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パナソニック、低消費電力の1W以下のミリ波ギガビット無線チップセットを開発

2012-03-24

モバイル機器でストレスフリーの双方向ハイビジョンデータ通信の実現に貢献

業界最小消費電力(*)、1W以下のミリ波ギガビット無線チップセットを開発
WiGigおよびIEEE802.11ad規格採用により幅広い接続を実現

*)2012年3月19日現在、当社調べ



【要旨】
 パナソニック株式会社は、業界最小消費電力、1W以下のミリ波ギガビット無線チップセットを開発しました。本チップセットはWiGigアライアンス[1]などが策定する超高速無線通信の標準規格[2]に対応しており、幅広い通信機器端末と安定した双方向通信を可能にします。当社では、送受信部と変復調処理部をCMOS集積化する回路技術を確立しておりましたが、今回、パケット処理部[3]を集積化し、低消費電力の無線チップセットを開発したことにより、ストレスフリーの双方向ハイビジョンデータ通信の実現が加速されます。


【効果】
 本無線チップセットは、1W以下の省電力性が求められるモバイル機器への内蔵が可能です。この結果、圧縮[4]された30分程度のハイビジョン映像データを、10秒程度でモバイル機器に転送が可能です。またモバイル機器上に表示されたハイビジョン映像を遅延なく大画面テレビに転送できるため、従来以上にリアリティのある操作感で、機器間の連携を可能にします。


【特長】
 本開発の無線技術によるチップセットは以下の特長を有しています。

 1.送受信LSIと、パケット処理部を含むベースバンド処理LSIからなる無線チップセットを開発。毎秒2.5ギガビットの高速データ伝送を消費電力1W以下で実現。

 2.日本や欧州で採用されている60GHz帯の無線周波数において、9GHzの帯域幅に対応しつつ従来開発の当社送受信LSIに対し、半分以下のチップ面積を達成。


【内容】
 本開発の無線技術によるチップセットは、以下の新規要素技術により実現しました。

 1.動作周波数を上げることなく、汎用のプロセッサと高速データ処理回路を最適化することにより、チップセットとして1W以下を実現する低消費電力パケット処理技術

 2.無線周波数(60GHz)でトランジスタ間の回路長が決まることに対し、新たにトランジスタ間をコイル型回路とすることにより、無線チップ面積を小型化する高精度コイル型回路設計技術。


【従来例】
 モバイル機器向けの高速無線方式は2.4GHz帯や5GHz帯の無線LAN[5]を除けば実用化されていません。また60GHz帯の高速無線方式の実用化は、その消費電力やチップ面積の大きさから据え置き機器用の例があるのみです。当社では、60GHz帯のモバイル機器向け基本回路技術を確立しておりましたが、技術の進化に伴い、パケット処理回路の低消費電力での集積化、回路の小型化が更に求められていました。


【備考】
 本研究開発は、総務省平成23年度(2011年度)「超高速近距離無線伝送技術等の研究開発」の成果の一環です。


【特許】
 国内 36件、海外 35件(出願中含む)


【内容の詳細説明】
 1.動作周波数を上げることなく、汎用のプロセッサと高速データ処理回路を最適化することにより、チップセットとして1W以下を実現する低消費電力パケット処理技術
  従来のパケット処理は汎用プロセッサを用いているため、高速化するには動作周波数を上げる必要があり、消費電力が大きくなるという課題がありました。パケット処理のうちパケットのタイミング制御を行う高速データ処理回路を新たに設け、汎用プロセッサとの動作を最適化することで、動作周波数を上げることなく20%以上の高速化を実現しました。これにより、毎秒2.5ギガビットのデータ伝送速度に対応したチップセットとして1W以下を実現しました。

 2.無線周波数(60GHz)でトランジスタ間の回路長が決まることに対し、新たにトランジスタ間をコイル型回路とすることにより、無線チップ面積を小型化する高精度コイル型回路設計技術
  従来の送受信LSIの設計方法においては、60GHzという無線周波数を用いる場合、そのトランジスタ間の回路長を数100マイクロメートル(1マイクロメートルは1千分の1ミリメートル)以上にする必要があるため、多くのトランジスタを集積化した無線チップの小型化に制約がありました。この問題を解決するため、新たに回路をコイル型にすることで回路長を短縮し、小面積化を実現する手法を考案しました。さらに、60GHz帯における高精度コイル型回路設計技術を確立することで、送受信LSIとして従来の半分以下の小型化を実現しました。


【用語の説明】
 [1]WiGigアライアンス(Wireless Gigabit Alliance)
  60GHz帯を活用し、毎秒1ギガビットを超える高速無線通信や相互接続検証するための技術仕様を策定することを目的に、パーソナルコンピュータ、家電製品、モバイル機器、半導体等の代表的な企業が集い、2009年5月に発足した業界団体で、IEEE802.11ad規格の策定にも貢献。当社はボードメンバーとして参画。(http://wirelessgigabitalliance.org/

 [2]標準規格
  WiGigアライアンスでは無線通信物理層(PHY層)、メディアアクセス制御層(MAC層)の標準規格を策定しており、既に仕様書としてV1.0およびV1.1を発行した。またIEEE 802.11adドラフト仕様にはWiGigアライアンス主要メンバーから提案した仕様が採用されており、基本的な通信仕様は互換性がある。

 [3]パケット処理部
  パケットと呼ばれるデジタル通信で交換されるデータの単位に対し、パケットの衝突や誤りが起きないように、あらかじめ決められたデータパケットの送受信方法やパケットの形式などに基づいて処理する回路で、通信分野ではメディアアクセス制御(MAC)部と呼ばれる。

 [4]圧縮
  画像信号や音声信号のデータの送受信を効率的に行ったり、限られた容量の蓄積デバイスに保存するために、それらのデータ量を削減する技術で、DVDではMPEG−2、Blu−ray DiscではMPEG−4と呼ばれる圧縮技術が用いられている。

 [5]無線LAN
  WiFi(ワイファイ)とも呼ばれる、無線通信を用いたLAN(Local Area Network)システム。IEEE802.11作業部会で策定された標準規格を用いたシステムが最も普及しており、業界団体WiFiアライアンスが相互接続性を検証している。現在までに2.4GHzと5GHz帯の周波数を用いた、IEEE802.11a、11b、11g、11n規格に基づく無線LANシステムが実用化されている。今回開発した技術による通信速度が1Gbps(1000Mbps)以上であるのに対し、最新の11n規格に基づく無線LANシステムの実用的な通信速度は最大で300Mbps程度、モバイル機器用としては100Mbps程度である。


〔ミリ波ギガビット無線チップセット 送受信LSI/ベースバンドLSI〕

 *画像は添付の関連資料「添付画像」を参照


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