤」といった基材にも微生物由来の発酵生産素材を活用するための研究が進んでいます。

(1)ユーグレナ(ミドリムシ)の生成する発酵生産素材"CMβG"
 現在、多くの微生物が発酵生産素材を作るために使われていますが、その中でも、特に注目されているのが、ユーグレナ(ミドリムシ)です。ユーグレナは、動物的性質と同時に、葉緑体を持ち光合成を行うため、動物と植物のどちらにも分類されます。また近年は、高い栄養性が注目され食品素材としても応用されています。  
 ユーグレナは、光合成や吸収栄養源をもとにパラミロンと呼ばれるβ−1,3−グルカンを生成することが知られています。パラミロンは、グルコースのみから構成される糖で、熱、物理的破壊などに強く、純度および安定性が非常に優れています。
 今回、このパラミロンを水系の化粧品にも配合しやすいように加工した高純度カルボキシメチルβ−1,3−グルカン(CMβG)についてその特性を評価したところ、従来から保湿剤として汎用されているヒアルロン酸と同程度の高い保湿性を有することがわかりました。さらに、濃縮しても物性の変化が少なく、さっぱりとしたベタつきの少ない感触の保湿剤であることもわかりました。これは他の高分子保湿剤には見られないユニークな特徴です。

(2)注目される微生物界面活性剤"SFNa"
 カネボウ化粧品は、微生物由来の界面活性剤の製剤化研究にも積極的に取り組んでおり、これまでにも果実などに見られる酵母菌がつくり出す微生物界面活性剤マンノシルエリスリトールリピッドB(MEL−B)の化粧品への応用技術開発に成功しています。今回MEL−Bに引き続き注目した素材が、サーファクチンナトリウム(以下、SFNa)です。
 サーファクチンは、枯草(こそう)菌(きん)(Busillus subtilis)培養液由来の物質で、高い界面活性効果があります。医薬部外品に配合することもでき、非常に期待されている微生物界面活性剤ですが、これまではその性質についての情報が少なかったため、幅広い化粧品製剤への適用という点ではまだ十分とは言えない状況でした。
 そこで今回、SFNaの基本的な物性解明を進めたところ、非常に水となじみやすい性質を持つこと、他の界面活性剤と比較して広い濃度範囲で澄明なゲルを形成することを確認しました。また、各種の観察・試験により、高濃度で水を保持する構造をとることが明らかとなりました。これらは他の合成界面活性剤には見られない特徴です。このようなSFNaの性質を理解することで、化粧水からクリームまで幅広いタイプのスキンケア化粧品に応用できることがわかりました。


<微生物発酵生産素材により、「サステナブルな化粧品」開発を目指す>
 長年、化粧品では石油から精製・合成される原料が使用されてきましたが、将来的には、石油由来の素材は安定的に供給されなくなることも想定されます。近年では、植物由来原料を使用する傾向がありますが、天候の影響を受けやすく、広い農地が必要であるなどの課題もあります。一方で、微生物発酵生産素材は、あまり大きくないタンクで天候などの影響を受けずに、低エネルギーで製造できるという意味で、大変サステナブルな素材と言えます。
 カネボウ化粧品は、今回の研究により、発酵生産素材の特性を生かした幅広い製剤化が可能であることを見出しました。本研究成果を、7月6日に大阪国際交流センターにて行われる「日本化粧品技術者会第70回研究討論会」にて発表する予定です。またこれらの成果は、まずは今秋に発売予定の「トワニー」ブランドのスキンケアに応用していきます。

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