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東大とJST、最薄・最軽量の有機太陽電池の実現に成功

2012-04-10

世界最薄かつ最軽量の有機太陽電池の実現に成功


<研究成果の概要>

 有機半導体を用いた太陽電池は、印刷手法など液体プロセスによって高分子フィルムの上に容易に製造できるため、大面積・低コスト・軽量性を同時に実現できると期待されています。しかし、ガラス基板上と同程度の高エネルギー変換効率を有する有機太陽電池を柔軟性に富む薄膜の高分子フィルム上に液体プロセスを用いて作製することは困難であり、その解決策が求められていました。
 東京大学大学院工学系研究科の染谷教授や関谷准教授らは、有機溶剤にp型半導体とn型半導体をブレンドして溶解したインクを用いて、厚さ1.4マイクロメートルという極薄の高分子フィルムに、有機半導体薄膜を均一に形成するプロセス技術を開発し、世界で最薄かつ最軽量の有機太陽電池を高分子フィルム上に作製することに成功しました(図1)。この有機太陽電池1gあたりの発電量は10Wに相当し、この値はあらゆる太陽電池と比較しても最軽量、最薄、最柔軟な太陽電池です(図2)。また、この超薄型の有機太陽電池は、曲げ半径35ミクロンに折り曲げても、エネルギー変換効率4.2%を維持しつつ機械的にも壊れません。さらに、この薄型有機太陽電池を応用して、300%伸縮させても電気的・機械的な特性が劣化しない伸縮自在な太陽電池を実現しました。
 太陽電池の超軽量化・超薄型化に達成されたことにより、今後、太陽電池の携帯用情報通信機器への応用や、身に着けても重さを感じさせないヘルスケアや医療用デバイス用の電力供給源など新たな用途が拡大するものと期待されます。本成果は、4月4日午前0時(日本時間)にNature Communications誌のオンライン版で公開されました。


<研究成果の背景>

 近年、環境エネルギーへの関心が高まり、既存の発電を補う再生可能なクリーンエネルギー、特に太陽電池の重要性が増しています。太陽電池の発電量は、基本的には面積に比例するため、太陽電池の大面積化を低コストに実現することが求められています。また、太陽電池の大面積化に伴って、軽量化、耐衝撃性の向上(柔軟化)も求められています。現在広く商用化されている太陽電池は、ガラス基板にシリコンを材料として作製されており、耐衝撃性が十分ではありません。また、ガラス基材を薄くすると、製造時や使用時に壊れてしまうため、太陽電池の軽量化を進める上での障害となっていました。
 この背景の中、有機半導体を用いた太陽電池は、印刷手法など液体プロセスによって高分子フィルムの上に容易に製造できるため、大面積・低コスト・軽量性を同時に実現できると期待され、研究が活発に進められています。しかし、ガラス基板上と同程度の高エネルギー変換効率を有する有機太陽電池を柔軟性に富む薄膜の高分子フィルム上に液体プロセスを用いて作製することは困難であり、解決が待たれていた。


<研究の成果>

 研究グループは、世界で最薄かつ最軽量な柔らかい有機太陽電池の実現に成功しました(図1)。この超薄型の有機太陽電池は、高分子フィルム上に作製されています。曲げ半径35ミクロンに折り曲げても、エネルギー変換効率4.2%を維持しつつ機械的にも壊れません。実際に人間の髪の毛(半径は100ミクロン程度)に巻きつけることもできます。
 この有機太陽電池1gあたりの発電量は10Wに相当し、この値はあらゆる太陽電池と比較しても最軽量、最薄、最柔軟な太陽電池です(図2)。
 さらに、この薄型有機太陽電池を応用して、300%伸縮させても電気的・機械的な特性が劣化しない伸縮自在な太陽電池を実現しました。


<技術のポイント>

 この有機太陽電池を実現するための決め手は、有機溶剤にp型半導体とn型半導体をブレンドして溶解したインクを用いて、厚さ1.4マイクロメートルという極薄の高分子フィルムに、有機半導体薄膜を均一に形成するプロセス技術でした。さらに、あらかじめ伸ばしておいたゴム基板上にこの薄膜太陽電池を張り付けてから、もとの大きさまでゴム基材を緩和させるという手法で、300%引っ張っても壊れない伸縮自在な太陽電池に応用しました。


<今後の展開>

 太陽電池の超軽量化・超薄型化に達成されたことにより、今後、太陽電池の携帯用情報通信機器への応用が促進されると期待されます。また、このような軽量・薄型の有機太陽電池をコンパクトに詰め込み、宇宙に打ち上げてから大きく広げて使う電力供給源、身に着けても重さを感じさせないヘルスケアや医療用デバイス用の電力供給源など新たな用途が拡大するものと期待されます。


(参考)
 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)の研究領域「染谷生体調和エレクトロニクス」(研究総括:染谷隆夫 東京大学 教授、バイオ印刷グループリーダー関谷毅 東京大学 准教授)、ヨハネスケプラー大学リンツ校(Martin Kaltenbrunner 博士、Siegfried Bauer 教授、Niyazi Serdar Sariciftci 教授)との共同研究として行われました。



 ※以下、リリースの詳細は添付の関連資料を参照

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